一口に3500kmといっても、なかなかその距離に実感がわかないかもしれません。日本列島を北から南まで縦断してもお釣りがくると言えばイメージできるでしょうか。
冒険家の故植村直己さんは目標としていた南極大陸横断の距離感をつかむことを目的に、北海道稚内から鹿児島までを52日間かけて踏破しました。その距離が約3000kmだったということです。それより長いオフロードのトレイルのことをここでは述べています。
それほどまでに広大なフィールドが突如として「走行禁止」になった理由は、この砂漠に生息する「サバクゴファーガメ」を守るためです。
サバクゴファーガメ(Desert tortoise、学術名 Gopherus agassizii)は、アメリカ南西部からメキシコの広い地域にかけて生息しています。砂漠のシンボルとも言える存在です。しかし、彼らの現状は極めて深刻です。ある研究によれば、その個体数は1980年代と比較して、実に90%も減少しているということです。
今回の裁判で争点となったのは、オフロード車がサバクゴファーガメの巣穴を破壊しているという事実でした。サバクゴファーガメは、過酷な乾燥と熱から身を守るために深い巣穴を掘りますが、巨大なタイヤを持つオフロード車がその上を走ると、巣穴が押しつぶされてしまうのです。中にカメがいれば、当然命はありません。たとえその時不在でも、戻るべき巣穴を失ったカメは、砂漠の猛烈な直射日光にさらされ、命を落とすことになります。
私たちが「アウトドア」を楽しむ場所が、ときには動物たちにとっては切実な生存圏と重なることがあります。遊びと環境保護のバランスを探ることは大きな課題ですが、今回は司法が後者に寄り添って前者に「待った」をかけた形です。
日本には砂漠はありません。当然のことですが、サバクゴファーガメも生息していません。「砂漠の賢者」とも呼ばれることもある、このカメについて少し詳しく紹介します。
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【動物ドッキリクイズ・その36】サバクゴファーガメのクイズです!
第1問 サバクゴファーガメは主に何を食べる?
a) 昆虫
b) 地ネズミ
c) 植物
d) 岩塩
サバクゴファーガメはカメ科としては最大ではないにしてもかなりデカイです。甲羅の長さは30㎝から50㎝くらいにまで及ぶこともあります。その巨体を支えるための主な栄養源は何でしょうか?

正解は「c)植物」です。 サバクゴファーガメは草食性で、主に草や野生の花を食べて生きています。とくに春に咲く一年草は重要な栄養源で、水分補給の役割も果たします。水場がほとんどない砂漠では、食べ物そのものが水分源でもあるのです。
第2問 サバクゴファーガメが最も長い時間を過ごす場所は?
a) 水中
b) 巣穴
c) 岩の影
d) 木陰
私は砂漠には何度も出かけましたが、野生のカメを見たことはまだありません。動物園で飼育されているカメを見たことはあります。彼らはふだん一体どこに隠れているのでしょうか?

正解は「b)巣穴」です。サバクゴファーガメは一年の大半を自分で掘った巣穴の中で過ごします。砂漠の地表は夏には50℃近くにもなるため、地下の安定した環境が生存のカギになります。
この巣穴はまた自然環境全体にも大きな役割を果たします。トカゲや小型哺乳類など他の動物にも利用されるからです。そんなとき、カメは自分より小さな動物を巣穴から追い出したり、食べてしまったりはしません。平和的な性格なのです。
第3問 サバクゴファーガメは水分をどこに貯める?
a) 胃
b) 肺
c) 膀胱
d) 甲羅
サバクゴファーガメが植物から水分を摂取することは前述しました。その貴重な水分を体内のどこに貯めるでしょうか?

正解は「c)膀胱」です。サバクゴファーガメは膀胱に水を蓄えることができます。体重のかなりの割合を占めるほどの水をためることもあり、乾燥した環境で生き延びるための重要な能力です。緊急時には膀胱から水分を一気に放出し(つまりオシッコをして)、体を軽くして逃げるのだそうです。
第4問 サバクゴファーガメの平均寿命は?
a) 5年
b) 10年
c) 20年以上
d) 50年以上
「鶴は千年、亀は万年」は言葉の綾にしても、一般的にカメは長生きをする動物のようです。モハーベ砂漠のような過酷な自然環境で生きるサバクゴファーガメはどれくらい生きるのでしょうか?

正解は「d)50年以上」です。サバクゴファーガメは非常に長寿で、50年以上生きることが知られています。長く生きる一方で繁殖スピードは遅く、一度数が減ると回復しにくいという特徴もあります。
おわりに
サバクゴファーガメは過酷な環境下で何10年も生存するために長い年数をかけて適応してきました。ところが、人間が生み出した科学はそんな自然の営みを一瞬で無に帰してしまうほどの圧倒的な暴力を秘めています。
今回のモハーベ砂漠でのオフロード規制は、そうした小さな生き物を守るための大きな決断でした。むろんそこには、アウトドアを楽しむ自由が制限されるという側面もあります。それを「レジャーの否定」としてとらえることはできますが、私たちが末長く自然と遊ぶための「ルール変更」と考えることもできるのではないでしょうか。
参考
*1. Judge orders feds to close Western Mojave trails for off-road vehicles in desert tortoise habitat
https://www.courthousenews.com/judge-orders-feds-to-close-western-mojave-trails-for-off-road-vehicles-in-desert-tortoise-habitat/





