2026年から外国人別料金制度を導入。いま、アメリカの国立公園で起きている変化って? | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

海外の旅

2026.06.01

2026年から外国人別料金制度を導入。いま、アメリカの国立公園で起きている変化って?

2026年から外国人別料金制度を導入。いま、アメリカの国立公園で起きている変化って?
今回は少し残念な話をします。2026年からアメリカの国立公園に「外国人別料金制度」が導入されました。より正確に述べるなら、「アメリカ国内居住者」か「非居住者」かによって、国立公園を訪れるための入園料に差ができました。むろんのことですが、日本人旅行者を含む「非居住者」側の負担が大きくなります。

スポーツ観戦、ショッピング、カジノなど、アメリカを観光で訪れる目的はさまざまです。BE-PAL読者ならアウトドア体験、なかでも国立公園を巡る旅は大きな魅力ではないでしょうか。巨大な渓谷が広がるグランド・キャニオン、花崗岩の絶壁で知られるヨセミテ、間欠泉が噴き上がるイエローストーン。どれも一度は行ってみたいと願う人は多いはず。

ただでさえ物価高と円安のダブルパンチでアメリカ観光の経済的ハードルが高くなっている昨今、追い打ちをかけられたように感じるかもしれませんね。ただ、これは単なる値上げニュースではなく、その背景には「貴重な自然をだれがどう守るのか」という大きなテーマがあります。
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そもそもアメリカの国立公園とは?

グランドキャニオン国立公園。

アメリカの国立公園制度の歴史は19世紀にまで遡ります。その頃のアメリカは急激に拡大していました。西部開拓が進み、領土が拡大する一方、鉄道建設や資源開発によって自然破壊も広がっていました。そんななか、1872年にイエローストーンが世界初の国立公園として設立されました。

その後、ヨセミテ(1890年)やグレイシャー(1910年)などが次々と国立公園に指定され、1916年には内務省内にNational Park Service(国立公園局)が創設されました。現在に続く、連邦政府による国立公園制度が確立したのです。

参考までに述べると、アメリカの国立公園制度は日本のそれとはやや異なります。アメリカでは国有地を中心に「手つかずの自然」を保護する発想が強かったのに対し、日本では私有地や集落、農地、温泉地などを含みながら景観を保護する仕組みとして発展しました。

現在、アメリカの国立公園システムには63の国立公園を含む400以上の保護地域があり、年間来園者数は3億人を超えるといわれています。ほぼアメリカの人口と同じ数です。むろんそのなかにはアメリカ人も外国人も含まれるわけですが、その正確な比率は不明です。なぜなら、これまでは国立公園の入場ゲートでは国籍も居住地も問われることはなかったからです。

年間パスは80ドルから250ドルへ

ザイオン国立公園。

「America the Beautiful Pass」という年間パスがあります。これを購入すると、1年間、全米の国立公園を何回でも利用できます。複数の国立公園を訪れたい人や同じ場所に何回でも訪れたい人には便利です。

昨年まではこの年間パスを国籍・居住地に関係なく一律80ドルで購入できました。通常の入園料は公園によって異なりますが、ヨセミテやグランドキャニオンなど人気の高い公園は35ドルですので(2026年現在)、年間パスを利用すると年内に3か所あるいは3回訪れると元が取れる仕組みです。

ところが、2026年からは料金が「居住者用」と「非居住者用」に分かれます。アメリカ市民や居住者向けは従来通り80ドル。一方、日本から観光で訪れる人など、非居住者向けは250ドルになりました。一気に3倍以上の値上げです。

この年間パスはあくまで「公園内に立ち入る許可」が得られるだけのものです。ホテルに宿泊する費用もキャンプ料金も一切含まれません。それだけで250ドル。現在の1ドル約160円の為替レートで計算すると4万円。高いよなと思いますよね。

年間パスは料金改定に伴ってデジタル化もされました。居住者用と非居住者用はデザインが異なります。居住者用にはジョージ・ワシントンとドナルド・トランプの肖像画が描かれていることが物議を醸しました(https://www.recreation.gov/pass)。 

建国250周年記念ということですので、初代大統領が登場することは分かります。しかし、ご存知の通り、現大統領については賛否両論があり、評価が定まっているとは言い難い人物です。ちなみに、非居住者用のパスの方は無難に(?)風景がデザインされています。

アメリカ居住者にはさらに有利な特典があります。62歳以上のシニアは永久パスが80ドル、年間パスも20ドルで購入できるのです。高齢でも非居住者にはその購入資格はありません。

