東京都心に入山料の必要な山があるってホント?【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.6】 | 山・ハイキング・クライミング 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2023.09.28

    東京都心に入山料の必要な山があるってホント?【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.6】

    東京23区内、特に山手線の内側はビル街や飲食店街、住宅街ばかり。そう思っている人が多いかもしれません。でも、目を凝らせば東京都心にも「山」はあります。そんな東京の山の世界を、日本で唯一のプロハイカーである斉藤正史さんが案内します。第6座目は、東京都港区にある「入山料(?)がかかる山」です。
    これまでの記事はこちら

    第6座目「大山」「根府川山」「唐津山」の3山

    これまで、この連載で港区内の山を5座ほど巡ってきました。そろそろ港区の山も終わりかな…。そう思いつつGoogle Earthで港区周辺を見てみると、なんと3つも山があるエリアを発見しました。

    その山々は「旧芝離宮恩賜庭園」(きゅうしばりきゅうおんしていえん)という公園の中にあります。早速調べてみると、ここは東京都が所管する都立庭園のようです。そして、入園料が必要なことが分かりました。一般は 150円、65歳以上は70円(小学生以下、都内在住・在学の中学生は無料)。登山目的で訪れる人はあまりいないかもしれませんが、「入山料を支払って登る山」と考えれば納得できます。

    旧芝離宮恩賜庭園ってどんな場所?

    「旧芝離宮恩賜庭園」は、江戸時代前期の大名である大久保忠朝(ただとも)の上屋敷、庭園楽寿園(ていえんらくじゅえん)が始まりだそうです。1678年に忠朝が4代将軍の徳川家綱から拝領した庭園が原型となっており、宮内庁管理の離宮を経て、1924年、東京市に下賜(かし)され、旧芝離宮恩賜庭園として一般に公開されたそうです。

    早速ルートをGoogle Mapで確認すると、JR浜松町駅の北口から出るとあっという間に着く距離です。場所柄、周辺に緑の多い散策ルートなども見当たらないので、JR浜松町駅北口を登山口として出発することにしました。実際に歩いてみると、JR浜松町駅北口登山口を出て旧芝離宮恩賜庭園方面へ歩くと5分もしないで入り口に到着したのでした。

    「園結びチケット」を購入し、いざ山へ!

    受付で「浜離宮にも行かれますか?」と聞かれ、「たぶん行くと思います」と答えると、お得なチケットを勧められました。その名も「園結びチケット」。旧芝離宮と浜離宮は歩いていける距離にあります。入園料は旧芝離宮恩賜庭園が150円、浜離宮恩賜庭園が300円。両園に入れる「園結びチケット」が400円ですので、50円お得になる計算です。

    旧芝離宮恩賜庭園は、典型的な「池泉を中心とした回遊式庭園」というだけあって、入り口を起点にぐるっと一周できるようにつくられています。まずは、山の位置を確認します。公園のパンフレットに記載された地図からは「大山」「根府川山」「唐津山」の3つの山が確認できます。順路通りに、「大山」「根府川山」「唐津山」と進むのがスムーズなのもしれません。改めてパンフレットの案内をみると、山に関しては、「大山」の記述しかありません。少し気になりましたが、庭園で一番高い築山(つきやま=人工的につくられた山)が大山のようです。

    今回は、山を巡りつつも池の周りを歩くルートを選択しました。なぜなら、この日も35度を超える気温だったので、水辺を通れば少しは涼しいのかなと考えたわけです。歩き始めると、雲が現れて適当な日陰をつくってくれました。港区のビル群の森に囲まれた庭園は、池の水面にビルが写り、なんともアーバンな景色を形成してくれています。都会のビルに囲まれたオアシス、まさにそんな感じがしました。

    高層ビルに囲まれたアーバンな庭園風景。

    高層ビルに囲まれたアーバンな庭園風景。

    池沿いを歩いていくと、大山が見えてきました。登山口は2カ所あり、逆から歩いてきてもスムーズに周れるようになっています。あっという間に登頂できる標高ですが、山頂からは庭園を一望できます。ここの閉園時間は17時ですが(入園は16時30分まで)、夜はきっと周囲のビル群に明かりが灯り、キレイな景色が見られるのだろうと想像すると楽しくなります。

    園内最高峰の大山。

    園内最高峰の大山。

    先述したように大山は園内で最も標高の高い山ですが、根府川山は大久保忠朝の藩地である小田原から運び入れた火山石などからなる山、唐津山は忠朝が以前は唐津藩主でもあったためその名を冠してつくった山だそうです。

    ただ、根府川山と唐津山は麓に山の表記があるのですが、登山道や階段はなく、登れない山でした。しかし、登れないからといってガッカリはしませんでした。周辺に趣ある景色が広がっていて、「来て良かった!」と心から思えたからです。

    小田原の火山岩などでできているといわれる根府川山。

    小田原の火山岩などでできているといわれる根府川山。

    大久保忠朝ゆかりの(?)唐津山。

    大久保忠朝ゆかりの唐津山。

    一周して戻るころ、建物があったので覗いてみると、なんと弓道場がありました。1時間140円で利用できるようで、この日も弓道の道具を持った若い方々が集まっていました。まさか、港区のど真ん中に弓道場があるとは驚きです。

    そして、出入口付近には広い藤棚の休憩所があり、殺人的な夏の日差しを避けることができます。この休憩所では、時折ビル風に吹かれて風鈴が鳴り、涼やかでとても心地よく休憩できました。

    心地よい藤棚の休憩所。

    心地よい藤棚の休憩所。

    実は、旧芝離宮恩賜庭園には、年間パスポートもあります。一般600円、65歳以上280円。この値段なら、お昼休憩したり休日にゆっくりしたりするのに、年間パスポートを購入してもいいなぁと思いました。実際には、僕は山形在住なのでしょっちゅう来られないのですが…。

    3山のうち1山しか登れませんでしたが、四季折々の景色を楽しめるし、入山料を払う価値あり!思いがけず大満足な山行でした。また近くで打ち合わせがあったら来よう。今度は閉園ギリギリに来て夜景が見たいな。そう思いながら、旧芝離宮恩賜庭園を後にしました。

    次回は「雷神をまつった山」を予定しています。

    なお、今回紹介したルートを登った様子は、動画でご覧いただけます。

    私が書きました!
    プロハイカー
    斉藤正史
    2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。最新情報はブログを。

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