君の名を知りたい。で、君の名は…?
その声の主を、野鳥の名前を知りたい!
冒頭からすみません。私の住むオランダでは、春になると鳥たちが本当ににぎやかで、運河沿いの緑地なんかを歩けば、そこら中から鳥の声たちが聞こえてきます。でも「鳥の声たち」というその他大勢みたいな扱いでしかわからない。
家の屋根裏部屋にいると、すぐそこの屋根の上にいる鳥たちの声が、まるでおしゃべりしているみたいに聞こえてきます。でも姿は見えない。誰なの、そこで楽しそうにしているのは…。知りたい…。

まずは私なりに、オランダの自然保護協会や野鳥情報サイトを調べて、うちの庭によくやってきて、おぼろげながら姿がわかる「いつメン(いつものメンバー)」たちの名前は突き止めました。コマドリ、シジュウカラ、クロウタドリ、ハト、スズメ、カラス、カササギたち。
でもさっと通り過ぎる鳥たちが他にもいるはず。オウムみたいなやたら鮮やかな黄緑色の鳥も時々見かけるんだけど、君たちの声も聞こえているはずだよな…。
ここでふと、気づきました。このご時世ですよ。絶対に鳥の鳴き声から判別してくれる便利なアプリがあるはず。早速調べてみたところ、いろいろあって逆に困りましたが、日本野鳥の会のブログでも紹介されていた「Merlin」というアプリを使ってみることにしました。
Merlin Bird ID
App Store
Google Play
Merlinはアメリカのコーネル大学鳥類学研究室が運営している野鳥識別アプリとのこと。「聞こえた声」や「見た姿」などを元に、その野鳥の名前や詳細を教えてくれます。
アプリは日本語で使用できるほか、鳥の種名の表示言語の切り替えも可能。私の場合日本語で操作しながらも、時々種名の表示言語を変えて、オランダ語ではなんて呼ばれているかを調べることができました。海外旅行中に現地で呼ばれている名前で鳥を調べたいという時にも便利そう。
鳴き声判別アプリの実力やいかに?
家の庭でさっそく使ってみました。「質問に答えて識別」、「音声」、「写真」と、3つの検索手段が表示されます。「音声」を選び、しばし周囲から聞こえてくる鳥たちの音を聞かせてみると…おぉすごい!鳥の名前と写真がどんどん表示されていく!
わくわくしながら見ていると、突然キーキーという甲高い音が。見上げると、あの黄緑色の鮮やかな鳥が頭上を横切っていくじゃないですか。ハッとアプリを見るとそこには「ホシセイインコ」の名前と姿が!あぁ君はこんな鳴き声だったのね、うん聞いたことあったよ。これで覚えたよ。そして君はホシセイインコという名前なのね…。感無量です。

いやこれは楽しいぞ。もっといろんな鳥を見つけたい。名前を知りたい。というわけで、暇そうにしてた小5の息子を引き連れて、そのまま近くの森へと行ってみました。

もっと多くの鳥の名を求めて、森へ
自宅から車で10分ほどの森、アムステルダムセボス。国際空港であるスキポール空港に隣接している人口の森です。広さは約1000ヘクタール(10平方キロメートル)。その中の「Vogeleiland(鳥の島)」エリアに来てみました。

森ではリードをつけずに犬の散歩をしている人も多いのですが、ここは入口に木戸があって犬さんは立入禁止。バードウォッチング専用エリアとなっています。
鳥の鳴き声がシャワーのように注がれている森の中で、いざアプリを起動!

