車で簡単に頂上へアクセスできる山もあれば、テント泊で3日かけて登った山もあったりと、挑戦的な最高峰にも挑んできました。今回向かったのは、モンテネグロの最高峰・Zla Kolata(ズラ・コラタ)です。西ヨーロッパの整備された山々とは異なり、野性味あふれる存在感で、秘境そのもの。私たち以外に登山者はゼロで、冒険心をくすぐる瞬間の連続でした。
凍りついた岩場や険しい山道を登り切った先に広がるのは、360度の大パノラマと手つかずの大自然。まさに、「モンテネグロのてっぺんを独り占め!」できる体験でした。
貸し切り状態の山で味わった静寂と絶景の登山の様子をお届けします。
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モンテネグロ最高峰、ズラ・コラタとは

モンテネグロは、ヨーロッパ南東部のバルカン半島に位置する小さな国です。アドリア海に面した美しい海と、内陸部には荒々しくも手付かずの山岳地帯が広がっています。日本ではまだあまり馴染みがないかもしれませんが、一味違ったワイルドな自然を求める旅人たちが訪れる国として知られています。
そのモンテネグロの最高峰が、標高2,534mのズラ・コラタです。アルバニアとの国境にまたがる山で、実は国の最高峰と正式に認定されたのは比較的最近のことです。
以前は、標高約2,523mのBobotov Kuk(ボボトフ・クック)が「国内最高峰」として広く認識されていました。しかし、モンテネグロ独立後の2000年代以降、測量技術の進展と国境線の再確認が進み、ズラ・コラタの方が高いことが明確になり、“真の最高地点”として更新されました。
比較的新しく最高峰となったこともあり、アクセスや登山道はそこまで整備されておらず、人の手がほとんど入っていない、ワイルドな表情を楽しめるのが、この山ならではの魅力です。
登山口は山間の村「Vusanje」

私たちは、登山の拠点としてVusanje(ヴサニェ)という小さな村にキャンピングカーを停め、そこからズラ・コラタへの登山をスタートしました。山々に囲まれた静かな村で、ここを拠点に数日間、落ち着いた車中泊滞在を楽しむことができ、登山前の準備や体力調整にも最適な場所でした。
登山ルートは往復約23km、標高差は約1,700m、所要時間は約9~10時間ほどの行程になります。距離も標高差もある本格的なルートなので、頂上を目指すには、しっかりとした準備と体力が必要になります。
ズラ・コラタの頂上を目指して登山スタート

ズラ・コラタへの登山口には、駐車場などの設備は一切ないため、ヴサニェの村に車を停めて登ることになります。登山口までの距離も意外と長いため、この日は早朝に出発です。

序盤は森の中を進む穏やかなルートで、小さな住宅や農家の脇を通り抜けながら、徐々に山の中へと入っていきます。私たちが訪れたのは10月下旬で、ちょうど紅葉のピーク。黄色やオレンジに染まった木々に包まれ、足元には落ち葉が広がり、歩くだけで心地よい時間が流れていきます。

歩き始めて1時間ほどで、この登山道で唯一の施設とも言える小さな小屋に到着しました。この時期はオフシーズンのため閉まっていましたが、夏の間は営業しており、小さなカフェとして利用できるようです。自家製のチーズやハチミツなど、この地域ならではの食材を使ったメニューが楽しめるとのこと。もし開いていれば、ぜひ立ち寄りたい場所です。

それまでは四駆の車が通れそうな砂利道が続いていましたが、この小屋を過ぎると一気に雰囲気が変わり、本格的な登山道へと入っていきます。このあたりからは標識がほとんどなく、ルートもいくつかに分かれるため注意が必要です。

私たちもマップアプリで現在地を確認しながら慎重に進んでいましたが、少し気を抜いた隙に別のルートへ入り込んでしまい、気づけば遠回りをして正しいルートに戻ることに。

周囲には他の登山者の姿もまったくなく、ルートの分岐点もわかりにくいため、迷子にならないように気をつけなければならない区間でした。
さらに進んでいくと、目の前に現れたのは、圧倒的な存在感を放つ巨大な岩山。ズラ・コラタの頂上は、この岩山のさらに先にあります。ルートの後半になると手を使って岩場をよじ登る区間が続き、この山の大きな難所となっています。

