新型ミニクーパーEVの新しさとは?バルセロナで金子浩久が乗ってきました!
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    2024.06.14

    新型ミニクーパーEVの新しさとは?バルセロナで金子浩久が乗ってきました!

    新型ミニクーパーEVの新しさとは?バルセロナで金子浩久が乗ってきました!
    新しいミニクーパーのEV「MINI COOPER SE」を、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員(BE-PAL選出)の金子浩久がスペイン・バルセロナで試乗してきました。斬新かつクラシカルなデザインと世界観、そしてまったく新しい操作方法など、新型ミニの魅力をたっぷりとリポートします。

    オースチン、モーリス、ローバー…歴代の名車ミニも登場

    新型ミニクーパー

     予感は当たっていました。

     3月に発表された新型MINI COOPERには、これまでのMINI COOPERと違う何かが備わっているのではないか?と、東京・お台場の発表会場でニラんでいたのです。

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     それをスペインのバルセロナで行われた国際メディア試乗会で、4代目となるMINI COOPERのEV(電気自動車)版である「MINI COOPER SE」に乗って確かめることができました。

     3代目にもEVは存在していましたが、リース販売だけでした。本格的に販売されるのは、この4代目からです。

     発表会場でも感じられたエクステリアデザインの目新しさは、陽光の下ではよりはっきりとしていました。フロントガラスとルーフやAピラーなどとのつなぎ目がスムーズになったことやテールライトユニットの形状が大きく変わったことで、3代目以前と見分けが付きやすくなっています。

    歴代のミニ

     会場には、歴代のMINIとクラシックミニ、つまりBMWが製造することになる前の1959年から2000年までオースチンやモーリス、そして最後はローバーというイギリスのブランドが造り続けていたクラシックミニなどが並べられていました。

     クラシックミニは本当にミニサイズだったことが良くわかります。

     インテリアは一新されました。丸型のセンターモニターパネルは歴代MINIの特徴でしたが、より大型化されたパネルがダッシュボードから少し浮いて見えるように上の方に設置されています。

     パネルは大きく、自動車用の丸型では最大サイズだそうです。画質は高品質で、まるで最新のパソコンやスマートフォンのような明瞭さ。速度や航続距離などの走行に関する重要情報はこちらにも映されますが、ドライバーの真向かいにあるヘッドアップディスプレイにも投影されます。これまでのような、メーター類はなくなりました。

    走行モードや排気音も「ミニ的」に切り換え

     丸型パネルに映し出されるグラフィックデザインは、何種類もあります。パネルの下にある“EXPERIENCES”というレバーを上下すると、画面が変わっていきます。画面だけでなく、走行特性も変えることができるのです。今までだったら、「走行モード切り替え」と呼ばれていました。

     “CORE”がノーマル、“GO KART”がスポーツ、“GREEN”がエコに相当しています。他に、“VIVID”、“TIMELESS”、“PERSONAL”と切り替わっていきます。

     PERSONALは好みの走行特性と気に入った画像をセンターパネルの背景に設定できるポジション。

     VIVIDは音楽ソースを選んだり、流れている楽曲のカバーアートに合わせたライトエフェクトが25色の中から自動的に選定され、ダッシュボード上に投影されるモードです。これは面白そうで、ぜひ試したかったのですが時間切れでした。

     TIMELESSは、BMWが製造する前のクラシックミニの排気音が擬似的に発せられます。

     どのモードでも、センターパネルのグラフィックデザインがガラリと変わります。どれもキレイで見やすい。設定を変えれば、各モードの開始時にジングル音を発することもできます。  

     これまでは、こうした装備は“ギミック”と蔑まれていましたが、この新型MINI COOPER SEのEXPERIENCESでは新しい意味が発生しているように思えました。

     ドライブモードやNORMAL、またはSPORT、あるいはECOなどといった自動車の専門用語や概念などをそのまま剥き出しでユーザーに提示するのではなく、それらをいったん新型MINI COOPER SEが設定している世界観に置き換えて提示している意味は小さくありません。

     クルマという「機械」をそのまま提供するのではなくて、中身は変わらないのだけれども、あくまでも新型MINI COOPER SEという「商品」として提示できるように仕切り直しているのです

     自動車開発や製造の専門用語をそのまま使った、クルマとの接点は「運転」の一点のみ。今まで、クルマを測る指標はそれしかありませんでした。しかし、これからは変わっていきます。クルマとの接点は運転だけに限られません。電動化や自動化が進んでいくと、特別感が薄れ、これまでのクルマらしくないクルマになっていくのだと思います。

