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CONTENTS
5大陸14か国を巡る冒険紀行がついに単行本化!
金子浩久さんは、40年以上にわたってクルマ関連の執筆を続けてきたベテラン・モーター・ジャーナリスト。毎年、年末のニュースとして話題になる「日本カー・オブ・ザ・イヤー」の選考委員も長年務めています。
そんな金子さんの待望の新刊本が出ました。2026年9月15日発売、タイトルは『世界クルマ旅』!

車線のないロシアを、トヨタ・カルディナで、
サハラ砂漠に降る雹の中を、フォルクスワーゲン・トゥアレグV6 TDIで――
それぞれの国で走らせた、それぞれの車。
ハンドルを握ると、世界の素顔が見えてくる。
40年走り続けた自動車ジャーナリストが、各国の交通文化や歴史、そして人々との出会いについて綴った一冊。
金子 浩久(Kaneko Hirohisa)
1961年東京出身。新型車レビューや書籍執筆などを中心に、国内外での自動車とモータースポーツの取材執筆活動も行う。電動化や自動化などの最先端を追いつつ、その一方で愛好家たちを訪ね、自らハンドルを握って自動車旅行を重ね、スタンス広く取材執筆を続けている。モットーは「説明だけでなく解釈も」。著書に『10年10万kmストーリー』(二玄社)、『セナと日本人』(双葉社)、『レクサスのジレンマ』(学研)など。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員(BE-PAL選出)。
たんなる旅の本ではありません

運転支援機能が進化し、いずれクルマは自動運転になるのではという説もささやかれる昨今ですが、にもかかわらず、ハンドルを握ってクルマで旅に出ることは、ワクワクするような冒険です。
自動化が進んでいっても、初めての土地へハンドルを切りながら進んでいく時の高揚感は変わらない。むしろ、運転操作の負担が軽減される分、旅そのものと向き合う感興は高まっていくのではないだろうか?(中略)
クルマは大きな変革の中にあって技術も日進月歩しているけれども、峠を越えて見知らぬ土地の景色が眼の前に広がってくる時のあの胸の高鳴りは変わることがないだろう。
(『世界クルマ旅』「まえがき」)
だから、いまこそ、「クルマで旅に出よう」という誘いの言葉から、本書は始まります。鉄道やバスなどの公共交通機関と違って、クルマの旅なら地球上のあらゆるところに自由にアクセスが可能。クルマで実際に訪れると、そこには観光ガイドブックで紹介されていないようなことだらけで、まったく予期せぬことに次々と遭遇するのでした。
アンデスの標高5000メートルの峠を高山病の頭痛と闘いながらランドローバーで越え、自動車大国になりつつある中国では高速道路で「逆走」するトラクターに度肝を抜かれ、モンゴルの河を385馬力のSUVでザブザブと渡る途中でスタックし、カザフスタンの大草原で見かけた謎の石碑群のことを地元の人に尋ねたら、なんと第2次大戦時の日本人兵士の慰霊碑で、知られざる世界史の悲劇について考えさせられたりもして…。
アメリカで、撮影のためにクルマを路肩に駐めてハザードランプを点滅させていたら、突然パトカーが止まってちょっとしたハプニングになったこともありました。その一事件をふりかえりながら、日本でもサンキューハザードを使わずに済むような運転マナーと交通インフラを確立していくための、金子さん流の提言もつづられています。
クルマは「思考のための道具」でもある
いろんな旅があるもんだなぁ、と紀行文を楽しみながら、ふと登場するのが、金子さんならではの思索。ときにきらめきを見せる金子さん流の思考が、ふつうの旅の本とちょっと違うこの本ならではの醍醐味だと思います。
ロシアの道路で感じたのは、自由さではなく、怖さでした。なぜなら、その広い道路には車線がまったくなかったからです。
それまで外国でハンドルを握ってクルマを運転していると、「自由に旅している、移動している」と満足していた。でも、ロシアの車線のない広い道では恐怖感に支配された。何ものにも束縛されない自由がクルマの旅にはあるはずなのに、恐怖感に縛られ自由はまったく感じられなかった。走っている最中は不自由そのものだった。イワシは群れに従って走るしかなかった。
でも、不自由に感じているのは自分だ。ロシアのドライバーは何も感じていない。ロシアを走るまでは、実は僕らは車線に縛られているということすら自覚していなかったのだ。
鉄道やバスの旅よりも、クルマの旅の方が自由であることは間違いないのだけれども、不自由が自らの内に存在しているとは思わなかった。実は車線に縛られ、導かれていたのである。
(『世界クルマ旅』「③ロシア 車線に導かれていただけだった」)
「自由な旅」であるとばかり思っていたクルマの旅。その自由さを深奥で支えていたのは、「車線」という「不自由」だった――。うーむ、深いです。
私たちが「自由」というとき、その自由さを支えているものは何なのか。「自由さ」とはそもそも解放感なのか?それとも束縛状態でふと感じる感覚が「自由」なのだろうか?山歩きをしているときに感じる、自分の足でどこまでも歩いて行けそうな感覚。あの自由っぽい感覚もまた、「登山道」という不自由に支えられたものなのかもしれない――等々。
クルマを運転することで、脳内が解放され、根本的なことに気づき、思考の入口を開いてくれる。クルマは「考えるための道具」でもあるのだと気づかされます。
ソローのウォールデン小屋と森の生活
金子さんは十代のころに雑誌『宝島』でヘンリー・ソローの名著『森の生活』の新訳を読み、いつかその舞台を訪れてみたいと思っていました。そして20代の後半(ちょうどソローが独居生活を試みた年ごろ)、アメリカをレンタカーで旅して、かつてソローが小屋を建てて自給自足生活を送ったウォールデン池を訪れます。
ノヴァを駐車スペースに停め、森の中に歩いていくと池が見えた。さらに進むと、池のほとりにまで出ることができた。そんなに大きな池ではない。池沿いを歩けるように整備された道が続いている。奥の方に向かって歩いてみると、池の中央を何か大きなものが横切っている。
人間だった!