人気国立公園単体は1人あたり35ドルから135ドルへ

ヨセミテ国立公園。

短期旅行者にとっては、さらに大きな変化があります。とくに人気の高い国立公園では、非居住者は通常の入園料の他に、16歳以上1人あたり100ドルが追加で課せられることになったのです。

その対象となるのは下記の11の国立公園です。

  • アカディア
  • ブライスキャニオン
  • エバーグレーズ
  • グレイシャー
  • グランドキャニオン
  • グランドティトン
  • ロッキーマウンテン
  • セコイア&キングスキャニオン
  • イエローストーン
  • ヨセミテ
  • ザイオン

たとえ行ったことがなくても、聞いたことがあるな、と思う地名ばかりだと思います。というより、「アメリカの大自然を巡る」といったツアーで、上記以外の国立公園が選ばれることのほうが稀ではないでしょうか。

たとえば ヨセミテ の場合、7日間有効の自家用車入園料は35ドル(2026年現在)です。これまでは、アメリカ居住者も非居住者も同じ価格で入園できました。

しかし2026年からは、非居住者に限って、ここに大人1人あたりの追加料金100ドルが加わります。 

たとえば夫婦2人でヨセミテを訪れる場合、

  • 通常入園料:35ドル
  • 非居住者追加料金:100ドル×2人=200ドル

合計235ドル、約37,600円ナリ。そんな大金を入場ゲートで支払うことになるのです。まるでディズニーランドやドジャー・スタジアムのようです。

同じ車に4人乗ったグループなどはさらに人数分だけ負担が増えます。もちろん250ドルの非居住者向け年間パスを購入すれば追加料金は免除されますが、「とにかくヨセミテだけには行きたい」という旅行者にとっては悩ましい金額です。

オーバーツーリズムと自然環境

クレーターレイク国立公園。

世界中の人気観光スポットの例に違わず、アメリカの国立公園も深刻なオーバーツーリズムの問題に直面しています。

一部の人気国立公園は、とにかく混雑しているのです。ヨセミテでは宿泊場所が常に不足し、1年後の予約が取れないこともあります。グランドキャニオンでは駐車場不足が問題になり、イエローストーンでは野生動物を見るための車列が大渋滞を引き起こすこともあります。

「大自然を味わいに来たのに、人や車が多すぎる」——そんな風に感じることもありますし、私なりにそれなりの楽しみ方を工夫してきました。

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これだけ多くの人が訪れれば、自然環境への負荷が増えるのも当然です。道路は傷み、トレイルは侵食され、ゴミも増えます。野生動物へのストレスも無視できません。つまり、「自然を愛する人が増えると自然が傷つく」という矛盾を、私たちは抱えているのです。

自然を守る費用を誰が負担するのか——個人的見解

デスバレー国立公園。

今回の制度変更について、アメリカ政府側は「外国人観光客にも国立公園の維持費を公平に負担してもらうため」という説明をしています。国立公園局は長年、予算不足と人手不足に悩まされてきました。道路やトイレ、ビジターセンターなどの老朽化も進み、維持費は年々膨らんでいます。

非居住者への値上げによる収入は公園の維持や環境保護に使われる予定です。アメリカ居住者はすでに税金を払っているから、これ以上負担しなくてもよいのだそうです。

この理屈に納得する人もしない人もいるでしょう。私自身はアメリカ居住者側に属します。従って、値上げの影響は受けません。しかし、外国人や非居住者のみに負担を強いるやり方は公正ではないと考えています。

アメリカはまことに素晴らしい自然に恵まれていますし、それらはアメリカ人だけではなく、人類全体の共有財産だと思うからです。だからこそヨセミテやグランドキャニオンなど多くの国立公園が「世界遺産」に指定されているのではないでしょうか。そのことを誇りにするなら、自国民だけではなく、世界中の人々に等しく門戸を開くべきでしょう。

貴重な自然を維持管理するために必要な費用を利用者が負担することには意義はありません。ただそれを国籍や居住地などで区別するのではなく、たとえば入園料を一律に何割か増額する、という方法でできたのではないかと思うのです。

著者画像

角谷剛さん

米国在住ライター(海外書き人クラブ)

日本生まれ米国在住。米国で高校、日本で大学を卒業し、日米両国でIT系会社員生活を25年過ごしたのちに、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。日本のメディア多数で執筆。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)会員

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