日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員(BE-PAL選出)の金子浩久が長距離走行で気づいた点を報告します。
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日本に導入されているモデルでフォルクスワーゲン最大のSUV

今回試乗したのは、ディーゼルエンジンで4輪を駆動し、スポーティな装備が施された「ティグアン TDI 4MOTION R-Line」です。
車両本体価格653万2000円にオプションの「シプレッシーノグリーンメタリック」塗装3万3000円が加わり、合計656万5000円の仕様。
フォルクスワーゲンのSUVには、以前は日本でも販売されていた大型SUV「トゥアレグ」がありましたが、最新型は現在は導入されていないので、このティグアンが日本でのフォルクスワーゲン最大のSUVとなります。
ボディサイズは、全長4540×全幅1860×全高1655(ミリ)。
2代目ティグアン外観は一新され、ご覧の通りに特にフロント部分はライト類やグリルなどを薄く見せる造形が施されています。スマートで現代的ですが、没個性的とも言えなくもないですかね。

このティグアンTDIのパワーユニットにはモーターとバッテリーは存在せず、エンジンだけが用いられています。フォルクスワーゲンに限らず、最近のヨーロッパのクルマではエンジンだけを搭載した新型車よりも、マイルドハイブリッド(MHEV)やプラグインハイブリッド(PHEV)など、なんらかのかたちで大小のモーターとバッテリーを組み合わせてハイブリッド化されたクルマが新しく投入される傾向が強いので、このティグアンTDIが珍しく見えてきます。
フォルクスワーゲンと聞くと真っ先にイメージするゴルフはMHEV化され、パサートにも優れたPHEVが追加されています。
ティグアン TDIに搭載されるエンジンは、2リッター4気筒ディーゼルターボ。最高出力193馬力(142kw)、最大トルク40.8kgm(400Nm)。
カタログに掲載された燃費は、15.1km/リッター(WLTCモード)と高速モード17.3km/リッター(WLTC-Hモード)。
一新されたインテリアでメリットの大きな点と残念な点

エクステリアだけでなく、インテリアも一新されました。こちらにはユーザーのメリットが大きなものが多い。
まず、シフトレバー。フォルクスワーゲンのEVのID.4やID.BUZZと同じ形式のものとなりました。シフトレバーがステアリングポスト右側から斜め上に“伸びて”いて、その先端のノブを前後にひねってポジションを変更します。

こうして文字にしたものを読んでもらうよりも、実際に使ってみる方がわかりやすく、一度で憶えるでしょう。
また、この方式のメリットはスペースの有効活用です。従来タイプと違って、左右シート間のセンターコンソール部分を他の用途に有効に使えます。ステアリンホイールの右斜め奥の空間というのはデッドスペースで他の何にも使われていないのですから、無駄に空いていた空間を有効活用しています。
ボルボEX30その他なども、この方式を採用しているのは頷けます。ティグアンが評価されるべきなのは、EVやPHEVなどの電動車でなくても、これを採用しているところです。良いものならば、どんどん使うべきだと思います。
ティグアンのその空いたセンターコンソールの中央部分には多機能のダイヤルとセレクターが設けられています。走行モードだけでなく、オーディオのボリュームなどが選べて調節できます。
メーターの表示も一新されました。多機能であり、同時に見やすい。大型化されたセンターディスプレイに投影される情報も良く整理されていて、すぐに引き出しやすい。

ただ、残念なのはパサートにもあった車内の機能的な意味のない装飾には疑問符が付いてしまうところです。助手席前のダッシュボードやドアパネルを飾っているグリーンの幾何学模様です。フォルクスワーゲンにみんなが期待している“道具感”を裏切っているからです。

200km以上走ってみて感じたこと
エンジンを掛けると、「EA288 evo」と呼ばれるディーゼルエンジンはアイドリングから明確に存在を主張してきます。排気音はクルマの外でも中でもはっきりと聞こえてくる。静かになった最近の他社のディーゼルでは珍しい。
しかし、さすがにアイドリングでの振動は皆無です。完全にシャットアウトされているところは昔のディーゼルとは一線を画しています。もちろん、煙も匂いもないのでご安心を。
走り出した感じも、いかにもディーゼルらしいディーゼルというものでした。アクセルペダルを踏み込んでいくと、じんわりと加速していく。加速感覚は最新の他車と遜色なく不満もないのですが、変速の際の加速の段差が明瞭に感じられます。“よっこらっしょ”と掛け声の一つも出したくなるくらいです。
マイルドハイブリッド化されたランドローバーやBMWなどのディーゼルなどは、この段差をモーターが補ってフラットでスムーズそのものの加速をします。それらの加速感を思い出すと、電動化されていないティグアンのこのディーゼルはオールドファッションといえるでしょう。

どこか懐かしささえ感じられるディーゼルです。でも、それが古臭いと断じ切れないのが面白かった。運転している実感が湧いてきて、心身が活き活きしてくる。ただし、この日も200km以上を走りましたが、それ以上の長距離を走り続けた場合の疲労感へ及ぼす影響はわかりませんでした。
制御が緻密になって乗り心地の快適性が増したというという触れ込みの「DCC Pro」という電子制御ダンパーの効能は確かに感じられましたが万能ではありませんでした。突起や段差などを走り越える時の鋭いショックも完全には防ぎ切れていなかったからです。ふつうの舗装路面ではしなやかで快適であることは間違いありませんが、購入の際には比較検討されることを勧めます。

コーナーが連続してアップダウンが多い山道走行ではボディが小ぶりに感じられました。視界に優れ、運転姿勢も自然だからでしょう。大きさの割に運転しやすいクルマです。
高速道路や自動車専用道を走行中の、車線からハミ出ないようにアシストしてくれるLKA(レーンキープアシスト)機能は優秀でした。ピンボールのように車線内を右往左往せず、前方から引っ張られているように直進していきます。
EVやPHEVなどには存在しない豊かな運転実感をもたらしてくれるところが美点となっています。発進してギアを変えながら速度を上げていくプロセスと時間の存在を自覚させてくれます。








