板橋区の赤塚城跡と帰りがけに出合った「赤塚山」【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.126】
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    2025.02.22

    板橋区の赤塚城跡と帰りがけに出合った「赤塚山」【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.126】

    板橋区の赤塚城跡と帰りがけに出合った「赤塚山」【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.126】
    東京23区内、特に山手線の内側はビル街や飲食店街、住宅街ばかり。そう思っている人が多いかもしれません。でも、目を凝らせば東京都心にも「山」はあります。そんな東京の山の世界を、日本で唯一のプロハイカーである斉藤正史さんが案内します。

    FILE.126は、板橋区の赤塚城です。

    第126座目「赤塚城

    今回の登山口も、都営三田線西高島平駅です

    都営三田線の西高島平駅登山口。

    今回の登山口(最寄り駅)は、3回連続となる都営三田線の終点・西高島平駅。前回、前々回に続き、今回の目的地も室町時代中期から戦国時代前期の武将である千葉自胤(ちば よりたね・これたね)ゆかりの地です。これまで千葉自胤のことを「赤塚城主」と紹介してきましたが、今回はその赤塚城(跡)に向かいます。

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    山行途中で“断念”した「プロの味」

    西高島平駅登山口を出発したら、赤塚城までは首都高速5号池袋線と並行して歩いていきます。この連載で何度も山と城の関係性を説明してきましたが、日本の城は立地によって大きく以下の4タイプに分類されます。

    ・水城:水源のある場所を利用した城
    ・平城:平地に建てられた城
    ・平山城:低い山や丘と平地に建てられた城
    ・山城:山に築かれた城

    今回の赤塚城は、平山城に分類されます。平野の中にある小高い山、丘陵などに築城された城なのです。

    郷土資料館で地域と山のリサーチ

    それにしても——。前回、前々回もグチりましたが、西高島平駅周辺は完全なる住宅街です。歩いても歩いても、ここに書くべきことが見当たりません。

    地名の由来や駅の来歴は前々回に、この辺りはもともと浦和県(現埼玉県)だったという話は前回に書いてしまいました。もう、これから向かう赤塚城に興味深いヒストリーがあることを期待するしかありません。

    と、腹をくくってみたものの、実際に木々が見えてきて、赤塚城跡がある赤塚公園に到着してしまうと、とてつもなく焦っている自分がいました。ここまででせいぜい500〜600字、1回分の記事としては短すぎます。

    だからといって、ここから赤塚城について必要以上に詳しく書いて面白い記事に仕立てる自信もないし…と思い悩んでいると、公園の入り口近くに板橋区立郷土資料館という建物がありました。溺れる物は藁をも掴むで、早速入館しました。

    板橋区立郷土資料館。

    板橋区立郷土資料館に入館し、学芸員の方に板橋区内の山の情報を聞いてみました。連載の順番は逆になっていますが、実はこのとき教えていただいたのが、FILE122の加賀公園の築山でした。加賀藩前田家の下屋敷の図が館内に展示されていて、その庭に築山が描かれていたことがきっかけで連載で紹介するに至ったのでした。

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    板橋区立郷土資料館の敷地には、「新藤楼玄関」が展示されています。「新藤楼」は、板橋宿最大規模の遊郭です。戦時中の1944(昭和19)年に閉鎖され、そのまま姿を消しました。新藤楼の立派な唐破風(からはふ)の玄関部分は、1972(昭和47)年の建物解体後、板橋区立郷土資料館に移築されたそうです。

    この連載でたびたび記していますが、歴史を知り、山に触れると、山頂や麓からの眺めがより味わい深くなります。板橋区内で山行を楽しむ際は、その前後に郷土資料館に立ち寄ることをオススメします。

    風格ある新藤楼玄関。

    モスバーガーに関する展示。板橋区成増には、モスバーガー1号店があります。

    板橋区立郷土資料館を出て、公園内の池でのんびり釣りをしている人たちを横目にしながら、池の奥にある階段を登っていきます。中腹には迂回路もあり、老若男女問わず優しい登り階段です。

    迂回路。右に進むと傾斜の緩やかな階段ですが…。

    僕はハイカーで足腰に自信があるので迂回路を進まず、直登ルートを一気に登っていきます。すると、広い敷地が見えてきました。広場の端の方に、何か案内板のようなものが見えました。足早に駆け寄ると、そこが赤塚城跡でした。

    目的地の城の在りし日の姿とは?

