ポーランドやルーマニア、ブルガリア、モンテネグロなど、キャンピングカーを走らせながら、約2カ月をかけて10カ国それぞれの最高峰を目指しました。
国が変われば、山の表情も変わります。東ヨーロッパの山々は西ヨーロッパとはひと味違い、手つかずの自然が色濃く残るワイルドな雰囲気。観光地化された山とは違い、登山道が十分に整備されていなかったり、登山口に駐車場やトイレといった設備が整っていないこともありました。登山情報が少なく、どんな道が待っているのか、山頂でどんな景色に出会えるのか、実際に行ってみるまでわからない。そんなドキドキも、この旅の醍醐味でした。
今回は、そんな東ヨーロッパ10カ国の最高峰チャレンジを振り返ります。
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キャンピングカー旅で始まった、ヨーロッパ各国の最高峰チャレンジ

私たち夫婦はキャンピングカーで暮らしながらヨーロッパを周遊中で、旅を始めてから3年半が経過しました。日本に住んでいた頃から山歩きが大好きで、ヨーロッパに来てからも、各地の美しい山々を見つけては登り続けてきました。
そんな山旅を楽しむうちに、いつからか「せっかくヨーロッパを旅するなら、各国の一番高い山に登ってみよう!」という目標が生まれました。これまで各国を巡りながら、12カ国の最高峰に登頂。
比較的気軽に登れるデンマークやベルギーの山から、ドイツでは「ヴィア・フェラータ」と呼ばれる、岩場に設置されたワイヤーや金具を頼りに進むスリル満点のルートに挑戦、スウェーデンでは3日間のテント泊をしながら山頂を目指し、国が変われば山の表情も変わり、登り方もさまざま。そんな違いを楽しみながら、一つずつ各国のてっぺんを目指してきました。

とはいえ、ヨーロッパ各国の最高峰をすべて制覇しようと考えているわけではありません。モンブランのように、高度な登山技術や十分な経験が求められる山もあります。無理をしてまで登るのではなく、自分たちの技術や経験に見合った山を選ぶことが大切。登れそうな山に挑戦しながら、キャンピングカーでの旅も、山登りも、どちらも楽しんでいきたいと思っています。
2カ月間、東ヨーロッパ10カ国の「てっぺん」を目指す旅のルート

西ヨーロッパや北欧の国々で最高峰チャレンジを続けてきた私たちが次に向かったのが、東ヨーロッパです。ポーランドからルーマニアへと連なるカルパチア山脈や、ブルガリアやバルカン半島に広がる山々など、個性豊かな山岳地帯が広がっています。
今回の旅では、チェコをスタートに、ポーランド、ハンガリー、ルーマニア、セルビア、ブルガリア、北マケドニア、アルバニア、モンテネグロ、クロアチアへ。合計10カ国を、キャンピングカーで巡りながら、それぞれの最高峰を目指しました。

ルートを決めるうえで優先したのは、観光地や街ではなく、完全に山の位置。次に登る山までの距離や移動時間を考えながら、できるだけ効率よく回れるようにルートを組み立てました。
旅をしたのは、8月下旬から11月にかけての約2カ月間で、夏の終わりから秋へと季節が移り変わる時期です。できるだけ山が雪に覆われ、登山が難しくなる冬を迎える前に、すべての山に登頂したいと、天候や季節の進み具合を気にしながら、次の山を目指してキャンピングカーを走らせました。
限られた時間のなかで、情報量も少なく、期待と少しの不安を抱えながら、私たちの東ヨーロッパ最高峰チャレンジが始まりました。
東ヨーロッパ10カ国の最高峰を一挙紹介
チェコ最高峰「スニェシュカ山」

チェコの最高峰は、ポーランドとの国境にまたがる標高1,603mのスニェシュカ山(Sněžka)。山頂まではケーブルカーでもアクセスできますが、私たちは自分たちの足で登ることにしました。
登山口から山頂までは片道約6.5km、標高差約800m、所要時間は休憩含めて2時間半〜3時間程度です。登山道はよく整備されていてとても歩きやすく、初心者の子供から大人まで楽しめる山です。
山頂は広々としていて、アクセスのしやすさもあって多くの観光客で賑わっていました。そこからはチェコからポーランドまで見渡せる、360度の大パノラマが広がっています。
ポーランド最高峰「リスィ山」

