前回に引き続き、今回訪れたのはフランス領ポリネシア・ソシエテ諸島に浮かぶタハア島、ライアテア島、そして世界的に有名なボラボラ島。どの島も美しいラグーンに囲まれていますが、それぞれに異なる魅力と文化が息づいていました。
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ラグーンに浮かぶ“双子の島”
今回最初に訪れたのは、タハア島とライアテア島。地図で見ると、ひょうたんのように寄り添う二つの島は、ひとつの大きなラグーンを共有しています。
ライアテア島は、ハワイ諸島、ニュージーランド、イースター島を結ぶ、ポリネシアトライアングルの中心に位置し、神々が誕生した場所とされています。“神聖な島”として古くからポリネシア文化の中心的存在を果たし、遠く離れた島々から、人々が卓越した航海技術を駆使してこの地を訪れ、マラエと呼ばれる祭祀場で祈りを捧げたり、儀式を執り行っていたとされています。現在、最大の「タプタプアテア」をはじめ周辺の小さなマラエや景観を含めた一帯は、ポリネシア文化を継ぐ重要な遺跡として、世界遺産に指定されています。
前田家が以前暮らしていたニュージーランドにも、先住民族であるマオリの人にとって神聖な場所である、マラエが多く存在します。ニュージーランドのマラエは、コミュニティにおける集会所のような役割に変化していますが、海を渡って伝わった驚くべき文化の繋がりを感じました。

旅をしていると、つい景色の美しさばかりに目を奪われがちですが、その土地の歴史や文化を知ることで、風景の見え方が大きく変わることがあります。ライアテア島は、まさにそんな場所でした。
海も川も楽しめるライアテア島の魅力
ライアテア島には、多くのヨットチャーター会社があり、周辺の島々へと足を伸ばす拠点となっています。
さらに、この島にはフレンチポリネシアで唯一、ボートやカヤックでクルーズできる大きな川が流れているのです。私たちも小舟で静かな川を進んでみました。

湿った土と植物の香りに包まれながら進む時間は、波に揺られる航海とは異なる、静かな時間が流れていました。海も川も楽しめる、ライアテア島の魅力は尽きません。

バニラの島で出会ったセーラーの飲み物
ライアテア島の隣に浮かぶタハア島は、高品質なバニラの産地として知られ、「バニラアイランド」とも呼ばれています。
バニラはラン科の植物で、自然受粉の確率が非常に低く、一本一本を手作業で受粉させる必要がある大変に手間のかかる作物です。現在の主な生産地はマダガスカルで、フランス領ポリネシアで生産されるバニラは世界全体の1%以下とも言われる貴重な存在。
地域によって香りに個性が出るのもバニラの面白さなのだそう。最近では日本の久米島でもバニラ栽培が盛り上がっているそうで、いつか味わってみたいと思っています。
と、ここまでバニラの話をしておきながら、今回は、タハア島で造られるラム酒をご紹介したいと思います。

船乗りや海賊が大樽から豪快に煽るお酒、ラム酒にはそんなイメージを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
その昔、長い航海では痛みやすい真水の代わりに、保存性の高いラム酒やワインが飲料の代わりとして船に積まれていました。船乗りとラム酒には長い付き合いがある、という訳なのです。
最近では世界各地で個性的なラム酒が造られていますが、ここタハア島では、サトウキビジュースを100%使用する「アグリコール製法」という珍しい製法が用いられています。なかでも印象的だったのは、バニラやパッションフルーツで香り付けされたオリジナルラム酒です。


昔の船乗りのように樽から豪快に飲み干すわけにはいきませんが、グラス越しに味わうラム酒は、南国の空気が閉じ込められたような芳醇な味わいでした。
タハア島を訪れる機会があれば、ぜひこの島が誇る「バニラ」と「ラム酒」を味わってみてください。
世界を魅了するボラボラ島
そして次に訪れたのが、タヒチと並ぶ人気を誇り、日本でもハネムーン先としてその名を知られるボラボラ島です。
ヨットでラグーンに近づくと、まず目に飛び込んでくるのは、海の色のグラデーションです。浅瀬は、透き通るミントブルー、少し深くなるとエメラルドグリーン、外洋に近づくと藍色へと変化していきます。ボラボラ島は、この青の変化が特に綺麗でした。その中央に切り立つ山影。ラグーンの穏やかな水面に水上コテージが並ぶ光景は、まさに絵に描いたような南国リゾートの景色でした。


ボラボラ島を一言で表すなら、「完璧な美しさを持つ島」です。南太平洋には美しい島が数多くあれど、ここまで景観の完成度が高い場所はそうそうありません。
正直なところ、到着する前は「有名すぎる観光地なのでは?」という気持ちがありました。しかし、実際に訪れてみると、
「やっぱり綺麗だね……」それ以外の言葉は見つかりそうにありませんでした。

セーラー目線で見るボラボラ島
ボラボラ島をはじめ、フランス領ポリネシアは世界中のセーラーたちの憧れの地です。
実際に訪れてみて、この景色はきっと、航海を終えた後も「夢のような記憶」として思い出し続ける場所になるだろうと感じました。
その一方で、この地域が抱える課題も目の当たりにしました。
現在ボラボラ島では、かつて自由にできた錨泊が大幅に制限され、事前予約制の係留ブイ利用が基本となっています。これはヨットの錨によるサンゴへのダメージを防ぎ、訪問する船の数を管理するためです。
美しい自然を守るための取り組みですが、同時に、島が抱える「観光との共存」という難しさも感じました。
美しい自然を未来へ残すために
これはフランス領ポリネシアに限った話ではなく、以前、メキシコ編でも書きましたが、外から見ると楽園のような島々も、実際には限られた資源と自然との絶妙なバランスの上に成り立っています。そのため、オーバーツーリズムの影響を受けやすい場所でもあります。
セーラーの旅も、美しい海や健やかな自然、そして寄港地の人たちとの良い関係があってこそ続けられるものだと常々感じています。
近年は、世界各地でアンカリングや入域に関するルールが増え、「昔より自由が減った」と感じるセーラーの声を聞くこともあります。実際、少し不便に感じる場面があるのも事実です。
それでも、その変化は、この先も島の暮らしや自然が守られ、次の旅人たちが同じ景色に感動できるようにするために必要なことなのだと思います。
美しい自然があり、それを大切に守ろうとする人たちがいて、はじめて旅は持続可能になる。
ソシエテ諸島での航海は、そんなシンプルだけれど大切なことを、改めて感じさせてくれる旅になりました。
それでは、また次回。




