
自分たちの体力とレベルに合わせて、登れそうな山に少しずつ挑戦して、これまで10カ国の最高峰に登ってきました。前回は、実際に登ったハイキング感覚で楽しめる初心者向けの山々を紹介しましたが、今回はちょっとステップアップ。
しっかりとした装備と体力があれば楽しめる、中級者向けの山を4座ご紹介します!北欧の氷河に抱かれた山、地中海を望むスペインの稜線、ピレネー山脈の静かな山道など、それぞれ魅力たっぷりです。
これまでヨーロッパ各国の最高峰に少しずつチャレンジしてきた私たち。前回は、ハイキング感覚で登れる初心者向けの5座を紹介しました。
今回は、しっかり装備と準備を整えて挑む「中級編」の山々をご紹介します。
ノルウェー:Galdhøpiggen(ガルフピッゲン)2,469m

ガルフピッゲンは、ノルウェーで最も高い山であり、北欧全体でも最高峰を誇ります。ノルウェー西部の「巨人の住処」とも呼ばれる、ヨトゥンヘイム国立公園内に位置し、その標高は2,469mです。
夏でも雪に覆われているその頂上を目指すには、主に2つのルートがあります。ひとつ目は、標高1,850mに位置する「Juvasshytta(ユーヴァスヒュッタ)」小屋から出発するルートです。往復約6時間、総距離約11kmで標高差も約700mと、ガルフピッゲンを目指す最短のルートですが、途中、危険な氷河渡りをする箇所があるため、ガイドツアーの利用が必須になります。
ふたつ目は、私たちも利用した「Spiterstulen(シュピターシュトゥレン)」小屋からのルートで、往復約10時間、総距離約15km、標高差約1,500mというロングコースです。体力は使いますが、難しい技術は必要なく、こちらは氷河を通らないのでガイドなしでも登れる人気のコースになります。

ベストシーズンは、雪も落ち着き、天候が安定する6月中旬〜9月上旬。私たちは、8月中旬に登りました。頂上や道中には雪がまだ残っており、アイゼンなしで登っている人も多く見かけましたが、アイゼンがあると安心できるので、夏でも持参するのをおすすめします。

登山道では、ノルウェーらしい手つかずの自然が広がり、その壮大な景色に思わず言葉を失う瞬間がいくつもあります。また、ゴツゴツした岩場の急斜面が結構続くため、かなり体力を消耗します。途中、トイレや水場などもないため、事前の準備をしっかりと行うのが大事です。
そして頂上に立つと、360度広がる氷河の絶景が目の前に現れます。まるで地球の果てに来たかのような、神秘的な光景です。山頂には、なんと夏場のみ開いているカフェと小さな売店があり、温かい飲み物やケーキを味わえます。
氷河に囲まれたその頂上からはここでしか見ることのできない、北欧ならではの風景で、忘れられない体験となります。
スウェーデン:Kebnekaise(ケブネカイセ)2,097m

スウェーデンの最高峰は、北極圏のアビスコ国立公園内に位置する、標高2,097mのケブネカイセです。北欧の広大な荒野にそびえるこの山への登頂には、往復60kmを3日かけて歩く必要があるため、長時間歩ける体力が必須。しかし、アクセスしにくい場所だからこそ、手つかずの壮大な自然がそのまま残されており、その風景は圧倒的です。北欧ハイカーの間でも「いつかは登りたい!」と憧れる山のひとつでもあります。
ベストシーズンは雪のない6月末~9月上旬まで。ただし、山頂は夏でも氷河に覆われているので、アイゼンがあると安心です。
登山ルートはいくつかあり、初心者~中級者向けで特別な装備が不要な西ルートを選びました。往復約60km、標高差約2,400mと長い距離ですが、技術的な難しさは少なく、長時間行動できる体力が求められます。私たちは9月中旬に、こちらのルートで2泊3日のテント泊をしながら頂上を目指すことにしました。
3日間の行程
- 【1日目】ニッカルオクタの登山口からスタート。ケブネカイセ・マウンテンステーションまで比較的ゆるやかな道を約19km(約6時間)歩き、テント泊。
- 【2日目】ケブネカイセ山頂を目指す!アップ・ダウンが激しい道を往復約18km(約10時間)歩きます。登頂後、ケブネカイセ・マウンテンステーションへ戻りもう1泊。
- 【3日目】ケブネカイセ・マウンテンステーションからニッカルオクタへ戻ります。距離約19km(約6時間)。

