
私たち夫婦は、キャンピングカーでヨーロッパを巡りながら、各国の一番高い山を目指す旅を続けています。これまでに10カ国の最高峰にチャレンジし、そのうち9座に登頂成功。もちろんその中には、雪山を登る本格的な山もありましたが、実はびっくりするほど「手軽に登れてしまう最高峰」もあるのです。
今回は、実際に私たちが登った中で「気軽にアクセスでき、登山初心者や家族連れも登れる」ヨーロッパの国の最高峰を5つ厳選してご紹介します。最高地点からの景色は、その国の魅力がギュッと詰まったご褒美のようなものです。気軽だけど特別な体験、あなたも体感してみませんか?
【1】デンマーク・モーレホイ(171m)

デンマークの最高地点はMøllehøj(モーレホイ)という場所で、その標高はわずか171mとヨーロッパの国の中で一番低い最高峰になります。とはいえれっきとした「デンマークのてっぺん」です。山というよりかは、緩やかな丘で、のどかな牧草地の真ん中にポツリと位置しており、近くまで車で簡単にアクセスできます。
最寄りの駐車場があるEjer Bavnehøj(エア・バウネホイ)は、高さ13mの塔があり、第一次世界大戦後のユトランド南部再統合を記念して建てられました。

モーレホイまでは、駐車場からは歩いてほんの5分足らず。牧場の中を進み、道中には牛や羊がのんびりと草を食べている姿も見ることができ、まるで絵本の世界に迷い込んだような風景が広がります。
山頂(というより、「丘の上」)に到着すると「ここがデンマークの最高峰?!」と少し拍子抜けする景色が!モーレホイの標高を示す記念石が立っており、その隣には牛の小屋と、一風変わった最高峰の風景が広がっています。サイクリングルートやピクニックエリアとしても人気で、家族連れも多く、ピクニック気分で登頂できる、”お手軽最高峰”という感じで訪れるのにおすすめです。

【2】オランダ・ファールセルベルグ(322m)

オランダは、国土の4分の1が海面よりも低く、基本的に平坦な地形で、ほとんど山は存在しません。しかし、そんなオランダにも、ちゃんと”国の最高峰”はあります。その名も、Vaalserberg(ファールセルベルグ)、標高はわずか322mですが、ここはただの「一番高い場所」だけではないのです。
なんとここは、オランダ、ベルギー、ドイツの3カ国が交差する「三国国境地点(ザ・スリーカントリーポイント)」でもあります。「一度に3カ国をまたぐことができる!」という、まるで子どもの頃に夢見たような体験ができる特別な場所なのです。

駐車場からは、登りなども無く、徒歩5分程度とアクセスも抜群。周囲には展望塔やカフェ、巨大迷路や遊具のある広場など、家族連れや観光客で賑わう施設が整っており、「最高峰」とは思えないほどカジュアルに楽しめます。
オランダの最高峰よりかは、三国国境地点が人気のようで、多くの方がそのモニュメントの上をまたいだり、寝っ転がったりしてポーズを取って、記念撮影を楽しんでいました。「国のてっぺんに立つ」だけでなく、同時に「3カ国の上に立つ」という貴重な体験ができるのは、世界中でもそうそうないかもしれません。
【3】ベルギー・ボテランジュ(694m)

ベルギーの最高峰「Signal de Botrange(ボテランジュ)」は、驚くほど手軽にアクセスできる場所にあります。ベルギー東部のHautes Fagnes(オート・ファーニュ自然公園)内にあり、ここはヨーロッパでも有数の湿原地帯で、美しい草原や森林、木道などが整備されたハイキングコースが魅力です。
隣接する駐車場に車を停めて、数歩進むとどこにも続かない、不思議な階段が現れます。実はここがベルギーの最高地点なのです。本来の標高は694mですが、象徴的な“700mの標高”を達成したかったようで、1923年に高さ約6mの人工の石段が作られました。国土の「最高点」を分かりやすく演出するためのユニークな試みで、現在でも観光客はこの石段を登って、「700m地点に立った!」という体験を楽しむことができます。

