白百合を尊ぶ先住民の村、霧台と、台湾南部の小都市、屏東を巡る | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

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2026.04.17

白百合を尊ぶ先住民の村、霧台と、台湾南部の小都市、屏東を巡る

白百合を尊ぶ先住民の村、霧台と、台湾南部の小都市、屏東を巡る
旅行作家・写真家の山本高樹による、台湾写真紀行の短期連載。第10回は、台湾南部の山中にある台湾原住民の村、霧台(ウータイ)と、その近くにある屏東(ピンドン)の街を訪ねた時のレポートをお届けします。
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山本高樹の台湾鉄道環島旅・第10回:霧台と屏東

高雄(カオシュン)での滞在の後、僕は列車とバスを乗り継いで、東に約60キロほど離れた標高1000メートル前後の山中にある村、霧台に移動しました。ここには、5年前に台湾を旅した時も訪れて、民宿で1泊したことがあるのですが、コロナ禍を経てからどうなっているのか、様子を見ておきたくなったので、立ち寄ることにしたのです。

霧台には、台鉄の屏東駅の近くにあるバスターミナルから、小型のバスが日に3便ほど行き来しています。高雄から早朝の列車で屏東に移動し、バスに乗り換えれば、2時間弱で霧台に到着します。以前は、入山許可証を取得しないと訪れることができませんでしたが、現在は、バスの車内で回ってくる名簿に情報を記入するだけで大丈夫です。

霧台部落の魯凱文化廣場に居並ぶ彫像たち。

台湾には、17世紀に大陸から移住してきた漢民族よりずっと前から定住していた、先住民族の人々がいました。彼らは台湾原住民と呼ばれていて、政府に指定されているだけでも16もの民族がそれに含まれます。台湾の総人口の数パーセントに相当する50万人以上の人々が、台湾原住民なのだそうです。

霧台は、台湾原住民のルカイ(魯凱)族の人々が暮らす村で、人口は3000人程度。ルカイ族全体の人口は、1万2000人ほどだそうです。山岳地帯での狩猟や採集で暮らしていたルカイ族の人々は、部落ごとに、いくつもの階級を持つ貴族社会を形成していました。獣の牙やカラフルなビーズなどで彩られた冠や装飾は、部落の中でのそれぞれの身分を示すものでした。

ちなみに、現在は行われていませんが、以前は、日本人や漢民族に「出草(しゅっそう)」と呼ばれていた、敵対する部落の者の首を刎ねる、首狩りの風習もあったそうです。現在の村の至るところにある彫像やレリーフは、ルカイ族のかつての伝統やライフスタイルを表現したものです。

子供たちの歓声が聞こえていた、霧台國小の校舎。

霧台に来ると、至るところで白百合の花のレリーフや装飾を目にします。ルカイ族の人々にとって、白百合の花は、英雄とされる男性や未婚の女性だけが身につけることのできる、大切なシンボルなのだそうです。小学校の校舎の壁面にも、大きな白百合の花のレリーフがありました。

複雑な装飾が施されている、霧台基督長老教会。

村の中心には、地元出身のアーティストが設計したという、石造りの立派な教会があります。霧台に住むルカイ族の人々の多くは、キリスト教(プロテスタント)の信者だそうで、17世紀頃にこの地を訪れたオランダやスペインの宣教師による布教から信仰が始まったようです。

集落に建ち並ぶ民家も、レリーフや装飾で彩られている。

5年前に訪れた時もそうだったのですが、霧台の村は人影が少なく、ひっそりとしています。ただ、こういった普通の民家でも、壁や軒先にルカイ族ならではの個性豊かなレリーフや装飾が施されているので、それらを眺めながら静かに散策するのが、この村ならではの楽しみ方かなと思います。

勇壮に見えて、どこかコミカルでもある彫像が、あちこちに。

この槍を手にしたおじさんの彫像も、もしかしたら何かの謂れがあるのかもしれませんが、勇ましいように見えて、何となくおかしみや親しみも感じられる印象です。こういった像やレリーフは、誰が作ったんでしょうね……。

