木々の葉音に包まれ、温まったり、ひんやりしたり。地元の人との小さな交流も楽しみながら、夫婦で過ごした「ととのう」休日をご紹介します。
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スイスの面影が残る町での日本のおもてなし
ミッドウェイは19世紀、スイス系移民が多く移り住んだ町です。今もアルプス風の建物が見られ、毎年、スイスの文化を祝うお祭り「Swiss Days」も開かれます。山に囲まれた町を車で走っていると、「小さなスイス」と呼ばれるのもうなずけます。


向かった先はソルジャーホロー。2002年ソルトレークシティ冬季五輪で、クロスカントリースキーとバイアスロンの競技会場になった場所です。今も冬にはスキーやチュービング(大きな浮き輪に乗って雪の斜面を滑る遊び)などが楽しめます。その一角にあるのが「Soho Saunas」です。
迎えてくれたのは、オーナーのシェーンさん。日本で温泉施設を経営してきた経験があり、自然の中でゆっくり過ごす日本の入浴文化を、ここでも大切にしているそうです。
「まずお手洗いを済ませてくださいね」と、やさしい笑顔で施設の使い方を案内してくれました。

ウェルカムドリンクには、なんとポカリスエット。日本ではおなじみの青いボトルが、アメリカの山の中ではなんだかうれしく感じられます。
サウナ帽子がきっかけで、地元の母娘と小さな交流
今回、個人的にちょっと楽しみにしていたことがあります。それはサウナ帽子です。以前、BE-PALで読んだサウナの記事で、帽子をかぶった皆さんの姿がかわいらしくて、いつか自分も試してみたいと思っていました。
普段の旅は、大まかな予定だけ決めて、あとは現地の気分まかせ。でも今回は、ほかの利用者と一緒に楽しむセッションを選んだので、事前に公式サイトでルールを確認。そこでサウナ帽子が用意されていることを知ったのです。
「どっちがいい?」「わたしはこっち」
50代の夫婦が、帽子を前にウキウキ。夫は真っ赤、わたしは茶色を選びました。ふたりで並ぶと、少しだけ張り切りすぎた夫婦に見えたかもしれません。


そんなわたしたちに、同じ時間に訪れていた地元の母娘が声をかけてくれました。
「その帽子、何?」
ところが、わたしはこの質問をすっかり勘違い。帽子のことではなく、サウナに入ると何がいいのかを尋ねられたと思ってしまったのです。以前調べた知識を総動員して、日本語の「ととのう」という感覚まで、つい熱心に説明してしまいました。

あとで「あれ、帽子のことを聞かれていたんだ」と気づきましたが、時すでに遅し。その後もしばらく同じ空間にいたのに、人見知りのわたしは訂正するきっかけをつかめませんでした。あのときの母娘さん、ごめんなさい。
お母さんは日本を旅行したことがあり、サウナも経験済み。20代くらいの娘さんは、今回が初めてだそうです。母娘で一緒に休日をゆっくり過ごす姿が、なんだかすてきでした。
帰りにミッドウェイの町で食事をしながら調べてみると、サウナ帽子には熱から頭皮や髪を守る役割があるとのこと。夫は汎発性脱毛症で、頭髪を含む全身の毛がありません。そんな夫にとっても、頭皮を覆うサウナ帽子は心強い道具なのかもしれません。
もっとも、そんなことを知らずに、ふたりで帽子を選んではしゃいでいたのですから、なんともわたしたちらしい休日です。
アスペンの葉音と風鈴に包まれる、ユタの秋のサウナ時間
さて、肝心のサウナです。木製の樽型サウナには大きな窓があり、ソルジャーホローの雄大な自然を眺めながら過ごせます。遠くに連なるワサッチ山脈では、紅葉がゆっくり始まっていました。

ユタの州木であるアスペン(アメリカヤマナラシ)は、秋になると葉が黄金色に染まります。大好きなその光景を見るには、今回は少し早かったようです。それでも施設の周囲には立派なアスペンが何本もあり、風が吹くたび、葉がさらさらと揺れています。
アスペンは、わずかな風でも葉が揺れるのが特徴です。そこに、ちりん、と風鈴の音。ユタの山あいにいながら、ふと日本を思い出すような空間です。

施設には温度の異なる2つのサウナがあり、利用時間は2時間。冷水浴や温かな湯、休憩を自分のペースで組み合わせながら過ごせます。
体を温めたら外の冷水浴へ。シェーンさんによると、日本人の利用客の中には、冷水に浸かる代わりに、そばに用意されたたらいで水をすくい、体にかける人もいるそうです。冷水浴にも、それぞれの楽しみ方があるのですね。
そして、ミネラルを含む温かな湯に浸かって、ひと休み。今回は水着を着て、サウナと冷水浴、露天の湯を行き来しました。

実はこの日、目の前の草原では結婚式の準備が進んでいました。サウナの利用客が静かにくつろげるよう、木製のフェンスにはすだれのような目隠しが巡らされています。
楽しみにしていた山々の大パノラマが見渡せなかったのは、少し残念。でも、そんな小さな心遣いがなんだかうれしく、シェーンさんのやさしさを感じました。


アメリカの山の中に、どこか懐かしい日本の気配。風に揺れるアスペンの葉音を聞きながら、のんびり過ごす秋の午後です。
州立公園で出合う日本の温泉文化。次は雪景色の季節に
実はここ、ワサッチ・マウンテン州立公園の中なのです。以前、BE-PALで紹介したウィラード湾州立公園の湖畔のサウナとはまた違う趣ですが、どちらもユタの自然の中でゆっくり過ごせる場所です。

シェーンさんによると、2027年には日本の温泉のように、水着を着けずに湯に浸かれる専用エリアを設ける計画もあるそうです。タトゥー(入れ墨)があっても利用できる予定とのこと。日本の温泉文化が、ユタの山あいで少しずつ根づいていくのも楽しみです。


「次は雪景色の中で温まりたいね」
夫婦でそんな話をしながら帰路につきました。黄金色のアスペンはまだお預け。でも、季節を変えてまた訪ねたい場所が、ひとつ増えました。
Soho Saunas公式サイト
https://www.sohosaunas.com/





