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    2026.01.21

    【ヨーロッパ各国の最高峰チャレンジ】ブルガリアの頂上「ムサラ山」へ。白銀のてっぺんにいた“山の主”とは?

    【ヨーロッパ各国の最高峰チャレンジ】ブルガリアの頂上「ムサラ山」へ。白銀のてっぺんにいた“山の主”とは?
    ヨーロッパをキャンピングカーで旅しながら、「各国の最高峰に登る」というユニークなチャレンジを続けている私たち夫婦。これまでハードな山から、比較的簡単に登れちゃう山まで、16座の国のてっぺんを登頂してきました。

    今回向かったのは、ブルガリア最高峰・ムサラ山です。訪れたのは10月上旬で、本来なら秋のハイキングシーズンのはずが、登山の2日前に季節外れの大寒波が襲来。山は一夜にして雪景色に変わってしまいました。

    それでも諦めず、白銀の世界を登り続け、頂上で私たちを出迎えてくれたのは…人懐っこく、ふわふわでもふもふな、まさかの“あれ”でした。

    雪山の頂上に、凍えた心をほどくような“癒し”が待っているなんて、誰が想像したでしょうか。忘れられないムサラ山の登山体験をお届けします。

    ブルガリア最高峰・ムサラ山とは?

    リラ国立公園の雄大な自然の奥深くにそびえる、ブルガリア最高峰ムサラ山。

    ブルガリアで最も高い山であるMussala(ムサラ)は標高2,925mあり、バルカン半島全体の最高峰でもあります。名前の由来はアラビア語で「神に近い場所」を意味するとされており、まさに空に一番近い山です。

    登山の拠点となるのが、Borovets(ボロベツ)というスキーリゾートで、首都ソフィアから車で約1時間半とアクセスがよく、冬にはブルガリア有数のスキーリゾートとして多くの観光客で賑わう場所です。

    夏にはボロベツからゴンドラを利用して標高約2,300mまで一気に登ることができます。そこから山頂を目指すルートが短くなり、日帰り登山もしやすい山として親しまれています。

    まさかの大寒波襲来!10月のムサラが雪山に

    ムサラ山が一晩で完全な白銀の世界に大変身!

    私たちがムサラを訪れたのは10月上旬で、本来であれば紅葉のハイキングシーズンのはずでした。ところが、登山の2日前に季節外れの大寒波がブルガリアを直撃。山は一夜にして白く染まり、積雪はなんと50cmにもなりました。

    「大丈夫かな?」と少し心配にもなりましたが、せっかくここまで来たのだからと、私たちは登ることを選びました。アイゼンやピッケルなどの雪山装備を万全に整え、天候とルートをあらためて確認したうえで、ブルガリアの頂上を目指しました。

    オフシーズンのロングルートでムサラの頂上を目指す

    登山のスタート地点は、スキーリゾートの町ボロベツ。周囲にはホテルやレストラン、ショップ、大型駐車場も揃っていて、登山の拠点にはぴったりの場所です。

    標高約1,300mにあるボロベツスキーリゾート。

    本来ならここからリフトを使って短縮ルートで頂上を目指せるのですが、この時期は完全にオフシーズンで、リフトは動いていませんでした。そこで、私たちは往復27km、標高差1,650m のロングルートで頂上を目指すことになりました。

    ルートはしっかり整備され、標識も多いため、暗い中でも迷う心配はありません。

    長い道のりを考え、日の出前の6時に出発。薄暗い森の中、懐中電灯の光だけを頼りに登山スタートです。道は雪に覆われていましたが、そこまで深くなく、アイゼンなしでも十分に歩けました。「これからどんな景色が待っているのだろう」と話しながら、白銀の世界へと足を進めていきました。

    頂上を目指して白銀の世界をひたすら登る

    序盤は、高い木々に包まれた森の中をひたすら進んでいきます。

    歩き始めてしばらくすると、空が少しずつ明るくなり始めました。それと同時に徐々に標高も上がり、足元の雪は次第に深く、空気は一段と冷たくなっていきます。周囲はいつの間にか一面が白銀の世界。思わず言葉を失ってしまうほどの景色が広がっていました。

    森林限界を越えると、景色は一変。視界は一気に開け、目の前に現れたのは一面の雪景色です。

    そのままひたすら雪道を登り続け、歩き始めてから約4時間で、中間地点にあたるムサラ・レイクに到着です。

    標高約2,300mにあるムサラ小屋は、なんとも最高の眺め。

    湖はもちろん完全凍結し、静まり返った雪景色が広がっていました。湖畔にはムサラ小屋があり、ここで一旦休憩を取ることにしました。

    夏場は湖畔でキャンプもできるそうです。

    宿泊施設でもある小屋の中は、暖炉の火でぽかぽか。冷え切った体を芯から温めてくれました。

    小屋の中は、外の厳しさとは別世界の、温かく落ち着いた空間でした。

    そしてここで、思わぬ癒しが…小屋にいたのは、なんと可愛らしい2匹の猫。雪山の厳しさを忘れさせてくれる存在に、思わず頬が緩みます。

    暖炉の前でぬくぬくする猫たちに癒されました。

    心も体もすっかり温まったところで、まだまだ続く長い道のりへ戻ります。ここから先はいよいよ本格的な雪山登山です。傾斜も次第にきつくなってくるため、アイゼンを装着して再スタートしました。