ずらずらーっと鳥たちが表示されていきます。リアルタイムで今聴こえている鳥は黄色の枠で表示されてわかりやすい。家でも見かけるヨーロッパコマドリやシジュウカラの他に、ミソソザイやアオガラ、ズグロムシクイといった鳥たちがいるらしい。
そして声が聞こえるほうを探すと…いた!見つけた!「聞いたことある名前の鳥たち」、実はこんなところにいたんだ、という事実に地味に興奮します。

息子が「チフチャフがいっぱいいるねー。」と。確かに、チフチャフ、チフチャフという声がたくさん聞こえてきます。
てっきり息子がそう勝手に名付けたのかと思ったら、アプリを見ると「チフチャフ」と。息子の携帯をのぞき込むと、オランダ語表記になってた彼のアプリにも、同じ読み方をする「tjiftjaf」の文字が。オランダ語でそういう名前の鳥だというのを学校で習って知っていたそうです。
今度は英語表記にしてみると、「ChiffChaff」。この鳥は鳴き声が特徴的すぎて、いろんな国の言葉でも名前は鳴き声そのままでした。世界中で似た名前の鳥といえば、たしかカッコウもそうだったな。
まさかのレアキャラを発見?
Vogelijlandは3.5ヘクタール(35,000平方メートル)ほどのエリアですが、丘、草むら、川、湿地、背の高い木々とさまざまな環境がぎゅっと詰まっています。
これは水辺の鳥とかの名前も知りたいと思い、アプリを片手にうろうろとさまよい始める私たち。突然息子が立ち止まり「ママ、あれ。」と。

完全に風景に同化してて気づかなかった。カモが道端で昼寝してました。鳴き声を拾ってないのでアプリにも表示されず。でも姿がわかるので、「質問に答えて識別」や「写真」で名前を調べることができます。
といっても、さすがにこれは私でもわかるぞ。マガモのオスですね。

カモが寝てた先には小川があり、オオバンが巣材を集めていました。その先にはひな鳥たちが待つ巣が。巣材の枝を置いて再び泳ぎだした親鳥を、一羽のひなが一生懸命付いていく姿がかわいらしい。
川エリアに来ると、アプリにはさっきとは違う新たな鳥たちが表示され始めました。この地域と季節で見られるのは希少という種類には印が付いているのですが、ここでなんとカワセミが表示されました。まるでポケモンGOでレアポケモンが出現したような気分に。
カワセミいるんだ、見てみたい!と小川の方を見てみると、まさにその瞬間、サッとすごい速さで視界を通過していく青っぽいものが。「え、あれじゃない!?」と息子と二人で大興奮。あまりの速さにその後見失ってしまいましたが、カワセミを見ちゃったかもという嬉しさでいっぱい。アプリが無かったら、あれがカワセミかもなんて思いつきもしなかっただろうな。
その後もエリア内をうろうろと歩き回りました。空港が近いので飛行機も頭上を頻繁に通過するけど、そういった雑音もアプリ使用には特に問題なし。ただ録音し続けていると途中で自動的に一時停止するので、そこで保存を選ぶのを忘れずに。
また外出先によっては、事前にオフライン用のデータパックをダウンロードしておくと便利です。充電の減りも早くなるので、モバイルバッテリーもあるとよさそう。


「集める」、「知る」楽しさを手助けしてくれるツールに感謝
さて、本日の森散歩の成果。アプリを使いながら集めた鳥たちの名は、ヨーロッパシジュウカラ、ヨーロッパコマドリ、ズアオアトリ、ウタツグミ、ミソソザイ、アオカワラヒワ、ニシクロウタドリ、チフチャフ、ハイイロガン、ズグロムシクイ、ゴジュウカラ、アオガラ、カワセミ、マガモ、オオバン、アカゲラ、タンシキバシリといった面々でした。
目視できなかったものもいましたが、それでも「聞こえる声」と「見えた姿」と「名前」が結びつくのはなんともいえない快感。もっともっと見つけたい!と新たな扉が開いた感じ。知る楽しさって、こういうところから始まるんだよなぁ。(実際、この後外出先で鳥の声が聞こえると、すかさずアプリを起動してる私。)
アプリでは提示された情報を見返すだけではなく、実際に自分が観察した鳥を記録していくこともできます。慣れてきて判別に自信がついたら、観察記録を「eBird」という世界最大の市民参加型野鳥データベースに登録することもできるんですよ。
このような一般市民が参加できる科学調査や分析は「シチズンサイエンス」と呼ばれています。eBirdは日本野鳥の会が運営する日本版プロジェクトもあるそうです。私のように「鳥の名」集めにハマった人は、ぜひ実物も観察して、その記録を多くの人に役立ててみてください!