神山部落にある人気店、神山愛玉氷。

霧台部落から少し山を下ったところにある、神山部落まで歩いて行ってみました。ここには、神山愛玉氷という人気の茶店があって、自家用車などで霧台に来る台湾人の観光客もよく訪れるところです。この店の名物は、愛玉子(アイユィズ)というスイーツ。台湾の山間部に自生するつる性植物の果実を水の中で揉み出すと、ゼリーのように固まるのです。

神山愛玉氷の愛玉子とコーヒー。

愛玉子に小米と緑豆をトッピングした綜合愛玉と、ホットコーヒーを注文。爽やかなレモン風味のシロップに、透明でふるっふるの愛玉子が浮かんでいて、食感も風味も最高。トッピングと楽しく混ぜながら、あっという間にたいらげてしまいました。ちなみにコーヒーは、この近辺で栽培したコーヒー豆でいれたものだそうで、素朴で良い味です。そういえば村を散歩していた時も、天日干しにされているコーヒー豆をちらほら見かけました。

食の宝庫、屏東夜市で晩ごはん探し

屏東の民宿でオーナーから手渡された、電撃殺虫ラケット。

今回の旅では、霧台には泊まらず、午後のバスで屏東まで引き返して、そこで1泊だけして、翌日の列車での移動に備えることにしました。

宿は、Webで検索していて見つけた民宿のような宿の個室を予約してみたのですが、訪ねてみると、オーナーの男性は英語などがまったく話せないようで、少しびっくり。外国人の客が来ても大丈夫だったのかなと一瞬思ったのですが、彼はスマートフォンの翻訳アプリを慣れた操作で使って、一から十まですべての説明をそのアプリでしてくれました。今やそういう時代なのですね……。

僕の泊まる部屋に案内された時、オーナーさんに、愉快なデザインのラケットのようなものを手渡されました。翻訳アプリで彼が言ったのは、「この近所には蚊が多いので、部屋の中で蚊を見つけたら、これで殺してください」。このラケット、グリップにあるボタンを押すと網の部分に電気が流れるので、その状態で蚊を叩くと、一撃で殺れるそうです。今回、実際にその威力を発揮する機会はありませんでしたが(笑)。

たくさんの食堂でにぎわう、屏東観光夜市。

おひるが愛玉子とコーヒーだけだったので、すっかり腹が減った僕は、チェックインもそこそこに、屏東の街へと繰り出しました。屏東駅にほど近いところに、屏東観光夜市と呼ばれるエリアがあって、道の左右には、カラフルな看板を掲げたたくさんの食堂が軒を連ねています。にぎやかで雰囲気のいい通りですが、テイクアウトをしに来た地元のお客さんたちが店の前にバイクで乗り付けるため、よそ見しながらぼんやり歩いていると轢かれそうになるので、ちょっと注意が必要です。

糯米腸、豚バラ、ハツなどの盛り合わせ。

通りを二往復くらいしながら、ずらりと並ぶ食堂を見て回って、よし、ここだ!と、一軒の食堂の中へ。黒白切(ヘイバイチエ)という、豚のいろんな部位をゆでて切ったものにタレをつけて食べる小吃(シャオチー、軽食)です。この日は何種類かの黒白切と白飯とスープの定食セットをいただきました。写真の皿にあるのは、糯米腸(ヌオミーチャン)というもち米の腸詰と、豚バラやハツなど。素朴でよい味で、もっといろんな部位の黒白切も試してみたくなりました。

ここからは、いよいよ、台湾の東岸を北上していく旅が始まります。

山本 高樹さん

著述家・編集者・写真家

1969年岡山県生まれ、早稲田大学第一文学部卒。2007年から約1年半の間、インド北部の山岳地帯、ラダックとその周辺地域に長期滞在して取材を敢行。以来、この地方での取材をライフワークとしながら、世界各地を取材で飛び回る日々を送っている。著書『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』(雷鳥社)で第6回「斎藤茂太賞」を受賞。近著に『雪豹の大地 スピティ、冬に生きる』(雷鳥社)、『流離人(さすらいびと)のノート』(金子書房)など。

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