    なかなかの急登で、ゼーゼー言いながら登っていきます。

    急登が続き、体力も気力も試されます。幸い、登ったのは日曜日で、前日に多くの登山者が入っていたようでした。トレース(踏み跡)がしっかり残っていたおかげでルートが分かりやすく、体力の消耗も最小限に抑えることができました。

    それでも雪の量には驚かされます。ザクザクとした雪を踏みしめながら歩く感覚は、やはり雪山ならでは。

    景色はどこを切り取っても美しく、何度も足を止めては周囲を見渡してしまい、なかなか前に進めません。

    やがて、頂上直下にある最後の湖と山小屋に到着。残念ながら小屋は閉まっていたため、そのまま先へ進みます。

    右に見えるのが、ムサラ山の頂上です。あと少し!

    そしてここからが、このルートの最難関。岩場の登りに差し掛かりました。

    このルート一番の難所の岩場ポイント。

    雪のない状態であればそれほど難しくはない岩場ですが、この日は岩が雪に覆われ、非常に滑りやすい状況でした。設置されている補助用のワイヤーロープを頼りに、両手もしっかり使いながら、一歩ずつ慎重に登っていきます。

    高さに足がすくむ岩場も、慎重に一歩ずつ進み、無事に乗り切りました。

    緊張感の続く場面でしたが、なんとか岩場を登りきり、ブルガリア最高峰の頂上は、もうすぐそこまで迫っていました。

    ついにブルガリアのてっぺんへ!そこで待っていたのは…

    ブルガリアのてっぺんに着いたぞー!
    雪に覆われた山々を頂上から一望。大自然の迫力に圧倒されっぱなしです。

    雪に覆われたムサラ山頂に、ついに到着です。長い道のりを登り切った達成感と、無事にたどり着けた安堵感の両方が一気に押し寄せてきます。その直後…登頂の疲れを一瞬で吹き飛ばす、信じられない光景が目に飛び込んできました。

    頂上で私たちを迎えてくれたのは、一匹の猫!

    なんと、大雪に囲まれた頂上に、一匹の猫がいたのです。しかもその猫は寒さに戸惑う様子もなく、雪の上をヒョコヒョコと歩き回っています。周囲に飼い主がいる様子もなく、「なぜ、こんな場所に?」と思うほど堂々とした佇まいで、その姿にただただ唖然としてしまいました。

    山頂標識と共に猫の写真まである、なんともユニークな山。

    山頂の標識を見ると、そこには猫の写真と説明が。どうやらこの猫は、ムサラ山の“マスコット”的存在のようです。とても人懐っこく、訪れる登山者に抱っこされたり、写真を撮られたりと大人気。

    軽やかに雪山を登る猫の姿に思わず笑みがこぼれます。

    下山時に、ムサラ小屋のオーナーに話を聞いてみたところ、猫の名前は Murli(ムルリ)。なんと、山頂に住み着いてからすでに5年ほど経つのだそうです。ムサラ山頂には気象観測ステーションがあり、数年前にそこの気象観測官が連れてきたのがきっかけで、ずっとこの場所で暮らしているとのこと。

    晴れた日には、下にあるムサラ・レイクまで降りて小屋の猫たちと遊び、また自分の足で山頂へ戻ってくるのだとか。まさに“登山猫”。凄すぎて言葉も出ません。「ムサラ山の主」と呼ぶにふさわしい猫でした。

    最高峰には、予想もつかない物語が待っている

    雪に覆われたムサラ山への登山は、正直なところ楽な道のりではありませんでした。行程時間約10時間のロングルートに加え、深い雪と寒さ、そして緊張感のある岩場。体力も気力も試される一座でしたが、登り切ったときの達成感は格別でした。

    そして何より印象に残ったのは、山頂で出会った猫のムルリです。ただの“最高地点”ではなく、思いがけない物語が待っている場所でした。

    これからもヨーロッパをキャンピングカーで旅しながら、各国の最高峰に登るチャレンジは続きます。どの最高峰にも、その山ならではのドラマがあります。次は、どんな景色に出会い、どんな物語が待っているのでしょうか。

    ルアナさん

    トラベルライター

    2023年1月から夫婦でキャンピングカーに暮らしながらヨーロッパを周遊中!登山、キャンプなどのアウトドアが大好きで、ヨーロッパでもアルプスや色んな地域の山を登っています。夫婦の長年の夢だったキャンピングカー暮らしで旅をして、有名観光地だけでなく、ガイドブックにも載っていないような秘境スポットをどんどん巡り、キャンピングカーライフや海外登山などリアルな体験談をお届けします。

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