ラスベガスから40分の場所に広がる非現実的世界!アメリカ最大の人造湖「ミード湖」の鉄道遺跡トレイルを歩く | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

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2026.07.09

ラスベガスから40分の場所に広がる非現実的世界!アメリカ最大の人造湖「ミード湖」の鉄道遺跡トレイルを歩く

ラスベガスから40分の場所に広がる非現実的世界!アメリカ最大の人造湖「ミード湖」の鉄道遺跡トレイルを歩く
ラスベガスといえば、巨大ホテルやカジノが立ち並ぶ華やかな街を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、その「アメリカでもっとも罪深い都市」から車で40分ほど走るだけで、アメリカ西部開発の歴史と雄大な自然を同時に体感できるトレイルがあります。ミード湖国立レクリエーション地域(Lake Mead National Recreation Area)内にある「ヒストリック・レイルロード・トレイル(Historic Railroad Trail)」がそれです。

「歴史的な鉄道線路トレイル」と訳すべきでしょうか。1930年代、フーバーダム建設のために敷設された鉄道線路の跡地を利用したトレイルなのです。ネバダ州とアリゾナ州を流れるコロラド川を堰き止め、築き上げられた全米最大のダムは、それと同時に全米最大の人造湖(ミード湖)を砂漠の真ん中に現出させました。

この巨大な水面はカリフォルニア州を含むアメリカ西部地方全体に水と電力を供給しています。

トレイルはミード湖のレクリエーション・センターからフーバーダムまで片道約6㎞。ミード湖の湖岸に沿って走っています。赤茶けた岩山、抜けるような青空、そして眼下に広がる青い湖面。なかなか他では見ることができない風景です。
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鉄道線路を利用したトレイルが歩きやすいわけ

出発点ミード湖レクリエーション・センターの近く。

フーバーダム建設の始まりは1931年。アメリカが世界恐慌の真っただ中にあった時代です。

当時の連邦政府は、コロラド川をせき止める巨大ダム建設計画を進めていました。現在のフーバーダムです。

高さ220mを超える巨大なダムを建設するには、膨大な量のセメントや鉄鋼資材、建設機械を運び込まなければなりません。そのため建設会社は専用の鉄道路線を敷設し、資材輸送を行いました。

現在のトレイルは、その線路上に整備されたものです。この辺りの地形はとても険しい峡谷なのですが、鉄道を走らせるために、ほぼ平坦な道筋ができ上っています。道幅も常に5mくらいはあります。ハイキング初心者や家族連れでも歩きやすく、ラスベガス観光の合間に訪れる人も少なくありません。ランナーもかなりの割合で混じっています。

トレイルからはミード湖の水面が常に視界に入ります。琵琶湖とほぼ同じ面積を持つということですので、つまり東京23区がすっぽり入るほどの巨大な人造湖です。深い峡谷に水を貯めているため、湖岸線は非常に複雑に入り組んでいます。

ミード湖の湖岸線の長さは1,220kmに達するそうです。ビワイチ(琵琶湖一周)と呼ばれるサイクリングルートの距離は約200㎞。その約6倍にもなります。もっともミード湖の湖岸線はほとんどが深い峡谷のなかにあり、人が近づけるのはほんの一部です。トレイルはそのさらに一部に過ぎません。

このトレイルの目玉のひとつは、約90年前に造られたトンネルがそのままルート上に残されていることです。地形が険し過ぎるため、やむなく岩山を貫通させて線路を通した名残が5本あります。

トンネルはハイカーにとっては貴重な日陰の区間でもあります。強烈な日差しが遮られ、空気もひんやりと冷たくなります。薄暗いトンネルを抜けると、まぶしい砂漠と湖の風景がまた戻ってくるわけです。

トンネルのひとつ。

フーバーダムが変えたアメリカ西部

トレイルの終点に近づくと、巨大な鉄橋とコンクリートの壁が姿を現します。1936年に完成したフーバーダムです。

このダムが建設されたことによってコロラド川の洪水が制御され、水力発電による安定した電力供給が可能になりました。さらに大量の水を貯留できるようになったことで、乾燥地帯であるネバダ州やアリゾナ州、そしてカリフォルニア州南部の都市開発が大きく進みました。

