東京23区内、特に山手線の内側はビル街や飲食店街、住宅街ばかり。そう思っている人が多いかもしれません。でも、目を凝らせば東京都心にも「山」はあります。そんな東京の山の世界を、日本で唯一のプロハイカーである斉藤正史さんが案内します。第9座目は、東京都品川区にある「池田山」です。
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第9座目「池田山」
これまで山々の連なる(?)港区をめぐってきましたが、今回からは品川区内の山を歩きます。品川山行の初回に目指す「池田山」へのアプローチは、JR目黒駅、都営浅線高輪台駅、品川駅などからのルートがあります。今回は、都営浅草線高輪台駅A2登山口から出発することにしました。
高級住宅街を抜けた先にある山
JR目黒駅から品川駅にかけての地域には、「城南五山」と呼ばれる高台が点在しています。城南五山とは、「池田山」「御殿山」「島津山」「花房山」「八ツ山」の総称です。いずれも、かつては大名屋敷があり、現在は高級住宅街となっているブランドエリアだそうです。そんな城南五山を擁する品川区は、港区と同じように山が多くあるエリアなのかもしれません。期待大!ですね。
今回目指す池田山付近の高台は、江戸時代初期に備前国岡山藩池田家の下屋敷があり、いつのごろからか池田山と呼ばれるようになったそうです。その後、品川区立の池田山公園として1985年に開園。起伏に富んだ地形を生かし、高台から池をのぞき見るような形につくられた池泉回遊式庭園です。
一方、島津家本邸のある島津山の跡地は、現在、清泉女子大学敷地内にあるといわれています。大学に問い合わせると、島津山というのは、学内の中にある山ではなく、大学がある地域全体を広範囲に指しているそうで、学内の敷地は平坦で山頂のような場所はないそうです(突然の問い合せにご丁寧なご回答をいただき、感謝申し上げます)。港区もそうでしたが、品川区も造成で失われた幻の山々が数多くあり、現在は地名のみが残っているのかもしれません。
さて、都営浅草線高輪台駅A2登山口を出発し、ルート通りに真っすぐ歩いていきます。しばらく閑静な住宅街の中を進みます。すると、警備員の方が警備されている一角に出ました。敷地の前を通ると、そこはまるでホテルか美術館のようにしか見えませんが、特に看板も何も出ていません。後から調べると、某有名企業のTOPの方のご自宅のようでした。動画撮影用のビデオカメラを片手にキョロキョロしていると面倒に巻き込まれそうなので、足早に通り過ぎようとしますが、なにせ敷地が広いので時間が掛ります。
その大邸宅の隣には、畠山記念館がありますが、現在は改築工事でお休みのようです。畠山記念館は、茶道具を中心に、書画、陶磁、漆芸、能装束など、日本、中国、朝鮮の古美術品を展示公開している私立美術館です。
畠山記念館を通り過ぎて高級住宅街を抜けると、NTT関東病院が見えてきます。東京医療保健大学五反田キャンパスと、NTT関東病院に挟まれた静かな道を歩いていきます。病院の敷地を抜け、渡り廊下があるその先に、池田山公園の入り口があるようです。
実は池田山公園、24時間出入りが自由なわけではありません。開園時間は 7:30~17:00(7~8月は7:30~18:00)で、当然ながら閉園時間になると門が閉まりますのでご注意ください。開いている門を抜け、緩やかな坂を登っていくと、左手に池が見えてきました。どうやら自然歩道があるようです。先述したように池田山公園は池泉回遊式庭園として整備されており、池の周りをぐるっと回れるように歩道がつくられています。私は池の外周を歩く道を選びました。
池の周りを歩き終えると、最後は急登が始まります。キレイに刈り込まれた垣根を見ながら、石の階段を一気に登ります。ほどなくすると山を登り切ります。そして、そこには東屋がありました。東屋のすぐ前の展望台からは、池と庭園が一望できます。
山頂を示す標識や三角点のようなものはありませんし、この先の公園出口の方が標高も高いようでしたが、この見晴らし台がきっと山頂と見立てられているのでしょう。想像以上に山登り感を味わえる道のりでした。公園内には紅葉する木々も多く、これからの紅葉時期(11月中旬~12月上旬)が楽しみです。
そして、驚くべきことに、この公園はパワースポットとしても注目を集めています。霊峰富士山からの気が流れる龍脈上に位置し、園内の滝や池は浄化効果が高いといわれているのだとか。近年はパワースポットとして多くの人が来園するそうです。四季が楽しめる庭園と、満足度の高い山と、さらにはパワースポット。これは登るしかありませんね!
次回は「明治時代に誕生した?品川区の山」を予定しています。
なお、今回紹介したルートを登った様子は、動画でご覧いただけます。