    リサイクル素材を使った心地いい車内空間

     一新されたインテリアで視覚的なアクセントになっているのは、ダッシュボードやセンターコンソール、ステアリングホイールなどにリボンのような装飾が施されているところです。それらは、再生プラスチックを利用して造られています。

     また、エアアウトレットやスピーカーユニットなどにも再生アルミニウムが用いられています。

     これまでは、そうした再生素材の使用は、ユーザーが触れたり眼にすることのない、ダッシュボードやシートなどの内側に用いられることが多かったですけれども、クオリティが向上し、その範囲が拡大されてきたということなのでしょう。

     偶然かもしれませんが、この時に宿泊したバルセロナのホテルでも、4月に泊まった北京のホテルでも、部屋に用意されていた歯ブラシやT字型カミソリなどの柄の部分に木材が用いられていました。新型MINIに限らず、世界では再生可能な素材の使用が急速に進んでいるように感じられました。そんなところにも、新型MINIが備えている“新しさ”は現れていました。

    滑らかな加速、上質なコーナリング性能

     新型MINI COOPER SEは最高出力160kW、最大トルク290Nmを発揮するモーターで前輪を駆動し、0-100km/h加速は6.7秒。

     ボディ床下に搭載されているリチウムイオンバッテリーの容量は、136.0Ah/54.2kWhで、日本仕様の航続距離は446km(WLTC値)。ちなみに、126.0Ah/40.7kWhと小さな容量のバッテリーのMINI COOPER Eの航続距離は344km(WLTC値)。0-100km/h加速は7.3秒です。

     MINI COOPER SEの走りっぷりは、EVらしく滑らかで静かな加速であるのは当然として、SUVと違って車高や重心が低いこともあって安定感が高く、加減速やコーナリングなどに伴ったボディの前後左右への揺れ動きも小さく、とても上質なものです。

    渋滞時は手放し運転ができる

     運転支援機能は最新のBMWそのものなので、渋滞時のハンズオフが可能です。インターフェイスに大変に優れており、ユーザーフレンドリーでとても使いやすいことは、同じものが搭載されている、2023年に登場したBMW iX1で高く評価したばかりです。

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     高速道路や自動車専用道を運転支援機能を使いながら走っていて渋滞に巻き込まれると、パネルに準備が整った証拠である“READY”の表示が現れます。そこでステアリングホイールから両手を離せば、ハンズオフ機能が働きます。他のクルマのように、煩わしく何かのボタンを押したりレバーを引いたりする必要もなく、とても自然な形で渋滞中はクルマに運転を一時的に委ねることができるのです。

    自動制御の回生ブレーキで車間距離をキープ

     アダプティブモードに設定できる回生ブレーキも優れていて、使いやすい。回生ブレーキをアダプティブモードに設定しておくと、クルマのカメラとレーダーが前車との車間距離、速度、加減速度などの違いを検出し、危険度に応じて自動的に回生ブレーキを強めるのです。人間だったら見逃したり、見落としとしたり、減速が間に合わなかったり、足りなかったかもしれないところをすべてフォローしてくれる優れものです。

     違う名前で他メーカーのクルマにも搭載されていますが、安全と燃費の両方に寄与する最新の電動車ならではのデバイスです。体験してしまうと、付いていないクルマには戻りたくなくなります。

    EV版ミニクーパーの価格は?

     日本仕様の価格も発表されています。EV版の「COOPER SE」が531万円(以下、消費税込)と、「COOPER E」が463万円。エンジン版の「COOPER S」が465万円と「COOPER C」が396万円。

     発表会で予感した通り、新型MINI COOPERには“新しさ”がたくさん盛り込まれていました。それでも、時間が足りずに体験できなかったものもあったくらいです。車内に投影される7パターンの光のグラフィックとアンビエント・イルミネーションや好み通りに設定できるドライビング・サウンドなどは、日本で確かめてみましょう。

    金子浩久
    私が書きました!
    自動車ライター
    金子浩久
    日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員(BE-PAL選出)。1961年東京都生まれ。趣味は、シーカヤックとバックカントリースキー。1台のクルマを長く乗り続けている人を訪ねるインタビュールポ「10年10万kmストーリー」がライフワーク。webと雑誌連載のほか、『レクサスのジレンマ』『ユーラシア横断1万5000キロ』ほか著書多数。構成を担当した涌井清春『クラシックカー屋一代記』(集英社新書)が好評発売中。https://www.kaneko-hirohisa.com/

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