特にラスベガスの発展は、フーバーダム抜きには語れません。1930年頃のラスベガスの人口はわずか5000人ほどでした。しかし現在の都市圏人口は200万人を超えています。

砂漠の小さな鉄道駅にすぎなかった町に世界有数のカジノを建設したのは伝説のギャング『バグジー』ことベンジャミン・シーゲルだということになっていますが、そのシーゲルにしてもフーバーダムがもたらした水と電力がなければお手上げだったはずです。

同じことはロサンゼルスにも当てはまります。ダム完成当時のロサンゼルス市の人口は約140万人でしたが、現在は約390万人、周囲の郊外も含めたロサンゼルス都市圏では約10倍の1300万人を超えます。

もちろん人口増加の要因は一つではありませんが、フーバーダムはその大きな原動力のひとつであったことは間違いないでしょう。それがなければ、ディズニーランドもドジャースタジアムも生まれていなかったかもしれません。

湖岸に残る「水不足の痕跡」

しかし現在、ミード湖は私たちが抱えるやっかいな地球的課題を非常にはっきりとした形で見せつけてもいます。近年の長期干ばつや気候変動の影響により、ミード湖の水位が大きく低下していることです。

湖岸の岩肌には白い帯状のラインが見えます。これは「バスタブ・リング(bathtub ring)」と呼ばれる現象です。

浴槽をよく掃除しないと、水位のところに汚れの輪ができますよね。それと同じように、かつて湖面があった高さから現在の水面までの間が白っぽくなっているのです。

フーバーダム周辺道路からの眺め。

フーバーダムの前を横切る橋はそのままネバダ州とアリゾナ州の州境になっています。その橋の上は観光客の記念撮影スポットでもあるのですが、はっきりと地層のように色が分かれた岸壁を一望できます。

バスタブ・リングの落差は場所によっては30m以上の高さになっているのだそうです。10階建てくらいのビルほどの高さに相当します。それだけの水が失われているという事実には言葉を失います。

ネバダ州、アリゾナ州、カリフォルニア州といったアメリカ西部は今もフーバーダムの水に大きく依存しています。もともと雨の少ない砂漠気候の土地に巨大都市を成り立たせている重要なライフラインなのです。

つまり私たちが目の前に見る美しい風景は、アメリカ西部開発の成功を象徴すると同時に、天然資源の持続可能性という現代的な課題も映し出しているのです。

ヒストリック・レイルロード・トレイルを歩くときの注意点

巨大ダム建設の歴史に触れ、人間が砂漠に都市を築いた過程を実感する。そして同時に、水不足という現代の環境問題についても考える。むろんそれだけではなく、アメリカ西部ならではの荒々しい岩山に青い湖水があいまった絶景を楽しむことができる。

ラスベガスを訪れる機会があれば、このヒストリック・レイルロード・トレイルにもぜひ足を伸ばしてみてください。前述した通り、距離も難易度もごくごく初心者向けのトレイルです。

ひとつだけ難を言えば、いささか暑すぎることでしょうか。私が訪れた5月後半でも、気温は摂氏30度を超えていました。これが夏になると40度を超す日が続きます。なにしろ砂漠ですので、日陰を作る樹木もありません。訪れるなら秋から春の季節がおすすめです。どうしても夏場しか選べない場合は早朝にするしかないでしょう。飲料水を十分に持参し、帽子や日焼け対策もお忘れなく。

トレイルの看板。砂漠ハイキングに適切な服装・装備が説明してある。帽子を被り、サングラスをして、日焼け止めを塗って、長袖・長ズボンを着る。水と食料を携帯する。ハイキング用のシューズを履く。銃やナイフは持ち込み禁止。

アメリカ国立公園局ウェブサイト内ミード湖ヒストリック・レイルロード・トレイル案内ページ:
https://www.nps.gov/thingstodo/hike-the-historic-railroad-trail.htm

著者画像

角谷剛さん

米国在住ライター(海外書き人クラブ)

日本生まれ米国在住。米国で高校、日本で大学を卒業し、日米両国でIT系会社員生活を25年過ごしたのちに、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。日本のメディア多数で執筆。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)会員

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