ポーランドの最高峰は、スロバキアとの国境に位置する標高2,499mのリスィ山(Rysy)です。タトラ山脈に属する山で、ポーランド側、スロバキア側の両方から登ることが可能です。私たちは、距離も短く比較的登りやすいスロバキア側から頂上を目指すことにしました。ルートは往復約18km、標高差約1,300m、所要時間は約8時間ほどです。
登山道はよく整備されていますが、岩場や鎖場が多く、標高を上げるにつれて険しさも増していきます。登山経験のある中級者向けのコースで、ヘルメットの着用が推奨されています。山頂はゴツゴツとした岩場で、スペースも限られていますが、そこからはタトラ山脈の険しい峰々が連なる雄大な景色を楽しめます。
ハンガリーの最高峰「ケーケシュ山」

ハンガリーの最高峰は、北部のマートラ山地に位置する標高1,014mのケーケシュ山(Kékes)です。山頂まで車でアクセスできるため、気軽に最高峰を目指せるとして地元の人たちにも親しまれています。私たちは、キャンピングカーを登山口付近に停め、自分たちの足で山頂を目指すことにしました。
ルートは往復約6kmの周回コース、所要時間はおよそ1時間半でした。森の中を歩く穏やかなコースで、これまで挑戦してきた険しい最高峰と比べると、驚くほど気軽なハイキングです。山頂にはテレビ塔やレストランなどがあり、ハンガリーの国旗カラーに彩られた標識が立っています。
拍子抜けするほど手軽だったケーケシュ山。ハンガリーらしい穏やかな最高峰でした。
ルーマニアの最高峰「モルドベアヌ山」

ルーマニアの最高峰は、ファガラシュ山脈にそびえる標高2,544mのモルドベアヌ山(Moldoveanu)です。深い谷や険しい岩稜が連なる山岳地帯で、手つかずの自然が色濃く残るエリア。私たちは、絶景の山岳道路として知られるトランスファガラシャン・ロードから山頂を目指しました。
ルートは往復約30km、標高差約3,000mのハードなコース。テント泊をしながら2日間かけて歩きました。いくつものピークを越えるアップダウンの連続に加え、山頂直前には鎖場や岩場もあり、想像以上にハードな道のりです。それでも、荒々しい稜線やどこまでも続く山々の景色は圧巻。
ようやくたどり着いた山頂では、360度に広がる大パノラマとともに、ルーマニアのてっぺんに立つ達成感と感動を味わいました。整備された登山道とはひと味違う、ワイルドな山歩きを楽しみたい中級者の人におすすめの山です。
セルビアの最高峰「ミジョル山」

セルビアの最高峰は、ブルガリアとの国境沿いに位置する標高2,169mのミジョル山(Midžor)です。観光地としてはまだあまり知られておらず、静かな自然が残る山。私たちは、セルビア側のスキーリゾート「バビン・ズブ」から山頂を目指しました。
ルートは往復約20km、標高差約1,200m、所要時間は6〜7時間ほど。序盤はスキー場のゲレンデを歩き、途中からは登山道へと変わり、緩やかな登りになります。登山道はあまり整備されていませんが、道幅が広く、危険な箇所も少ないため、初心者でも比較的チャレンジしやすいコースです。道中では思いがけない現地の人たちとの出会いもあり、セルビアの人々の温かさを感じました。
山頂からはセルビアとブルガリア、両国の山並みを一望。雄大な自然と人との出会いが心に残る、忘れられない最高峰チャレンジとなりました。
ブルガリアの最高峰「ムサラ山」

ブルガリアの最高峰は、リラ山脈にそびえる標高2,925mのムサラ山(Musala)です。バルカン半島全体の最高峰でもあり、夏にはゴンドラを利用して山頂を目指すこともできます。私たちが訪れたのは10月上旬で、ゴンドラは運休しており、大寒波が襲来し、山は一面の雪景色に変わっていました。
スタートはボロベツのスキーリゾートからで、往復約27km、標高差約1,650m、の約10時間に及ぶロングルートに挑戦。積雪は約50cmに達し、途中からはアイゼンを装着して登りました。急登や雪に覆われた岩場もあり、ハードな山行となりましたが、山頂で待っていたのは、雪の上を歩き回る人懐っこい猫。厳しい雪山登山の疲れも吹き飛ぶ、思いがけない出会いでした。白銀の絶景と、山頂に暮らす“山の主”との出会いが忘れられない最高峰チャレンジとなりました。
アルバニア、北マケドニアの最高峰「コラブ山」

