ここに住み始めてからしばらくして、私はアウトドア好きの女性グループと出会いました。そしてフランス人、ポルトガル人、ガボン人、ロシア人、マレーシア人、ブルネイ人など国籍はバラバラな仲間たちと、週に1回ほどいろいろなジャングル探検を楽しむようになりました。
そして今回行ったのは、ブルネイ王宮の近くに広がる、未知のワイルドなジャングル「ダダップ」。私達の頼れる案内役は、私たちが“ジャングル隊長”と名づけたマレーシア・サラワク州出身のアリスはまさにワイルドライフの達人。そんな彼女が作るジャングル飯をご紹介しましょう。
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パラン刀片手に未知のジャングル・ダダップへ
このジャングルの入り口はいくつかあり、初めて行った時には、待ち合わせ場所さえここで合っているのかわからないという感じでした。しかもこのジャングルの中では、以前歩いたことのある道でも、しばらく来ないうちに草木が生い茂り、通れなくなっていることがよくあります。
そんな時に登場するのが、アリス愛用の「パラン刀」。これは、マレーシアやインドネシアなどで使われている大型の山刀で、木を切ったり農作業をしたり、ジャングルで生活するための道具として使われています。

アリスは先頭で、パラン刀で「バシッ、バシッ!」と邪魔な草木を切り倒しながら、あっという間に道を作っていきます。足元が滑りそうになれば、今度は近くの枝を探して、「スパッ!」とパラン刀で切り、即席のトレッキングポールまで作ってくれます。とにかく手際がいい頼れる隊長なのです。
ジャングルで作る「バンブー・チキン」
ここでは、丸太の橋を渡ったり、滑る岩の上を歩いたりと、かなりワイルドなハイキングも出来ますが、今回は、アリスがジャングルの中で作ってくれる「バンブー・チキン」がお目当てです。これは「Ayam Pansuh(アヤム・パンス)」と呼ばれる、ボルネオ島の先住民ダヤク族に伝わる郷土料理で、鶏肉や香味野菜などを竹筒に詰め、焚き火でじっくり蒸し焼きにするものです。
まずは、鍋となる竹を現地調達します。ジャングルの入り口近くに、竹林があります。すると、さっきまで普通に歩いていたアリスの目が、ギラッ。「竹、選びます」という真剣な顔になります。ここからが隊長の本領発揮。パラン刀を片手に竹林をウロウロ。バンブー・チキンを作るには、材料と水を入れても漏れない、しっかりした竹が必要なのです。どの竹を使うかは、長年の経験を持つアリスの勘にお任せです。
竹が決まると、私たちは少し離れて待機します。そして、「バシッ!」とアリスがパラン刀を振り下ろすと、竹が見事に倒れます。1本丸ごと使うわけではないので、鍋になるのにちょうどいい部分を選び、50センチほどの長さに切り分けていきます。

そして切り出した竹をみんなで手分けして運び、ばらく歩くと、やがて大きな滝が見えてきます。ここで、いよいよ、お待ちかねのバンブー・チキン作りのスタートです。
ジャングルの中でクッキング開始!
アリスは、必要な材料をリュックに詰めて持ってきているので、まずはジャングルの中で鶏肉と調味料を混ぜたら、ここからは、アリス隊長の指示に従います。
「あなたたち2人は、竹筒の中に材料を入れてね。下の方には入りにくいから、竹の底を地面でトントン叩きながら、少しずつ入れてね」
材料を詰める人がいる一方で、別のメンバーには次の指示が。
「みんなで枯れ木を集めてもらえる? 滝が近いから湿っているものが多いけれど、できるだけ乾いているものを探してきて」
すると、みんな一斉に散らばって枯れ木を集め始めます。ここで、もう一つ驚くのがアリスの火起こしの速さ。持っているのは、小さな着火剤とライターだけで、炭なんてありません。みんなで集めてきた枯れ木を組み、その中央に着火剤を置いて火をつけます。すると、あっという間に炎が上がります。炎が落ち着いてきたら、鶏肉を詰めた竹筒を斜めに立てかけ、火の上へ。あとはじっくり焼き上がるのを待ちます。

