ボルネオ島サラワク州の州都クチンは多彩な食を生み出す。とくに朝食がいいぞ! - 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2025.06.22

    ボルネオ島サラワク州の州都クチンは多彩な食を生み出す。とくに朝食がいいぞ!

    ボルネオ島サラワク州の州都クチンは多彩な食を生み出す。とくに朝食がいいぞ!
    サラワク州の州都は、異文化が影響しあって多彩な食を生み出し、2021年にユネスコ食文化創造都市に認定された。ここでは朝7時頃から食堂が店を開ける。そして、午前中で完売となる逸品料理がある! 筆者はマレーシアの旅ではホテルの朝食を食べることはなく、ほぼ毎朝、食堂に向かうという。

    多民族を象徴するのは猫?!

    ボルネオ島のマレーシア・サラワク州は、華人、マレー人、サラワク先住民族とさまざまな人々が共存している。それぞれ道教・仏教、イスラム教、キリスト教と信仰する宗教が異なる。州都クチンはマレー語で猫と同じ発音なので、「猫の街」と呼ばれる。

    ロータリーなど、街のあちこちに猫のシンボルがある。なかでも中華街の入り口にいる猫娘は、サラワクでもっとも有名な猫である。この猫娘、シーズンによって衣装を変える。華人の正月には華人の衣装、ガワイ(イバンの収穫祭)にはイバン人の衣装、ハリラヤ(断食明け)にはマレー人の衣装、ディパバリというヒンドゥー教の新年にはインド人の衣装を纏う。

    中華街の入り口にあるサラワクでもっとも有名な猫で、このときは華人の正月が近かったので華人の衣装。サラワク州クチンにて。

    宗教が定まらないために相手が選べず、一生結婚できない猫といわれる。いや、日本人とだったら結婚できるんじゃないかと思ったりする。ともあれ、クチンの多民族性を象徴する猫である。クチンには、オールドバザールと呼ばれる立派な中華街があり、交易のために開かれた街の名残がある。

    サラワク州都クチンのオールドバザール。実態は中華街で、いまではちょっとしたワークショップが立ち並ぶ。華人が拓いた交易場が街の始まりであることをよく示している。
    サラワク州都クチンのオールドバザールにある中国寺院で、トゥア・ペッ・コン (大伯公)寺。

    プラナカン料理はココナッツミルクとヤシ油が基本

    クチンでは異文化が影響しあって多彩な食を生み出すことから、2021年にユネスコ食文化創造都市に認定された。そのベースは華人系とマレー系の料理であり、両者が融合したプラナカン料理である。15世紀後半、華人が交易のためにマレーシアやシンガポールに移民し、現地の女性と婚姻を結んで根付いていった。

    プラナカンとは華人系移民の子孫のことで、プラナカン料理は中国の調理法がマレーの食材や香辛料と出会って形成されたものである。プラナカン料理にみられるマレー的要素は、ココナッツミルクやヤシ油を基本とし、穀物酢の代わりにタマリンドや柑橘類、調味料としてサンバルやブラチャンを多用することである。

    サンバルは、チャベ(トウガラシ)、バワンメラ(小粒の赤タマネギ)、バワンプティ(ニンニク)に塩や砂糖などを加えたものだ。ブラチャンとは、小エビ塩辛ペーストである。おもにサクラエビ科アキアミ属(Acetes spp.)の小エビを発酵させたもので、マレーシア独自でなく、タイでカピ、インドネシアでトラシと呼ばれるものと基本的に同じである。もともとボルネオ島で発達したものではなく、マレー半島から来たようだ。

    サラワク・ラクサ。ビーフンの麺に、薄焼き玉子の千切り、鶏肉、エビなどの具材が乗っている。スープは30種以上ともいわれる香辛料をそれぞれの店が秘伝とするレシピで混ぜ合わせ、ココナッツミルクを加えたもの。サラワク州クチンにて。

    わたしが好んで食べるクチンの朝食は、サラワク・ラクサである。一般的にラクサとは、マレー半島やサバ州にもあるプラナカンの麺料理である。30種以上ともいわれる香辛料をそれぞれの店が秘伝とするレシピで混ぜ合わせ、ほんのりカレー風味でココナッツミルクのコクがしっかりと味わえるスープだ。

