そこにあるのは、漁師たちの簡素な掘立て小屋だけ。店はもちろん、電気も水道もありません。満潮になれば海に削られ、季節によって形まで変わる、まさに自然がつくった島です。
ボートで砂州へ渡ると、周囲は360度ほぼ海。足元には真っ白な砂浜、遠くには本土の国立公園が見えます。遮るものがないので風が常に吹き抜け、カイトサーファーたちの聖地となっています。
今回は、このヴェラ島での一泊二日旅をレポートします。
1時間の船旅
朝、カルピティヤのビーチに集まったのは日本、オランダ、オーストリア、トルコ、サウジアラビアから風を求めてやってきたカイトサーファーと現地スリランカのスタッフたち。
ボートへ積み込むのは、カイトだけではありません。食料、飲み水、寝具など、二日間生活するために必要なものをすべて載せます。


会話もままならないほど鳴り響くボートのエンジン音の中、体育会系インストラクターちょろが早速充電に入りました。

ちょっと羨ましい。
ボートに揺られること約1時間、砂州の島が見えてきました。

マップでは離れている2つの島が今は繋がってひとつになっています。地図の①地点に到着。ここからダウンウィンドで②地点を目指します。
ダウンウィンドとは
風下、もしくは風下に向かって走る事をダウンウィンドと言います。風に乗って何キロも海上を滑走することで、変わっていく景色を楽しみながらクルーズする事をダウンウィンダーという事もあります。
今回は約4kmを砂州に沿って20分程度で下っていき、メインスポットを目指します。

ところが、出発直前になって事件が起きました。
「ハーネスがない。」
そうつぶやいたのはオーストリアのパイロット、セバスチャン。ハーネスはカイトの力を受け止めるための必須装備です。
一瞬空気が止まりました。すると現地インストラクターのティキリが、自分のハーネスを差し出します。
「これ使いな。」
ただ、そのハーネス、ゴミに捨てられていてもおかしくないほどのボロボロ具合。セバスチャンも少し不安そう。でも背に腹は代えられません。仕方なくこれで行くことに。
―――
20分ほど走り、メインのスポットに到着しました。

ここの魅力はなんといってもその広さ。世界各地にこのようにオフショア(陸から海に向かって風が吹いている状態)で平水面のスポットは点在していますが、走っても走っても途絶えないこれほど広いスポットはなかなかありません。
しかも、この日は私たちのボート以外に誰もいない貸切状態。一緒に船に乗ってきたメンバーだけで思いっきり楽しむことができる、もうこれ以上ない最高の環境。
そんな中、不満げな顔で海から上がってきたのはオランダ人警察官のレムコ。
「ジャンプの最高記録が出ない。風が足りない!」
確かにこの時点ではまだ20ノット前後(木々は揺れ、砂が舞うほどの風だが爆風というほどではない)で、記録が出せるほどではありません。
そこに笑顔でボロボロのハーネスをつけたセバスチャンが上がってきました。
「このハーネス、ティキリの力が宿ってるのかいつもより上手に乗れた気がするよ!」
それを聞いてみんなでひと笑い。
ボートマンのスレッシュが用意してくれたランチをみんなで囲みながら、とても楽しい時間が流れていきます。実は、ヴェラにはカイト用の小屋が建ててあり、なんとトイレまであります。

午前中散々乗ってみんな疲れているのでランチの後は休憩、と思いきやスズキさんだけはすぐに海へ。スリランカに来てから風がずっと吹き続けているにも関わらず、毎日食事の時間も惜しんでカイトしています。モチベーションが高すぎる。
彼は最初に自己紹介でバイクのハンドルを握る真似をして「SUZUKIです」と挨拶したおかげで、全員に一発で名前を覚えられていました。

一方、日本語を話さない人にとって「ケースケ」は難しいらしく、なかなか覚えてもらえず何度も聞き返されていました。
そんなケースケ、実は日焼けでも苦戦中。写真でも真っ赤になっているのがよくわかるはず。
それを見かねたレムコが、「大丈夫か?」と自分の薬用クリームと日焼け止めを差し出してくれました。困っている人を見ると放っておけないタイプ。さすが警察官。
午後も風は絶好調
スズキさんとサウジアラビアのシェフ、アブドゥルは休むことなく乗り続けています。

自作ドローンで撮影をしていたセバスチャンも、ようやく自分の番。ティキリのマジックハーネスを着けて勢いよく乗り始めた、その直後でした。
「バン!」
乾いた大きな音。見上げると、空中でカイトが破裂しそのまま海へ落ちていくところでした。
カイトが壊れること自体はたまにある事ですが、ハーネスを忘れ、ようやく乗れたと思った矢先のアクシデント。ツイてなさすぎる。
その後は持ってきていた予備のカイトで無事に乗ることができましたが、これまで壊さないかとみんなにからかわれていました。
―――
その後はみんなで撮影大会。


夕方は一日の中で一番気持ちいい時間です。風も上がって(より強く吹いて)きてみんなで最高のセッションを楽しむことができました。
―――
ところで、島では漁師たちがその日に獲れた魚介を仕分けしています。それを見つけたアブドゥルが、スレッシュを連れてカゴいっぱいのカニとイカを買ってきました。
夕食は持参したチキンに加え、イカ炒めと茹でガニまで並ぶ豪華なメニューに。大のカニ好きな私は5杯も平らげましたが、「人生で初めて食べる」「どうやって食べるの?」というメンバーもいて、それでも余るほどでした。

いつもなら夕食後はビーチで焚き火を囲みます。
ところが、この日は土砂降り。トタン屋根からはあちこち雨漏りし、コットを濡れない場所へ何度も動かします。
アブドゥルとティキリ、トルコ人パーティーガールのミラとひとしきり盛り上がりましたが、雨音は音楽も聞こえないほど激しくなり、お開きとなりました。
遊び尽くしたその後に待つ試練
明け方、目が覚めて散歩に出ると、犬がお供について来ました。

朝も風は吹いていましたが、みんな疲れていたのでのんびり朝食。と思ったら、また最初に海へ出たのはスズキさん。体育会系のちょろが「部活かな?」とツッコんでましたが、その姿につられてみんな準備を始めます。
この日は少し風が弱かったので、地形の楽しいところにクルージングに出かけました。

ラグーンからラグーンへ、砂州を飛び越えながらカイト散歩を楽しみました。
―――
思う存分遊び尽くした後はいよいよ撤収です。

……しかし、本当の試練はここから。帰りのボートは風上へ向かうため、波を真正面から受けながら約1時間。何度も叩きつけられ、全身びしょ濡れです。これだけは、何度来てもほんとうに辛い。
それでも、宿泊施設へ戻る頃には「次はいつ行く?」という話で盛り上がるほど、本当に楽しい二日間でした。帰りのボートだけは、本当に勘弁してほしい。
そう思ったはずなのに、気づけばもう次のヴェラトリップの予定を考えています。
水も電気もない砂州の島。
でも、だからこそ味わえる風、景色、そして仲間との時間があります。少しの不便さが最高の思い出に変わる場所、ヴェラ。
次はいつ行こうかな。
Trip organized by Kitesurfing Lanka https://www.kitesurfinglanka.com/
今回紹介したヴェラトリップは、カルピティヤのカイトスクール/総合宿泊施設「カイトサーフィン・ランカ」が開催しています。カイトサーフィンやカルピティヤの詳しい情報は下記の記事をご覧ください。