男性が泳いでいた。
他には誰もおらず、静かなところだった。
池の反対側には、ソローが暮らしていた小屋の跡地に礎石が残されていた。小屋を再現したレプリカもあった。
実際にソローが暮らしていたのは1845年7月4日から1847年9月6日なので電気やガスなどは使われていない。シャワーや水洗トイレなどもない。火を起こし、薪を燃やして湯を沸かし、調理をしていた様子は『森の生活』に描かれている。
キャッシュとクレジットカードさえ持っていれば、僕のような旅人でも簡単に何でも手に入れることのできる、便利な現代アメリカのマジョリティのライフスタイルとは正反対の意識の痕跡をウォールデン池のほとりに見ることができたのは収穫だった。
(『世界クルマ旅』「⑥アメリカ大陸 再びソローの許へ」)
「Do It Yourself」の精神。自然を愛し、自然とともに生きるライフスタイル。簡素で優雅なシンプルライフ。古き良きアメリカ的な独立心。マーティン・ルーサー・キング牧師に強い影響を及ぼした「市民的不服従」の考え方。
このWEBメディア『BE-PAL』、そして1981年創刊のアウトドア雑誌『BE-PAL』も、アウトドアや山暮らしを趣味として楽しむライフスタイルも、おそらくソローがいなければ生まれていなかったかもしれません。
ソローが湖のほとりで一人暮らしをし、四季折々の自然を見つめながら思索をつむいだその地には、いまなおアメリカの人々に脈々と受け継がれている「ソロー的な精神」が息づいているのでした。
AI時代は「旅でしか出会えないもの」がますます重要に!
クルマとはたんなる移動手段ではないのかもしれません。映画や音楽のように、感覚と思考を解き放ち、いつもとまったく別のことを感じ、考えさせてくれる。時空を超え、非日常に飛び立つための手段なのかもしれません。
陽も傾き始めてきて、ルームミラーに映る後続車のシルエットしか見えなくなった。ヘッドライトも自動的に点灯を始めた。前方は夕焼けで明るいが、後ろと左右は暗闇が支配し始めてきている。
左前方が夕陽を反射し始めてきた。砂漠ではなく、水面だった。アンドレアスがトゥアレグを路肩に寄せて停めた。こちらも停めて、降りた。
「ジェリド湖だ。チュニジアで一番大きな湖だ」
ジェリド湖が細くなっているところに舗装路が通っていて、そこを走ってトズールに戻る。砂漠の地平線とジェリド湖の水平線が一直線につながって、境目がわからない。風もなく波立ってもいないので、暗くなっているところではどこまでが砂漠で、どこから水面が始まっているのかがわからない。
夕陽は空と水面の両方を照らしながら、少しずつ沈んでいっている。砂漠と空と湖の境目がなくなり、すべてが飲み込まれてしまいそうだ。超現実的な絶景に息を飲んだ。
(『世界クルマ旅』「⑤アフリカ サハラ砂漠で雹に降られたチュニジア」)
この世界には、旅でしか出会えないものがあります。自分の目で見なければ、心底わからないことが。
同じ景色でも、スマートフォンの画面で見るのと、実際にその場に足を運んで自分の目で見るのとでは、まったく違う。自らの心と体がそのときどのような状態であるかによっても、その景色の感じ方は、ぜんぜん違ったものになる。
だから「絶景」とは一期一会であり、百人百様。記憶にかすかに残りはするけれど、「その一瞬の生身の体感」そのものは、はかなく消え失せてしまうのです。
この先、どれほどAIが進化したとしても、自動運転技術がどれだけ社会に実装されたとしても、旅でしか出会えないもののかけがえのなさは変わらないでしょう。いや、世の中が便利になればなるほど、その貴重さ、プライスレスなその価値は、ますます増していくでしょう。
金子さんの本のなかに、こんな一言で記されていました。
〝地球を自分の身体と勘で確かめ、判断すること〞の気持ち良さ
金子さんがラリーレイドに参加し、大草原を走り、河をクルマで渡る地点を調べるときに体得した感覚です。
「自分の身体と勘を使う」。これこそ「旅の愉しみ」の重要な成分であり、そしてAI時代にも永遠に不滅の「生きる愉しみ」そのものではないでしょうか。
金子 浩久 世界クルマ旅〈わたしの旅ブックス75〉
「金子浩久って誰?」と思ったら