    サラワク・ラクサの麺はビーフンで、具材として薄焼き玉子の千切り、鶏肉、エビなどで、青みは店によってコリアンダー(パクチー)の葉もしくは青ネギである。だいたい朝7時に開くので、クチンの街中に滞在するときは、朝食はほぼ100%サラワク・ラクサである。

    ラクサの店は朝7時に開く。人気店は開店早々に朝食を食べる華人で満席となる。ラクサは午前中だけの店が多い。サラワク州クチンにて。

    マレー半島やサバ州ではイスラム食堂へ行く

    しかし、ラクサといってもマレーシア各地でかなり味付けが異なり、マレー半島やサバ州のラクサはわたしにはどうも口に合わず、そういうときにはイスラム食堂でロティ(クレープ状の小麦粉の薄い非発酵パン)を焼いてもらうことになる。

    イスラム料理店で朝に出すロティとミルクティー。これは玉子入りのロティ・テルール。カレーのスープを少しだけ付けて食べる。サバ州コタキナバルにて。

    インドやパキスタンのチャパティと同様に、水を加えた小麦粉を捏ねて寝かしておいたドウをひとつかみずつ丸めておいたものを、注文のたびに手品さながらにくるくる回しながら円く薄く延ばして、それを鉄板で焼いてくれる。

    ロティは注文されると、小麦粉を捏ねて寝かしてあった団子を広げて、鉄板で焼いてくれる。クアラルンプールにて。

    ロティにはテ・タリというミルクティーが付き物だ。テ・タリとは、マレー語で「引っ張るお茶」という意味である。2つの容器の間でミルクティーを何度も繰り返し注ぐことで、泡立ちをよくする製法に由来する。十分に泡立っていないと、テ・タリとはいえない。

    ミルクティーであるテ・タリ。テ・タリとはマレー語で「引っ張るお茶」という意味で、2つの容器の間でミルクティーを何度も繰り返し注ぐことで、泡立ちをよくする製法から名付けられた。サバ州コタキナバルにて。

    マレーシアでホテルの朝食を食べない理由

    わたしはマレーシアの街に宿泊して、ホテルの朝食ビュッフェを食べることはまずない。マレーシアには朝にしか味わえない軽食があるからだ。サラワク・ラクサは、スープにココナッツミルクをたくさん投入してあるので、早朝につくったスープは昼前に使い切ってしまうのが原則だ。

    そのためにサラワク・ラクサの店は、昼食には別の麺類を出す。またロティもつくり置きはせず、専従のスタッフが必要なのでほぼ朝食限定の店が多く、昼になるとマレー風のナシ・チャンプル、つまり白いご飯あるいはピラフと一緒に、ケースに並んでいるさまざまなおかずを好きなように盛り付けて食べる店となる。

    ナシ・チャンプルーのおかず。マレー語で、ナシはご飯、チャンプルーは混ぜるという意味。炒め物や煮物、揚げ物などが並ぶ。

    ちなみにサラワク・ラクサはサラワク州でしか売られていなので、サラワクを離れると食べたくなって仕方がない。幸いなことに、最近はスープをペーストにしてパックで売っている。それはよくできていて、指定どおりの量で水に溶いてココナッツミルクを混ぜて温めるとスープの出来上がり。

    薄焼き玉子を千切りにし、欲をいえば鶏肉や小〜中サイズの無頭エビを茹でておいて具材を準備しておく。ビーフンを水でもどして(日本では茹で素麺を使うことがあるが)少しお湯で温めてまずどんぶりに盛り、具材を上に散らしてパクチーを少々あしらってスープをかけると、名店のそれにはおよばないものの、ラクサ恋しさを慰めるにはじゅうぶんな一品となる。

    湯本貴和さん

    1959年徳島県生まれ。日本モンキーセンター所長。京都大学名誉教授。理学博士。植物生態学を基礎に植物と動物の関係性を綿密に調査。アフリカ、東南アジア、南米の熱帯雨林を中心に探検調査は数知れず。総合地球環境学研究所教授、京都大学霊長類研究所教授・所長を務める。京大退官後も旅を続け、調査を続け、食への飽くなき追求を続けている。著書に『熱帯雨林』(岩波新書)、編著に『食卓から地球環境がみえる〜食と農の持続可能性』(昭和堂)などがある。日本初の“食と環境”を考える教育機関「日本フードスタディーズカレッジ 」の学長も務める。

    ※とくに表記のない写真はすべて湯本さんの撮影

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