何はともあれ、そこに描かれている鳥はBald Eagle (ハクトウワシ)と呼ばれる、大型の猛禽類です。建国以来ずっとアメリカ合衆国を象徴する鳥として知られていましたが、連邦政府から公式に国鳥と指定されたのは2024年12月。ごく最近のことです。
さらに今年の夏になってから、カリフォルニアではそのハクトウワシを巡る一連のニュースが大きな話題になりました。
発端はロサンゼルスに近い山岳リゾート、ビッグベアーでハクトウワシのつがいが巣作りを始めたことです。2羽にはジャッキー(メス)とシャドウ(オス)という名前がつけられ、その様子がライブカメラで配信されてきました。
ところが2026年7月、ジャッキーがビッグベアー湖畔で弱った状態で発見され、保護されました。病院に運ばれたジャッキーは、重度の貧血や腎臓などの異常が見つかり、輸血や酸素療法などを含む集中治療を受けました。3週間以上にわたる治療も及ばず、8月10日に死亡しました。
野生動物に高度な医療を施すことの是非については賛否両論がありました。議論の背景には、ハクトウワシはかつて絶滅寸前まで追い詰められたものの、その後の保護活動によって復活しつつある歴史的経緯があります。
1960年代頃から、アメリカ本土48州のハクトウワシは深刻な減少に見舞われていました。その大きな原因のひとつが、農薬として使われていたDDTです。体内に蓄積したDDTによって卵の殻が薄くなり、繁殖がうまくいかなくなったのです。
1963年には、本土48州の繁殖ペアはわずか417組まで減少しました。その後、1972年にアメリカでDDTの使用が禁止され、絶滅危惧種法による保護、営巣地の保全、繁殖・再導入などの取り組みが進められました。その結果、個体数は劇的に回復し、2007年には連邦政府の絶滅危惧種リストから外されました。
現在では、アラスカやカナダだけでなく、アメリカ本土のさまざまな場所でハクトウワシの生息が確認されています。ジャッキーとシャドウもその例のひとつなのです。
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【動物ドッキリクイズ・その41】ハクトウワシのクイズです!
第1問 「ハクトウワシ(Bald Eagle)」の「Bald」は何を意味している?
a) 頭が禿げている
b) 頭に模様がない
c) 白い頭
d) 硬い頭
“bald” という単語はふつう「禿げた」という意味で使われます。たとえば、山頂付近に樹木がなく山肌がむき出しになっているからという理由で“bald mountain”(禿山)という名称がついた山がアメリカ中にたくさんあります。以前紹介したロサンゼルス近郊の最高峰もそのひとつです。
すると“Bald Eagle”という名前を直訳すると「禿げたワシ」になるのでしょうか? でも、この鳥の写真を見てもとくに禿げてはいないよ?と思った人は鋭いですね。実はこの“bald eagle”という名称には、ちょっと意外な由来があるのです。

正解は「c)白い頭」です。
“bald”の現在の意味は前述した通りなのですが、古い英語では「白」を意味するのだということです。知っていましたか? 私は知りませんでした。
ハクトウワシは頭が禿げているわけではありません。頭が白いのです。尾も白いですけど。
日本語名をカタカナではなく、漢字で表記すると「白頭鷲」。誰がそう訳したのかは寡聞にして知りませんが、実に正しい命名です。
ちなみに、白い頭と尾が現れるのは成鳥になってから。若いハクトウワシは全身がほぼ茶色で、私たちがイメージする姿になるまで4~5年ほどかかるそうです。
第2問 ハクトウワシの夫婦関係は?
a) 毎年相手が変わる
b) 一生同じ相手と暮らす
c) 子育てが終わると別れる
d) 一夫多妻制
有名になったジャッキーとシャドウのように、ハクトウワシはオスとメスが協力して巣を作り、卵を温め、ヒナを育てます。
では、その夫婦関係はどのくらい続くのでしょうか?

正解は「b)一生同じ相手と暮らす」です。
ハクトウワシは基本的に一生同じ相手とつがいになります。ただし、相手が死んだ場合には、残された個体が新しいパートナーを見つけることもあります。
ビッグベアーのジャッキーとシャドウも、長年にわたって同じ巣で暮らし続けていました。2015年にライブカメラが設置されてから10年以上、その仲睦まじい姿を多くの人が見守っていたわけです。
長年連れ添ったジャッキーが亡くなり、寡夫となったシャドウはどうするのか。そんな風に胸を痛めていた人には複雑なニュースですが、別の若いメスとふたり(2羽)で同じ巣にいることが最近分かりました(*1)。
*1. Days After Jackie Died, a New Female Found Shadow’s Nest.
https://a-z-animals.com/articles/theres-a-new-female-in-shadows-nest/
ジャッキーが亡くなってからまだ2週間ほどしか経っていないのですが、どうやらシャドウは新たなパートナーを早くも見つけたようです。
第3問 ハクトウワシの平均寿命は?
a) 約1年未満
b) 約5年
c) 約10年
d) 約25年以上
亡くなったときのジャッキーは推定14歳でした。彼女はハクトウワシにしては短命だったのでしょうか、それとも長寿をまっとうしたのでしょうか。

正解は「d)約25年以上」です。
ジャッキーはまだ若くして亡くなったわけですね。死因は病気ですから、薄幸の美人だったのかもしれません。
アメリカ魚類野生生物局(*2)によると、ハクトウワシは野生下でも30年ほど生きることもあります。飼育下の環境ではそれ以上長く生きることもあるとのこと。4~5歳で成鳥の姿になり、5~6歳ごろから繁殖する年齢に達します。
*2. アメリカ魚類野生生物局ウェブサイト内ハクトウワシ紹介ページ:
https://www.fws.gov/species/bald-eagle-haliaeetus-leucocephalus
第4問 ハクトウワシの巣の大きさは?
a) 乗用車くらい
b) 大型トラックくらい
c) 自転車くらい
d) バスケットボールくらい
ハクトウワシは翼を広げると約2mにもなる大きな鳥です。その夫婦が子育てをする巣もそれなりに大きい……とは想像できます。具体的にはどれほどの大きさなのでしょうか。

正解は「a)乗用車くらい」です。
ハクトウワシの夫婦は同じ巣を何年も使い続け、毎年のように枝などを付け足していきます。当然、長年住み続けることでどんどん大きくなります。なかには直径3m、深さ3mを超え、重さが数百~数千kgにも達することもあるそうです。
おわりに
生息数が増えているとはいえ、私はまだ野生のハクトウワシをこの目で見たことがありません。各地の動物園でフェンス越しに姿を眺めたことがあるだけです。
それでも、一時は絶滅の危機にあったこの大きな鳥が長年の保護活動のおかげで復活しつつあるという事実には励まされる気持ちになります。ニッポニア・ニッポンこと、日本のトキも最近は生息数が劇的な回復を遂げているそうですね。
いったん壊された自然は2度と元には戻らないと絶望しがちですが、必ずしもそうとは言い切れないケースもあるようです。むろん、再生は容易なことではありません。それには多大な労力も時間もかかることは承知のうえで、それでもけっして諦めてはいけないと思います。
ハクトウワシがアメリカの空を悠然と見下ろすように、日本の空にも再びトキの羽ばたきが当たり前に溶け込む未来が来ることを祈ります。