道中は360°どこを見渡しても大自然に囲まれ、人影もまばらで、静寂の中をのんびりと歩くことができます。

頂上からは見渡す限りの山、谷、空を一望でき、その絶景は圧巻そのものです。ケブネカイセトレイルは、雄大な自然の中をゆっくりと歩き、テント泊を通して北極圏の静けさを肌で感じながら、迫力満点の最高峰と絶景を堪能できる、心に残る山旅の舞台でした。

スペイン(本土):Mulhacén(ムラセン)3,479m

スペイン本土の最高峰、標高3,479mのムラセンは、アンダルシア地方のシエラ・ネバダ山脈に位置し、イベリア半島の最も高い山でもあります。標高は高いものの、登山道は整備されており、歩きやすく初心者でも挑戦しやすい山で、今回紹介した4つの最高峰の中ではもっとも簡単で登りやすい山です。

登山の起点は、標高約1,400mの山岳村カピレイラ。夏季にはこの村から山の中腹までシャトルバスが運行されており、それを利用すれば距離がさらに短縮され、より気軽に登頂できます。
私たちが訪れたのは季節外だったので、登山口のある「ホヤ・デル・ポルティージョ」から全ルートで登ることにしました。総距離は往復約23km、標高差約1,300mです。なかなかのロングトレイルですが、朝早くに出発すれば日帰りでも十分に登れる距離です。
ベストシーズンは、雪のない5月〜9月下旬ごろ。私たちは4月の下旬に訪れ、まだチラホラ雪が残っている箇所もありましたが、アイゼンなしでも歩けるぐらいでした。

スペインらしい乾いた大地と雄大な山々に囲まれて、開放感に包まれながらのびのびと歩けるのが魅力です。さらに、頂上からは、360°大パノラマが広がり、晴れている日には遠くのアフリカ大陸まで見渡せることも。
標高3,000m以上ありながらも、初心者でも登りやすいことから、夏になると多くの登山者が訪れる人気の山で、ヨーロッパアルプスとはまた違った南欧らしい景観を味わえる絶好の場所です。
アンドラ:Coma Pedrosa(コマ・ペドローサ)2,942m

最後に紹介するのが、スペインとフランスの間に位置するアンドラの最高峰です。あまり知名度のない国ですが、ピレネー山脈に囲まれた小さな国で、国土のほとんどが山岳地帯に覆われています。そして、そのてっぺんにひっそりとそびえるのが、標高2,942mのコマ・ペドローサです。
中級者向けで、岩稜やガレ場を含む箇所もあり、今回紹介した4座の中では一番難易度が高いです。ベストシーズンは雪のない6月〜9月。ルートは、アルンス村からのスタートが最もポピュラーで、往復約13km、標高差は約1,300mです。

私たちが訪れたのは5月中旬で、ふもとには新緑が広がっていてとても歩きやすい登山道でした。しかし、徐々に上部に上がるにつれて雪に覆われ始め、アイゼンとピッケルが必要な本格雪山に。残念ながら、急斜面や雪の不安定さを体感しながらも安全を第一に考え、頂上手前で引き返す判断をしました。

雪が多い時期は急登や雪崩のリスクもあるため、経験者向けの本格登山となりますが、雪のない時期は歩きやすく、頂上からはピレネーの山並みを360度見渡せる絶景が広がります。私たちも次回は夏季の好条件で再挑戦したいと思います。人が少なく、静かな山歩きが楽しめて、登りごたえのある最高峰としておすすめです。
ちょっと本格的、だけど誰でも挑戦できるヨーロッパ各国の“てっぺん”
今回ご紹介した4つの山は、どれもその国の”てっぺん”に立てる特別な場所。標高は高めで、ちょっと本格的な山も含まれていますが、「ガチ登山」というほどハードルは高くなく、季節と天候に注意すれば比較的誰でも挑戦できます。初心者を卒業して、「次の一歩」を踏み出したい人にはまさにぴったりのチャレンジです。
自分の足で登ってたどり着く山頂からの絶景、そしてその達成感は、街の観光とはまた違った旅の楽しみを教えてくれます。これからもキャンピングカーで旅を続けながら、ヨーロッパ各国の最高峰にチャレンジしていくので、どうぞお楽しみに!