
2025年3月、ダートフリークより電動の第一種原動機付き自転車「GE-N3」が発売された。
50cc相当の電動バイクは町中のちょい乗り用が多いけれど、「GE-N3」はルックスこそオフロードっぽさ控えめだが、オン/オフ両用タイヤを装備するなどダートを遊べる設計が盛り込まれていて初回入荷分は瞬殺。7月よりこの人気者の再販売がはじまったと聞き、試してきた。
オフロード遊びも楽しめる「GE-N3」

全長1820mm、シート高790mmで重量58kg。軽くて細身、シート高も低く小柄な人でも乗りやすい設計だ。2025年11月以降、排ガス規制の強化により原付一種の生産が終了すると予想されていることもあり、気軽に乗れるこのサイズでの登場はうれしい。

鍵穴はなく、始動はシート前のロゴにスマートキーをタッチさせるだけ。これで電源がはいるが、そのままではスロットルを開けても動かない。
右手側のボタンで走行モードに切り換えることで、スタートする設計だ。ハンドルを握って車体を押すなどしたときも、急に動き出すなんていう事故を防ぐというわけ。

ちなみに走行モードは公道走行が可能な「モード1」「モード2」と、私有地限定の「モード3」の3種類。
スロットルを開けたときに、ドンッとスタートするのが不安な人は「モード1」、バイクに慣れていて元気に加速させたい人は「モード2」を選択。「モード3」では保安部品を外すことで選択できる私有地限定モードで、ガツンと加速し登坂性能も高い。
もっとも走行モードの違いはスロットルのレスポンスのみ。「モード3」にしたからといって最高速度が増すわけではないし、「モード1」だから走行距離が伸びるというものでもない。

フロント17インチ、リア14インチのオン/オフ両用タイヤを履いた「GE-N3」は、前から見るとオフロードバイクっぽくはあるが、リアフェンダーが跳ね上がった“いかにも”なデザインではなく、シートからキャリアまでほぼ水平。
「ダートフリークはオフロード好きがそろっていて、プロトタイプはいかにもオフロードっぽいデザインでした。でも“悪路を走れて、日常の移動もできる”というコンセプトを考えるとそれじゃダメだと伝え、水平基調のシルエットになったんです」とはダートフリーク 二輪事業部の浅野あかねさん。
もっとも、ルックスは控えめだがオフロード走行に対する取り組みに妥協はない。






ほかにも3mm厚のアンダーガード、トライアル車並みのハンドル切れ角などそのこだわりぶりに、ニヤリとするはず。
課題の充電はコンパクトなボディでカバー
走行時は驚くほど静かで、早朝の住宅街でも気兼ねなくスタートできる。この静かさなら釣りや野鳥観察、ハンティングなど自然の中にあと一歩奥へ進むときにも有利だ。

荷台が大きく、釣り道具くらいなら余裕で載る。買い物にも重宝しそうだ。

気になるのはやはり走行距離だろう。
内蔵バッテリーは72V 24Ah。家庭用コンセントで充電でき(約4時間)、フル充電で走行できるのは50〜60km。
東京を例にすると新宿から八王子あたりまで行ける計算だ。ただ、2〜3時間走って4時間充電というサイクルではツーリングには少々不向き。
残念だが、小さなボディゆえ載せられるバッテリーには限りがあるため仕方が無いことだ。ところがこの不便を解消してくれるのもコンパクトなボディなのだ。


というのも車体が小さいので床がフラットになり、タイダウンベルトで固定する場所があれば軽自動車でも積載できる。軽いのでラダーを押し上げるのも簡単だし、ガソリン臭くもならない。
キャンプ場を基点にして遊びにでかけるなら航続距離50kmはちょうどいい。ポータブル電源では無理だが、電源サイトのコンセント(100V)を使えば朝までに余裕で満充電となる。
工具を使えばバッテリーを取り外せるので、ホテル泊の場合はちょっと重いけれどバッテリーだけを部屋に運んで充電するなんてことも可能だ。

自転車よりも楽に遠くに、クルマよりも狭い道に入れるのが原付のいいところ。電動の「GE-N3」は静かに進むので里山の雰囲気を壊さないし、夕まずめの釣行で門限ギリギリにキャンプ場に帰ってくるなんてときも音が響かない。
ジャンプこそ推奨されていないが、コースでオフロード遊びができるポテンシャルも備えている。一方で、気負いなく通勤や買い物に出かけられるルックスでもある。
万能モデルはとかくどっちつかずのぼんやりした印象になりがちだが、「GE-N3」はバイク初心者からオフロード好き、リターンライダーなど幅広い層が楽しめる“やさしいオフロードバイク”だ。
【問】ダートフリーク