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8月中旬のお盆を挟んだ10日間、カリフォルニア観光局が主催するFAM(現地視察)ツアーに参加し、北カリフォルニア一帯を巡ってきました。サンフランシスコから山岳地帯をオレゴン州境近くまで北上し、海岸線を南下して戻ってくるという、かなりスケールの大きなドライブ旅行でした。
私は南カリフォルニアに住んで30年以上になりますが、今回訪れた地域にはそれまで足を踏み入れたことがほとんどありませんでした。同じような人は多いと思います。
州内の都市を人口の多い順に並べると、ロサンゼルス(約390万人)、サンディエゴ(約140万人)、サンノゼ(約100万人)、サンフランシスコ(約88万人)、フレズノ(約55万人)になります。
一方、今回の旅で訪れた北カリフォルニア北西部の最大都市、ユーリカの人口は3万人に届きません。他は推して知るべしで、いかに閑散としているかを想像できると思います。たんに住民が少ないだけではなく、観光地としての知名度もそれほど高いとは言えません。その「シブい」と言えなくもない地域をあえてツアー目的地に選んだカリフォルニア観光局の英断には心から拍手を送りたいと思います。
なぜなら、そこには大都市周辺や有名観光地とは違った、広大な森林や湖、川、海岸線などの自然が残されているからです。点在する街も静かで落ち着いた雰囲気に包まれていました。
その旅の前半に訪れたのはラッセン火山国立公園です。北カリフォルニアにしては、という但し書きはつきますが、ある程度は知られた観光地でもあります。
ひとつの公園内に4種類の火山

ラッセン火山国立公園は、太平洋を取り囲むように火山が連なる「環太平洋火山帯(Ring of Fire)」の一角をなすカスケード山脈の南端に位置しています。ちなみに日本列島も同じ環太平洋火山帯に含まれています。
公園名にもなっているラッセン山は標高3187m。「溶岩ドーム」と呼ばれるタイプの火山です。粘り気の強い溶岩が地表に押し出されることで、ドーム状の山体をつくります。
ラッセン山では1915年には大規模な噴火が起こり、山の斜面を流れ下った泥や岩石、さらに火砕流によって森林が破壊されました。100年以上たった現在でも、当時の噴火による痕跡を見ることができます。
一方、公園南西部にそびえるブロークオフ・マウンテンは、かつて存在した巨大な成層火山、テハマ火山の一部です。長い年月の浸食によって火山の大部分が失われ、現在はその一部だけが残っています。
このほか、なだらかな斜面を持つ楯状火山や、火山灰やスコリアが積み重なってできたスコリア丘もあります。代表的なのがプロスペクト・ピークやシンダー・コーンです。
つまり、ラッセン山だけを見ていると一つの火山のように思えますが、実際には複数の種類の火山が集まった地域なのです。その地形は有史以前からの長い火山活動によって形成されました。そして、その火山活動は現在も完全に終わったわけではありません。
と、ここまでがガイドをしてくれた国立公園レンジャーからの説明でした。なにしろ観光局主催のツアーですので、そんなサービスもついてくるのです。

むろん説明を聞くだけではなく、実際に公園内を歩くこともできました。Bumpass Hell(バンパス・ヘル)はそのなかでもハイライトのひとつ。地下から上がってくる熱によって、熱湯の池や泥、蒸気孔などの地熱現象を見ることができます。硫黄などによって地面が黄色やオレンジ色に変色している場所もあります。
バンパス・ヘルへは往復約5㎞のトレイルが整備されています。標高がやや高い(約2500m)ことを除けば、とくに難易度は高くありません。私としては少しきつめのハイキング気分です。
周りの人々の服装や装備は様々でした。きちんと登山靴を履いた人もいれば、サンダル履きの人もいました。国立公園レンジャーに見解を訊ねたところ、むろんサンダル履きはおススメしない、とのことでした。当たり前ですね。私自身はいつも旅行をするときはトレイルラン用のシューズを履いています。

大噴火から100年後、山火事が森林を襲った
ラッセンの大地を大きく変えた自然現象は、火山だけではありません。さほど遠い昔の話ではなく、2021年夏にカリフォルニア州北部を襲った大規模な山火事、Dixie Fireもそのひとつです。
同年7月13日に発生した火災は急速に拡大し、10月26日に鎮火するまで約96万エーカー、約39万ヘクタールを焼きました。当時、カリフォルニア州史上最大の単一火災でした。
直接の着火原因は、倒木がPG&Eの電力線に接触したことでした。その後、乾燥した森林、強風、極端な高温などの条件が重なり、火は猛烈な勢いで拡大しました。
その火はラッセン火山国立公園にも入り込み、7万3240エーカー(約3万ヘクタール)、公園面積の実に約69%に及ぶ範囲が火災の影響を受けました。
火災の影響は現在でも明らかです。立ち並ぶ木々が黒く焼けた地域も広い範囲で残っています。道路、トレイル、公園施設などで未だに修復が終わっていないものもあります。

ただし、火災による影響は場所によって大きく異なります。激しく焼けた場所がある一方で、比較的被害の少なかった場所もあり、焼失の程度が異なる森林がモザイク状に広がっています。そして黒く焼けた森からも、再び緑が生まれつつあります。
山火事によって森林が失われても、そこにあったすべての生命が消えてしまうわけではありません。土壌や周囲に残された種子が発芽したり、根から新しい芽を出したりして、草や野草、低木などが少しずつ戻ってきています。
長い森林の歴史から見ると、山火事は生態系の更新に関わる自然のプロセスでもあります。あるいは、開発による自然環境破壊によってその影響がかつてないほど甚大化しているのかもしれませんが。
変わり続ける大地
ラッセン火山国立公園では、この約100年間で大地の様相を大きく変える2つの異なる自然現象がありました。
1915年の大噴火では、地下から噴き出したマグマや火山灰、火砕流が山の姿を変えました。
そして2021年の大規模火災では、森林が広範囲に焼けました。
規模も時間の進み方も異なる2つの現象ですが、火山の噴火と山火事そのものは自然史の中では特別な出来事ではありません。火山活動によって新しい地形が生まれ、山火事によって森林が更新される。その繰り返しの中で、ラッセンの景観がつくられてきました。そして私たちは今でも変化を続ける大地を見ることができます。

ラッセン火山国立公園は、サンフランシスコから車で約4~5時間。それなりに距離はありますが、途中には北カリフォルニアらしい広大な森林や山々が続き、ドライブそのものも旅の楽しみになります。
園内では、ラッセン山をはじめ、溶岩ドームや火砕丘、熱湯の池や泥鍋など、さまざまな火山地形を一度に見ることができます。そして、山火事の跡では、黒く焼けた森の中から新しい植物が芽吹き始めています。
国立公園としての知名度はヨセミテやグランドキャニオンに及ばないかもしれませんが、だからこそ、変わり続ける大地の姿をじっくり観察できる場所です。カリフォルニアを訪れる機会があれば、ぜひ旅先の候補に加えてみてはいかがでしょうか。
カリフォルニア観光局ウェブサイト内ラッセン火山国立公園案内ページ:
https://www.visitcalifornia.com/things-to-do/lassen-volcanic-national-park/