金子さんのことを知るには、金子さんが毎日更新している公式note「金子浩久書店」をご覧いただくのがいちばんなのですが、そこに掲載された「長めのプロフィール」を以下にご紹介します。
note『金子浩久書店』「長めのプロフィール」1961年東京生まれ東京育ち。大学卒業後、出版社で書籍と雑誌の編集者を務めた後に1987年独立。国内外で自動車とモータースポーツの取材執筆活動へ。市井の人々を探し訪ねてカー&ヒューマンライフを描き出す『10年10万kmストーリー』は1990年から自動車雑誌「NAVI」(二玄社)で連載開始。デビュー作として2年後に出版され、4冊が単行本化。同誌休刊後もnoteでの有料配信と「モーターマガジン」誌での連載が継続している。
モータースポーツ取材の成果として『セナと日本人』(双葉社)を上梓。セナの事故死後、夥しい数の“セナ本”が玉石混交しながら書店にあふれたが、最後となったレースを取材し独自の視点として日本人との関係に焦点を当て1年後に刊行。文庫化もなされた。
取材だけでなく、プライベートでもレンタカーで海外を旅行した際の体験の数々を『地球自動車旅行』(東京書籍)として出版。
新型車取材を続けるうちに、自動車を“機械”よりも“商品”として捉える必要性を痛感して出版したのが『レクサスのジレンマ』(学研)と『ニッポンミニストーリー』(小学館)、『力説自動車』(小沢コージ氏との共著、小学館)の3部作。
また、それらの取材執筆と並行しながら長年の夢であり課題でもあったユーラシア大陸横断の準備を進める。36万円で中古のトヨタ カルディナを買い、2003年に東京からロシア経由で最西端の地ポルトガルのロカ岬まで走った。その旅日記は道中から悪戦苦労しながらネットにアクセスして「WebCG」に連日アップしながら、帰国後に大幅な加筆修正を加えた決定版として『ユーラシア横断1万5000キロ』(二玄社)を刊行した。
未知の旅を計画しロシアを走った経験を買われて、チームポルシェジャパンが参戦するアドベンチャーラリー「トランスシベリア」のナビゲーターとして参加。モータースポーツの取材記事はたくさん書いてきたが、出場するのは初めて。ましてやモスクワからモンゴルのウランバートルまで2週間7000km、キャンプしながら毎日競走するアドベンチャーラリーという競技は取材したことさえなかった。ヴァイザッハで専用に製作された2座席のカイエンSで完走し、2007年総合12位、2008年総合10位。どちらも帰国後に長い参戦記を書いた。
イギリスの自動車雑誌「TopGear」香港&台湾&中国版で連載していた「日本の自動車愛好家たち」で取材させてもらったクラシックロールスロイスとベントレーのコレクターでありディーラーである涌井清春氏の半生と哲学を『クラシックカー屋一代記』(集英社)として上梓。
電動化や自動化などによって大きな変貌を遂げつつある世界の自動車の最先端を追いつつ、もう一方の端緒となる“機械遺産”“産業遺産”としてのクラシックカー愛好家たちを訪ね、さらには自らハンドルを握って自動車旅行を続けながら、スタンス広く構え取材執筆を続けている。モットーは「説明よりも解釈を」。
上記のように金子さんの仕事は多岐にわたります。なかでも特筆すべきは、雑誌『NAVI』で1990年に連載がスタートし、その後、単行本化されて話題となった『10年10万kmストーリー』でしょう。1台のクルマに10年、もしくは10万km以上乗り続けている人を紹介する愛車物語なのですが、なんと今も連載がnoteで続いていて、金子さんが新たにインタビューした新記事が読めるんですよ。
いろんなクルマに乗ってる人がいるものだなぁ、人生いろいろだなぁと感嘆させられつつ、長年同じクルマに乗っている人ならではのクルマ愛に、ついついホロリと共感させられてしまう。すばらしい取材記事なんです。読んでおもしろいだけでなく、クルマにテーマをとったオーラルヒストリー(口述歴史)でもあって、1990年代から今の時代までの無名な人々のリアルな人生の記録。とても貴重な、後世に残る時代の証言です。
そんな金子さんのもうひとつのライフワーク、長距離自動車旅行の魅力が詰まった新刊『世界クルマ旅』、ぜひ手に取って読んでみてくださいね。読むとどこかに旅をしたくなる、そしてクルマ旅でしか出会えない何かに会いにいきたくなる一冊です。










