日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員(BE-PAL選出)の金子浩久が、一般道やオフロードコースを走って気づいた点を報告します。
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2025年に国内導入されたジムニーシリーズ待望の4ドア

スズキの軽自動車オフロードSUV「ジムニー」のボディの幅を広げ4ドア化して1.5リッターエンジンを積んだ登録車となる「ジムニーノマド」。
スズキが大きなシェアを確保しているインドで生産され、すでにインドなどの外国では販売されています。
これで日本には、軽自動車のジムニー、1.5リッター4気筒エンジンを搭載した登録車のジムニーシエラとジムニーノマドの3車種が揃いました。シエラが幅広ボディの2ドアであるのに対して、ノマドは4ドア。
最初に5MT版で朝霧高原と本栖湖の一般道を往復しました。「FC」だけのモノグレードで、車両本体価格(税込)が292万6000円、オプションを追加した合計額が(税込)318万1640円。

駐車場でドアを開けて乗り込む時に、ボディに頭を強くブツけました。思いの外に、運転席の開口部が小さかったのです。同業者も同じようにブツけていました。ルーフを下方に折り曲げるように下げているから、見た目と実際の感覚が違ってくるのだと思います。似た形状のメルセデスベンツGクラスは開口部が大きいので、ブツけた記憶がありません。
運転席に座って走行前に気になった3点

走り始める前から、いくつか不明点と疑問点がありました。まずは、エアコンの温度調節のダイヤル中央部を押しても、“AUTO”の文字が変化せず、エアコンがONなのかOFFなのかがわかりませんでした。
このような形状のエアコンのダイヤルは多くのクルマでも見られる標準的なタイプなので、ジムニーノマドも押せばONになり、白いAUTOの文字が点灯するなりしてONOFFを示してくれるものだとばかり思って何度も押しましたが、何も反応しません。送風ダクトから冷たそうな空気が吹き出しているので“たぶんONなのだろう”と諦めて走り出しました。エアコンだけにこだわっている時間は今回はないからです。
また、カーナビやSpotifyなどを働かせるApple CarPlayの接続がBluetoothではなく、有線のコードでなければ不可能なことも2026年に新登場するクルマとして古い。USBコードで有線接続できますが、コードが邪魔になります。
さらに、スピードメーターとタコメーターがリアルなプラスチック製の針を持っていることにも違和感がありました。その中間にあるデジタル式マルチファンクションメーターに速度も表示してあるのですから、両方のメーターは不要です。

リアルな針が“道具感”“ギア感”を演出しようとしているのか、メーターの周囲を航空機の計器群のようにデザインしたプラスチック製の枠が付けられていますが、これも要りません。最近マイナーチェンジを受けた同じスズキのクロスビーのように、デジタルのメーター1枚にすればスッキリして見やすく、使いやすくなります。
走り出す前に3か所も気になるところが見つかり、総じてジムニーノマドのドライバーインターフェイスは統一感に乏しく、使いやすいとは言えませんでした。センスも古い。
一般道走行で感じたラダーフレーム構造の宿命
駐車場から一般道に出てすぐに感じられたのは荒い乗り心地でした。アスファルト舗装の繋ぎ目や路面の凹凸、段差などを越える時に、強いショックを伴います。速度を上げた時のタイヤの上下動も抑え切れていません。どれも、遠因はラダーフレームを持つボディ構造にあります。歩いて越えられないような悪路を走破するためのジムニーならではのボディ構造は、舗装路で乗用車のような滑らかで穏やかな乗り心地も両立させることは難しいのです。ジムニーだけでなく、過酷な目的が課せられたラダーフレーム構造のクロスカントリーSUVの宿命でもあります。

1.5リッターエンジンの最大トルクは130Nm(13.3kgf•m)/4000rpmですが、十分とは感じられませんでした。上り勾配の一般道を5速で50km/hぐらいで走っていると失速してきて、4速にシフトダウンせざるを得なくなることが頻繁に起きていました。別の状況でも変わらず、こまめなシフトダウンが必要となります。一人乗車でしたから、複数名で乗車して荷物も積み込めばその傾向はさらに強まるでしょう。ターボ化されれば多少は改められるかもしれません。

オフロード走行ですべての不満や疑問が吹っ飛んだ!

オフロードコースでAT版に乗り換えると、それまでの不満や疑問が一時的にせよ、すべて吹き飛びました。未舗装路コースと特設の凹凸路で試乗すると、ジムニーノマドは水を得た魚です。どんなに滑りそうだったりスタックしてしまいそうな路面でも、大きな凹凸が連続するようなところを走っても根を上げませんでした。
速度とコースは調整しながら走りましたが、走り越えられなかったところはありません。卓越した悪路走破能力には舌を巻かされました。おまけにボディが小さいので急な登りや降り路面でも見切りやすく、コントロールしやすい。
歴代のジムニーは各地の林業やダム管理などに従事しているプロフェッショナルから“無くてはならない存在”として高い支持を集め続けています。その理由を十分に体感できました。
コースの中には、左右のタイヤが交互に大きな凹凸を越えなければならない路面が設営されていました。ジムニーノマドは4本のタイヤを激しく上下動させながら、難なく走り切ってしまいました。3周、4周と繰り返し走りましたが、スタックして前に進めなくなったことはありませんでした。新たに装備された「ブレーキLSDコントロール」の絶大な威力が発揮されていました。これがないと、タイヤが空転して前へ進まなくなっていたでしょう。
オフロードコースで十分に確認できたのは、ボディが小さく軽いことによる悪路での抜群の走破性能と他車は絶対にかなわない扱いやすさです。ジムニーを買う意味はその2点にあります。日本の宝のようなクルマです。本当に素晴らしい。
ジムニーシリーズに憧れだけで街で乗ることは薦めません

欲を言えば、他車がこぞって採用している、ボンネット下を擬似的に透視できるカメラ映像システムも選べたら良かった。ジムニーにこそ必要な装備なのにされていない。プロたちも望んでいるはず。開発陣の皆さんも、それは首肯していたのでいずれ装備されるかもしれません。
ノマドに限らず、どのジムニーを運転しても断言できるのは、ジムニーというクルマは、“道具そのもの”であるということです。ときどき、“道具感”や“ギア感”をイメージとして訴求してくるSUVがありますが、ジムニーは“感”ではなく“本物”“リアル”そのものなのです。そこが本質であり、価値となっています。
ですから、ジムニーに憧れだけで街で乗ることは薦めません。ハードな悪路を走らなければ、アーバンタイプのSUVの方が総合的な満足感は高くなるからです。
ヨーロッパでのGクラスのように、プロ向けの「Professional」シリーズと民生用を造り分けることを検討しても良いかもしれません。プロ向けはもっとシンプルに、民生用はオンロードでの快適性を上げて、操作性をモダナイズするのです。どちらの仕様にも、開発陣からプロアマ問わないユーザーへの新しい提案がもっとあっても良いと思います。
4ドア化した大きなボディとなっても、ジムニーノマドはジムニーシリーズの本質と価値を体現していることを確かめることができました。




