実際、初めてムースを目の前で見たときには、そのデカさには圧倒されました。最大のオスになると、肩までの高さが2mを超え、体重が700kg以上の個体もいるとのこと。メスはそれに比べるとやや小さいそうですが、それでも私の目には「これがシカ? 馬か牛じゃないの?」としか映りませんでした。
そのように巨大ではあっても、草食動物には違いありません。私が見たムースも道路脇をゆっくり歩いていたり、湿地や草地で黙々と植物を食べていたりする姿ばかりでした。そして、気づいたことがもうひとつあります。
どのムースも、メスと1頭か2頭の子どもという組み合わせだったのです。大きな角を持つオスは一度も見かけませんでした。
実はこの「子連れのムース」は大変に危険なのだそうです。デナリ国立公園のパンフレットや園内の案内板には、ムースとは十分な距離を保つようにと注意書きがありました。とくに子連れのムースは非常に警戒心が強く、人間にも突進してくることがあるそうです。
写真家・星野道夫さんの著書にも、「子連れのムースはグリズリーより危険だ」と書いてありました。星野さんは、母親のムースが子どもを守るためにグリズリーを撃退する場面を目撃したそうです。
ムースはグリズリーより強いのか? それともその母親ムースが特別に強かったのか? ひょっとしたら、グリズリーにも気の弱い奴がいるのか? 想像力がかきたてられるエピソードですね。
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【動物ドッキリクイズ・その39】ムースのクイズです!
第1問 ムースの妊娠期間はどれくらい?
a) 約3か月
b) 約5か月
d) 約8か月
d) 約12か月
ムースは一度に通常1~2頭の子どもを出産します。生まれたばかりの子どもでも体重は10~15kgほどあり、生後数日で母親の後を歩けるようになります。これだけ大きな赤ちゃんを、お母さんはどのくらいお腹の中で育てているのでしょうか。

正解は「c)約8か月」です。 出産は春から初夏にかけて行われます。厳しい冬ではなく、暖かく豊富な植物が育つ季節が子どもの成長に都合が良いためでしょうか。私がアラスカを訪れたのは6月上旬でしたので、まさに子育てシーズンが始まったばかりだったようです。
第2問 子育てを担当するのは?
a) オスのみ
b) メスのみ
c) 夫婦で協力
d) 群れ全体
秋になると、ムースは繁殖期を迎えます。オスはメスを探して歩き回ります。ライバル同士で大きな角をぶつけ合って戦うことや、勝ったオスが数頭のメスと交尾することもあるそうです。では、その後、生まれてきた子どもの世話をするのはだれでしょう?

正解は「b)メスのみ」です。ムースの子育ては、母親だけが担当します。ワンオペ育児です。理不尽に聞こえるかもしれません。だからといって、同じオスの私を非難しないでいただきたい。
繁殖期が終わるとムースのオスは群れから別れ、その後の子育てには参加しません。母親は食べ物の探し方や危険から身を守る方法を教えながら、たった一頭で子どもを育てます。
第3問 子育ての期間は?
a) 約3か月
b) 約5か月
c) 約8か月
d) 約12か月
ムースの子どもは、生後数週間で草や葉も食べ始めます。しかし、すぐに親離れはできません。どこに行くにも、母親の後をついて歩きます。
ムースの子どもが成獣になるまで生き延びる確率は50%以下だそうです。まだ体が小さく、力も弱く、速くも走れない。そんな生後間もなくの時期にグリズリーやオオカミに食べられてしまうことが多いそうです。
子連れの母親ムースが非常に攻撃的になるのは、子どもを守ろうとする本能です。さて、その子育て期間はどれくらいでしょう?

正解は「d)約12か月」です。子どもは約1年間、母親と一緒に暮らします。翌年、母親が次の子どもを出産する直前になると独り立ちします。
メスのムースは通常2~3歳で子どもを産み、その後はほぼ毎年1回出産して、一生のうちにおよそ10~20頭程度の子どもを産むと考えられています。
ということは、生殖できるまで成長したメスのムースはずっと気が荒いままなのか? 理屈からすると、そうなりますね。 見た目はとてもそうは見えないのですが。
第4問 ムース最大の武器は?
a) 前足や後ろ足で蹴る
b) 爪で引っかく
c) 噛みつく
d) 体当たり
ムース最大の武器は何でしょうか。
ヒント:角ではありません。あの巨大な角を見ると、そう思いがちですが、角があるのはオスだけです。
グリズリーより強いという子連れの母親ムースには角がありません。それでは、いったい何を武器にしているのでしょう?

正解は「a)前足や後ろ足で蹴る」です。 ムース最大の武器は、長くて力強い脚です。
前脚で踏みつけたり蹴り下ろしたり、後ろ脚で強烈な蹴りを繰り出したりします。数百kgもの体重が加わるわけですから、グリズリーやオオカミだって吹き飛ばしてしまうかもしれません。ましてや人間が近づいてはいけないのは当然です。
おわりに
アラスカを訪れる前、私はたくさんの野生動物に出会うのではと夢想していました。まるでサファリ動物園へ出かけるような気持でした。
しかし、実際に10日間ほど滞在してみると、グリズリーも、クロクマも、オオカミも、カリブーも、ドールシープも、ビーバーも、ホッキョクギツネも、一度も姿を私の前には姿を現しませんでした。唯一この目で見た大型動物はムースでした。ときどきジリスは見ましたが、その頻度はカリフォルニアよりはるかに少ない程度でした。
アラスカといえども、やはり星野道夫さんのように何か月も原野でキャンプをしたり、野田知佑さんのようにユーコン川を下ったりしないと、そうそう野生動物には遭遇しないようです。なんといっても「野生」ですから。
それでもムースだけは毎日のように見ました。道路脇で草を食べていたことも、目の前で道路を横切っていたこともありました。山中のトレイルはもちろん、ちょっとした広場や駐車場にも、よくムースの糞が落ちていました。たぶん、アラスカの野生動物の中で人間社会との距離が一番近いのはムースなのではないでしょうか。
これからアラスカを訪ねる人も、ムースとの出会いは期待してよいと思います。世界最大のシカが歩く姿をぜひその目で確かめていただきたい。ただし、油断は禁物であることは前述した通りです。
ムース以外の動物も見たい。だけど過酷な野外生活はできない。そんな人にはアンカレッジ郊外にある動物園、Alaska Zooを訪れることをおススメします。極北に住む動物たちがゆったりとした空間で展示されています。




