
今回は東京都千代田区の「半蔵門GREEN WAY」です。
3rd ルート:半蔵門GREEN WAY
今回は、前回の大手町川端緑道の親水公園出入口をトレイルヘッド(=トレイルの起点となるアクセスポイント)とし、東京メトロ半蔵門線半蔵門駅までの約2.2kmの道のりを、斉藤的「半蔵門GREENWAY」として歩きます。
今回のルートの中では、皇居周辺は整備も行き届き、緑のきれいな道のりなので問題ありません。ただ、GREENWAYと高速道路が並走しているところがあり、地図では読み切れない場所が数か所ありそうです。とはいえ、建物もあまりないエリアなので、抜けの良い快適な道のりを歩けると思います。
まずは、トレイルヘッドである大手町川端緑道の親水公園を出て、早々に高速道路から離れていきます。早速、空が大きく開けて見えます。空を目にするだけで気持ちが軽やかになることを再認識しながら、気象庁前の信号を渡ると、大手濠緑地に大きな像が建っていました。
和気清麻呂(わけのきよまろ)
和気清麻呂は、奈良時代末期から平安時代初期にかけての貴族。宇佐八幡神託事件で、天皇に即位しようとする僧侶・弓削道鏡(ゆげのどうきょう)の野望を暴き、万世一系の皇統断絶の危機を救ったそうです。
この像は、1940年(昭和15年)に紀元2600年記念事業として楠木正成像とともに文武の二忠臣を象徴したものとして建立されたのだとか。

その和気清麻呂像の奥には震災イチョウが植えられていました。
震災イチョウ
1923年(大正12年)の関東大震災によって、東京都心は一面焼け野原となりました。そうした中、奇跡的に生き残ったのが、このイチョウです。一度は震災復興事業に伴う区画整理によって切り倒されそうになりますが、後世に残そうという声が挙がって延命し、文部省庁舎の敷地内(東京市麹町区一ツ橋1丁目1番地)から現在の場所(千代田区大手町1丁目)に移植されたそうです。

大手濠緑地の内堀通り沿いには、日本の道100選の道標が建っていました。この「東京GREEN WAY」で紹介するのにピッタリの道のりということでしょうか。
日本の道100選は、道の日(8月10日)の制定を記念して実施されたもの。1986年度および1987年度に、建設省と「道の日」実行委員会により制定されたそうです。日本の特色ある優れた道路、計104本が選出されています。選考基準としては、歴史や文化的な価値だけでなく、地域の人々にどれだけ親しまれている道路であるかが最大のポイントになるそうです。

やっぱり皇居沿いは緑も多く歩きやすいと実感しつつ竹橋駅を通り過ぎ、内堀通りの緑を眺めながら歩を進めていきます。前回は高速道路に覆われた日本橋川沿いを歩きましたが、今回は景色の抜けがよく、単純に気持ちいい道のりです。ランナーに皇居の周回コースが人気なのもうなずけます。空が広いと、それだけでテンションが上りますからね。

竹橋駅から代官町通りを歩いていくと、竹橋門跡、北桔橋門、乾門と続きます。そんな名所エリアを過ぎたら、首都高の入り口を横目に通り過ぎ、北の丸公園沿いに歩いていくと、情緒あるレンガ造りの建物が見えてきました。旧近衛師団司令部庁舎です。
旧近衛師団司令部庁舎
この建物は、陸軍技師・田村鎮(やすし)の設計によって1910年(明治43年)に建てられました。第二次大戦後、荒廃したままに放置されていた旧司令部庁舎は取り壊しの対象となります。ただ、明治洋風煉瓦造建築の一典型として、また官公庁建築の遺構としても重要なことから保存されることが決定。
1972年(昭和47年)に、重要文化財に指定のうえ、東京国立近代美術館分室として活用するという閣議了解がされました。同年、「旧近衛師団司令部庁舎」として重要文化財に指定されます。

旧近衛師団司令部庁舎のそばに、何やら立派な像が建っていました。北白川宮能久親王銅像です。
北白川宮能久親王(銅像)
北白川宮能久親王は幕末・明治の皇族で、陸軍の軍人です。1884年に陸軍少将、1893年に近衛師団長になり、軍を率いて台湾に出征しました。しかし、台湾で疫病にかかり、1895年、49歳で鬼籍に入りました。
像の制作は、近衛騎兵として側近に仕えた彫刻家の新海竹太郎さん。この新海さん、調べてみると現在の山形市の出身でした。前回に続き、僕が暮らす山形関連のものにめぐりあい、気分が上がります。別に、この「東京GREEN WAY」の裏テーマが「東京都心で山形を探そう」なわけではなく、たまたまなんですが。

旧近衛師団司令部庁舎を過ぎて少し進むと、「千鳥ヶ淵さんぽみち」の案内板がありました(トップ画像参照)。せっかくなので、アスファルトの道路を歩かず、散歩道を進んでいきます。
千鳥ヶ淵さんぽみちは、千鳥ヶ淵高射機関砲台座跡を通るのですが、内堀通りがよく見通せます。さすがに砲台跡、いい眺めです。この周辺は、春には桜や低い位置には多くの花々が咲き乱れるそうです。花の季節に再訪しようと思いながら、再び代官町通りに出ます。
そのまま通りをまっすぐ進むと、左手に大きな敷地が見えてきます。ここはイギリス大使館です(2025年5月現在大規模な工事中のようです)。そのイギリス大使館を回り込むように裏手に進み、急な坂道を登っていきます。

坂の中腹を過ぎたところに、日本カメラ博物館がありました。
日本カメラ博物館では、カメラや写真の企画展を定期的に開催。特別展では、機能別、国別など、カメラの魅力をあらゆる角度から掘り下げ、世界中から集まったカメラの名機、名作、珍品も展示しているとか。カメラ好き必見です。

その日本カメラ博物館を過ぎ、道なりに進むと半蔵門駅通りに出て、西の起点である東京メトロ半蔵門線半蔵門駅4出口に到着しました。

ここで、半蔵門GREEN WAYは終了となります(が、もう少し続きます)。
■今回歩いたルートのデータ
|距離約2km
|累積標高差約26m

◆ ◆ ◆
この連載「東京GREEN WAY」 FILE.1〜3で、日本橋、大手町川GREEN WAY、半蔵門GREEN WAYと3ルートを紹介してきました。この3本のルートをつなげて1本のGREEN WAYとして歩くこともできます。名づけて「日本橋GREEN WAY」といった感じでしょうか。
3ルートで区切らず、「日本橋GREEN WAY」をスルーハイクで一気に歩くと、約4.4km の道のりです。日本橋からだとやや上りになるので、半蔵門から下り基調のルートで歩いたほうが楽かもしれません。

いうまでもなく、皇居はかつて江戸城でした。城は小高い場所に築かれたものが多く、江戸城も例外ではありません。そのため、周辺の道は城に向かって上りになっています。そうした地形に関することも、知識ではなく体感として、歩くことで理解できるはずです。
まずは、日本橋、大手町川、半蔵門の各GREEN WAYを歩いてみてください。日本橋など1、2分で渡れますが、のんびり、ゆったり歩けば緑を目にしたり川風を浴びたりして気持ちの良い時間を過ごせると思います。東京GREEN WAYには、特に決まりもルールもありません。ただただ、思い思いにGREEN WAYを歩くことを楽しんでくだい。
今回のコースを歩いた様子は動画でもご覧いただけます。
●半蔵門GREEN WAY
●日本橋GREEN WAY