その他、周囲には広々とした湿原と森の中をのんびりと歩ける木の遊歩道のハイキングコースがあり、ゆったりと時間が流れる自然の風景を楽しむことができます。ハイキングの後は、自然公園内にあるカフェでひと休みするのもおすすめ。地元のビールやベルギー名物のホットチョコレートを味わってひと息つく癒しの時間を感じられます。
「登ったぞ!」という達成感というよりは、自然とふれあいながら、のんびり歩く時間を楽しむ、静かなベルギーの“てっぺん体験”がここにはあります。
【4】ルクセンブルク・キュント山(560m)

ベルギー、ドイツ、フランスに囲まれた小さな国・ルクセンブルク。その最高峰「Kneiff(キュント山)」は、緩やかな丘陵と牧草地に囲まれた中にポツリとあります。標高は560mと比較的控えめながら、正式に国家最高峰として認定されている、れっきとした「てっぺん」です。
私たちは「Rastplatz – E-Bike Ladestation」という駐車スペースに車を停め、そこから徒歩で山頂を目指しました。牧草地を横切る近道もあったのですが、私有地のため遠回りを選択。車道をのんびり歩いて進むルートでしたが、車通りも少なく、のどかな田園風景の中を気持ちよく歩けます。途中からは砂利道になり、緩やかな斜面を15分ほど登ると、静かにその場所は現れました。

牧草地の中にぽつんと立つ小さな石碑と案内板、そしてルクセンブルクの国旗。一般的に最高峰というと、険しい登山道や高山を想像しがちですが、ここはその真逆。素朴な牧草地の中にポツリと建っている最高地点で、のどかで心がほっとする“最高峰体験”ができました。
【5】ポルトガル本土・セーラ・ダ・エストレーラ(1,993m)

ポルトガルは温暖な気候で、冬でもほとんど雪が降ることがないこの国にも、“雪の降るてっぺん”があるのです。それが、ポルトガル本土の最高峰、標高1,993mの「Sierra da Estrela(セーラ・ダ・エストレーラ)」です。
ポルトガル中部のセーラ・ダ・エストレーラ自然公園内に位置し、その最大の魅力は、車で山頂まで簡単にアクセスできることです。道路もよく整備されていて、曲がりくねった山道を登る間、車窓からは壮大な景色が広がります。特に雲がかかる日は、見渡す限りの雲海で、まるで雲の上をドライブしている感覚に包まれます。

頂上には「Torre(トーレ)」と呼ばれる塔が建っていて、その姿がこの山のシンボルにもなっています。その他、周囲にはレストランやカフェ、お土産屋もあり、ちょっとした山のテーマパークのような雰囲気。さらに、ポルトガル唯一のスキーリゾートがあり、冬にはスキーや雪遊びを楽しむ人々で賑わいます。一方、夏には爽やかな高原の風を感じながら、のんびりドライブやハイキングが楽しめる、1年を通じて様々な表情を味わえるポルトガル随一の山旅スポットです。
誰でも気軽に、標高2,000m近くの最高峰に立つことができるこの場所。ポルトガルの新しい魅力に触れられる、“てっぺんドライブ体験”、ぜひ味わってみてください。
高いだけが山じゃない。国の“てっぺん”に立つ楽しさ
今回ご紹介したのは、登山初心者や家族連れでも気軽にアクセスできる、手軽なヨーロッパ各国の最高峰ばかりです。標高の高さや登山の難しさだけではない、「その国のてっぺんに立つ」という特別な体験には、思った以上の感動が待っています。
これからもキャンピングカーでヨーロッパを巡りながら、「ゆる最高峰登山」の旅は続きます。次回は、少し標高も難易度も上がる「中級編」をお届けしますので、次なる“てっぺん”をどうぞお楽しみに!