穏やかな森歩きから一転し、徐々に山の“本気”を見せつけられるような展開に。期待と緊張が入り混じりながら、私たちはさらに奥へと足を進めていきました。
ハラハラの岩場ルートを抜け、モンテネグロのてっぺんへ

ここから先はいよいよ、手を使って岩場をよじ登っていく区間に入ります。ただし、極端に高度感があるわけではなく、技術的にも難易度が高いわけではありません。焦らず、一歩ずつ確実に進めば問題なく通過できるレベルです。

ずっと岩場が続くわけではなく、岩場と比較的なだらかな登山道を繰り返しながら、少しずつ標高を上げていくので、程よいバランスで登っていけます。

この地帯を見て思うのは、これまで訪れてきたヨーロッパの山々とは明らかに異なる、唯一無二の景色が広がっているということ。周囲を埋め尽くすのは、ゴツゴツとした岩に囲まれた荒々しい地形。整えられていない自然のままの姿に、この山の圧倒的なワイルドさを感じずにはいられません。

気づけば登山も終盤に差し掛かり、この日ここまで一度も他の登山者の姿を見ていません。広大な山の中で、「もしかして本当に、この山にいるのは私たちだけなのでは…?」そんな感覚がふと頭をよぎり、わずかな緊張が走ります。

やがてズラ・コラタの頂上が視界に入り、その直下に横たわる“最後の岩場”のラインもはっきりと見え、いよいよ核心部です。数日前、この一帯には雪が降っていたようで、これまでの登山道ではほとんど溶けていた雪が、この最後の岩場だけは残っていました。ほとんど太陽が当たらず、日陰になる時間が長いため、岩は完全に凍結状態。

傾斜のある岩場を、手と足の置き場を慎重に選びながら一歩ずつ進む。少しでもバランスを崩せば、そのまま滑り落ちてしまいかねない状況に、緊張感は一気に高まります。幸いこの時期はまだ雪も少なく、なんとか通過することができましたが、これが本格的な冬であれば、難易度は一気に跳ね上がるはずです。

そして、緊張の岩場を抜けると日差しの当たる明るい斜面に出て、ここからは雪も溶けているので、ようやく一息ついて登ることができます。頂上までは、あとわずか。最後のピークを30分ほど登り切れば、モンテネグロのてっぺんがすぐそこに待っています。

モンテネグロのてっぺんに到着!誰もいない絶景を独り占め

長く続いた岩場ルートで、体力以上に張り詰めた緊張が精神的な疲れとしてどっと押し寄せてきました。しかし、最後の一歩を越え、頂上に辿り着いた瞬間、すべての疲れが一気に報われました。

モンテネグロの最高峰、標高2,534mのズラ・コラタに到着です!

目の前に広がるのは、360度遮るもののない壮大なパノラマ。荒々しい岩山や谷間、遠くに連なるモンテネグロの山々の稜線まで、すべてが手に届きそうなほど鮮やかに目に飛び込んできます。「この大自然の中に私たちだけ」その瞬間の解放感は、言葉では言い表せない特別な体験でした。

苦労して登った甲斐を実感できる瞬間であり、これまでのヨーロッパ最高峰巡りの中でも、特に印象に残る体験になりました。
誰もいない山で感じた、野性味あふれる登山
今回のズラ・コラタは、私たちにとって特別な体験となりました。荒々しい岩山に囲まれた、誰もいない登山道を進む時間は、まるでヨーロッパ最後の秘境を歩いているかのような感覚でした。
登山経験者であれば十分に挑戦できる山ですが、体力はもちろん、精神的な集中力も求められます。また、岩場の多いルートのため、雪の積もる冬場は難易度が大きく上がってしまいます。挑戦するなら、雪がほぼ解けて登山道が明瞭になる6月〜9月下旬がベストシーズンと言えるでしょう。
これからも、私たちのヨーロッパ各国の最高峰を目指す旅は続きます。次はどの国のてっぺんに立つことができるのか、そんな期待を胸に、次の山へと向かいます。