ジャングルで作る「バンブー・チキン」レシピ
日本では火を安全に使える場所でないとなかなかできませんが、興味のある方はぜひ試してみてください。
<材料>
鶏肉……骨付き1羽の半分程度を、一口サイズに切ったもの
エシャロット……6個
にんにく……5片
しょうが……約1cm
レモングラス……4本
塩・こしょう……少々
チキンブイヨン……少々
水……1カップ
<作り方>
1.材料を混ぜる
鶏肉とエシャロット、にんにく、しょうが、レモングラス、塩、こしょう、チキンシーズニング、水を全て混ぜ合わせます。
2.竹筒を洗う
使用する竹筒の中を、水でよく洗います。
3.竹筒に材料を詰める
下味をつけた鶏肉と香味野菜を竹筒に入れます。上部には、クシャクシャにしたバナナの葉を詰めて蓋をします。材料を竹筒いっぱいまで詰めないことが大切。蒸気が逃げるための余裕を残しておきます。
4.焚き火で蒸し焼きにする
竹筒を火の上に斜めに立てかけ、時々向きを変えながら、30~45分ほど焼きます。竹筒の中で鶏肉が蒸し焼きになり、香味野菜の風味と竹の香りが肉に移っていきます。
5.取り出す時はやけどに注意
バナナの葉を取る際、中から熱い蒸気や汁が噴き出すことがあるので、やけどには十分注意してください。
6.ご飯と一緒に食べる
出来上がった鶏肉をお皿に取り出し、ご飯と一緒に食べます。
バンブー・チキンだけじゃない!焼きナスも登場
この日、アリスはさらに驚くようなものを作り始めました。パラン刀を使って竹を縦に3つに割り、何やら串のようなものを作っています。

「何をするんだろう?」と思って見ていると、持ってきたナスを上手に竹の間に挟み始めました。なんと、竹に挟んで作る焼きナスです。調理器具まで現地調達とは驚きでした。

バンブー・チキンと焼きナスを火にかけている間、すぐそばの滝に飛び込んだり、泳いだりして遊びます。以前、同じ場所で竹を切ってみんなで作った筏は、誰も来ないし滝の横に置いたまま“無料駐船”状態です。その筏に乗って遊んだり、滝に飛び込んだり。気がつけば、みんな全身ビチョビチョ、ドロドロ。こういうことを気にしない女性たちだからこそ、ジャングルでの活動がこんなにも楽しいのです。


いよいよ、ジャングルでのランチタイム!
しばらくすると、竹と鶏肉が混ざった何ともいい香りにつられて、みんなゾロゾロと火の周りに戻ってきます。アリスが作った料理に加えて、みんながそれぞれ家から少しずつ持ってきたおかずも並べます。全ての料理を並べていくと、なんとも贅沢なジャングルランチの完成です。

竹の香りがたまらない! バンブー・チキンを実食
そして、いよいよバンブー・チキンをいただきます。竹筒から取り出した鶏肉は、とても柔らか。香味野菜の味がほんのり染み込んでいて、優しくて深い味わいです。特においしいのが、竹の中に残ったスープ。これをご飯に混ぜて食べると、もう最高です。出来立てアツアツのバンブー・チキンを、ジャングルの滝のそばで食べる。こんなランチは、他では経験できません。
そして、この日はアリスからのサプライズで、なんと、細いビニールチューブに手作りカクテルを入れて凍らせ、全員分持ってきてくれていたのです。ランチの準備ができる頃には、ちょうどいい具合に溶けてシャキシャキと冷たい手作りカクテルは、ジャングルで遊び疲れた体に、最高においしい!

究極の現地調達型ジャングルランチ
鍋がなければ、竹を鍋にする。
鍋の蓋はバナナの葉っぱを使う。
燃料がなければ、枯れ木を集める。
調理器具がなければ、竹を加工する。
これぞ、究極の“現地調達型ジャングルランチ”。なのです。そして、最後は全員が泥だらけ。服も靴もボロボロ。でも、顔だけは満足そう。アリス隊長のお陰で、忘れられない1日になりました。