アルバニアと北マケドニア、2カ国の最高峰となっているのが、標高2,764mのコラブ山(Mount Korab)です。山頂が国境上にあるため、1つの山で2カ国の最高峰を制覇できるのが魅力。私たちはアルバニア側から山頂を目指しました。ただ、事前の登山情報が少なく、登山口のあるラドミレ村にたどり着くまでにもひと苦労。情報収集から、冒険が始まっているような山旅でした。
ルートは往復約16km、標高差約1,400m、所要時間は約7時間です。危険な箇所はほとんどなく、比較的登りやすいルートで、登山初心者でもチャレンジしやすい山です。登山道は草原や岩場が広がるワイルドな雰囲気で、手つかずの自然を感じながら歩くことができます。
残念ながら山頂に着くと霧で覆われ、絶景の景色は見れませんでしたが、観光地化されていない静かな山で、自然を思いっきり体感できました。2カ国の最高峰を一度に目指せる、東ヨーロッパならではの山旅となりました。
モンテネグロの最高峰「ズラ・コラタ山」

モンテネグロの最高峰は、アルバニアとの国境に位置する標高2,534mのズラ・コラタ山(Zla Kolata)です。険しい岩峰や深い谷が広がる、手つかずの自然が魅力の山です。
登山口となるのは、山あいの小さな村、ヴサニェ。往復約23km、標高差約1,700m、所要時間は約9〜10時間です。序盤は森を歩く穏やかな道ですが、進むにつれて標識が少なくなり、ルートを間違えて遠回りする場面もありました。道迷いには注意が必要です。
終盤は山頂直下に険しい岩場ルートがあり、私たちが登ったときは岩場がすべて凍っており、滑らないように慎重に登りました。落石もあり、最後まで気の抜けない登山に。登山経験のある中級者向けの山だと感じました。
苦労して登りきった山頂に待っていたのは、360度に広がる大パノラマ!ほかの登山者に一人も出会うことなく、荒々しい山々の絶景を独り占めできたのは、忘れられない体験です。
クロアチアの最高峰「ディナラ山」

クロアチアの最高峰は、標高1,831mのディナラ山(Dinara)です。登山ルートはいくつかあり、私たちはグラヴァスから山頂を目指しました。ルートは往復約17km、標高差約1,300m、所要時間は約6時間が目安です。
登山道では広大な草原とゴツゴツとした岩が広がり、アルプスの緑豊かな山々とはひと味違う、クロアチアらしい乾いた荒々しい風景を楽しめます。標高を上げるにつれて視界が開けていき、山頂へ続く稜線からは、どこまでも広がるクロアチアの大地を一望。人も少なく、静かな山歩きを楽しめる一座でした。
標識やルート上の目印もしっかり整備されていて、道がわかりやすいのも魅力。技術的に難しい箇所も少なく、体力に自信があれば初心者でもチャレンジしやすい山です。
2カ月で10カ国の最高峰へ。大変だったけれど、一生の思い出に
約2カ月をかけて巡った、東ヨーロッパ10カ国の最高峰。振り返ってみると、決して楽な旅ではありませんでした。冬が来る前にすべての山に登るというタイムリミットがある中、登山ルートや現地の少ない情報を集め、天気予報とにらめっこしながら、どの日に登るのがベストなのかを考える日々。週に1回は山に登る生活は、体力的にもなかなかハードでした。
途中、季節外れの寒波に見舞われ、山が雪に覆われてしまったことも。これでは登れないかもしれない…と諦めかけたこともありました。それでも、天候の回復を待ちながらタイミングを見極め、なんとか10カ国すべての最高峰に登頂することができました。
今回の山旅で印象的だったのは、西ヨーロッパのアルプスとはひと味違う、東ヨーロッパの山々のワイルドな魅力です。事前に集められる情報も限られていて、未知の世界に飛び込むような山旅でした。
移動をしながらキャンピングカーで生活し、次の山の準備を進めるのもひと苦労でした。それでも、キャンピングカーがあったからこそ、天候に合わせて予定を柔軟に変更したり、登山口の近くで車中泊することができました。私たちにとって、キャンピングカーは単なる移動手段ではなく、この旅を実現するための大切な相棒だったのです。
そして何より、山に登ることで、その国の自然をより深く知ることができました。同じ東ヨーロッパでも、国が変われば山の表情も違います。観光地を巡るだけでは出会えなかった景色や、その土地ならではの空気、地元の人々との出会いを、全身で感じることができました。体力的にも精神的にも大変だった2カ月でしたが、夫婦で一緒に挑戦し、ひとつずつ山頂を目指した時間は、何にも代えがたい宝物になりました。