    赤塚城(跡)

    1456(康正2)年に市川城(現在の千葉県市川市国府台付近にあった城)から移った千葉自胤(ちば よりたね/これたね)によって築城されたと伝えられる赤塚城。ただ、伝承によればそれ以前に源頼朝が兵を挙げた後に徳丸地区を通過した際に立ち寄った城ともいわれており、正確な築城の年代は不明だそうです。

    赤塚城は、真北にある荒川の早瀬の渡し場を一望でき、下赤塚や江古田までの鎌倉道(埼玉道)を押さえる、陸運と水運の要衝でした。それが、1590(天正18)年に豊臣秀吉の小田原征伐で後北条氏が滅亡すると千葉氏も所領を没収され、赤塚城は廃城になってしまいました。現在は、周辺に空堀などがわずかに残されています。

    現在は赤塚公園の広場になっている赤塚城跡。かなり広々していますが、城の本丸も大きかったのでしょうか。

    赤塚城本丸跡の石碑と案内板。

    西高島平駅周辺は住宅街で書くことがないとグチりながら歩いてきましたが、板橋区立郷土資料館で地域の歴史を勉強したばかりか、別の山の情報まで入手。気づけば、とても実り多い山行となりました。

    と、このまま帰途についてもよいのですが、実は赤塚城跡までの道中で「東京大仏」なる看板を見かけて気になっていたのです。ということで、赤塚城跡からの帰りに立ち寄ってみることにしました。

    奈良や鎌倉などに次いで日本で4番目の多大きさだという乗蓮寺の東京大仏。

    乗蓮寺

    乗蓮寺(じょうれんじ)は、応永年間(1394〜1428年)に名僧・英蓮社了賢無的上人(えいれんじゃりょうけんむてきしょうにん)が、板橋の一角、山中村(現在の板橋区仲町)に創建したのがはじまり。

    郷主・板橋信濃守忠康の菩提寺になるなど多くの信仰を集めたほか、家康より10石の朱印地を賜り、その後も歴代の将軍から朱印地が与えられる格式ある寺院だそうです。また、1743(寛保3)年に八代将軍吉宗が鷹狩りの途中に参拝して雨宿りをしたのが縁で、後に将軍の休息「御膳所」に指定されました。

    さらに調べると、乗蓮寺は首都高速5号池袋線の建設などにより、寺の敷地が半減する事態に陥ったそうです。そこで現在地、旧赤塚城二ノ丸に移転しました。そして、全山の移転が完了し、山号(寺の名称)も赤塚山と改称します。現在の乗蓮寺は旧赤塚城の二ノ丸に建立され、その名も赤塚山だったのです。

    旧赤塚城二ノ丸に建つ乗蓮寺。

    山号は、赤塚山!

    何気なく立ち寄った乗蓮寺が、実は赤塚城と深いつながりがあることが発覚。これだから都内の山登りはやめられない!と、数時間前まで書くことがないとグチっていた自分が雲散霧消しました。

    乗蓮寺は他にも見どころがたくさんあるので、赤塚城跡のある赤塚公園を訪れた際はこちらにもぜひ足を運んでください。

    って、一般的には乗蓮寺を紹介するとなったら真っ先に東京大仏を取り上げるのでしょうが、登山者の僕には二の次三の次となってしまいました。東京大仏の詳細は乗蓮寺のサイトを参照してください。

    次回は、豊島区の小城山観音です。

     ※今回紹介したルートを登った(歩いた)様子は、動画でもご覧いただけます。

    私が書きました!
    プロハイカー
    斉藤正史
    2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。最新情報はブログを。

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