墨田区の歴史の深さを感じた散策コース。日本初の少年野球場ほか発見がたくさん!【プロハイカー斉藤正史の東京GREEN WAY FILE.19】 | アウトドア・外遊び 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2025.11.23

    墨田区の歴史の深さを感じた散策コース。日本初の少年野球場ほか発見がたくさん!【プロハイカー斉藤正史の東京GREEN WAY  FILE.19】

    墨田区の歴史の深さを感じた散策コース。日本初の少年野球場ほか発見がたくさん!【プロハイカー斉藤正史の東京GREEN WAY  FILE.19】
    プロハイカーの斉藤正史さんが、独自の視点で東京23区内の緑道を「GREEN WAY」として捉え直し、実際に歩いた足跡を紹介します。身近なGREEN WAYでも四季折々の見どころがあり、街の意外な歴史にふれることができる、かもしれません。

    今回は東京都墨田区の吾妻橋〜白髭橋を歩く「向島GREEN WAY」です。
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    19th ルート:向島GREEN WAY

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    前回はこちら↓

    400年前に築造された隅田川の「島」を散歩して感じたこと【プロハイカー斉藤正史の東京GREEN WAY  FILE.18】

    この連載のFILE.15で、台東区側の隅田公園を歩きました。その記事に書きましたが、隅田公園は隅田川の両岸にまたがっています。

    そこで、FILE.19は以前の歩き残し(?)である墨田区側の隅田公園を皮切りに、隅田川を北上して向島エリアまでめぐってみたいと思います。その名も「向島GREEN WAY」です(そのまんまでスミマセン)。

    今回のスタートは、浅草駅4番出入口ターミナス(=トレイルの起点や終点となるアクセスポイント)です。まずは、吾妻橋を渡って隅田川沿いを上流に向かって進んでいきます。

    浅草駅4番出入口ターミナス。

    吾妻橋を台東区側から墨田区側に渡ると、真正面に筋斗雲のようなアサヒビールのモニュメントがあります。そして、今回のルートではどうしたって視界に入ってくるスカイツリーが間近に見えています。

    吾妻橋を渡って墨田区へ。間近に見えるアサヒビール本社のオブジェ。

    吾妻橋を渡り切ると、アサヒビール本社前の遊歩道を進んで墨田区役所の方へ向かいます。すると、大きな銅像が目に留まりました。

    勝安芳像

    墨田区役所前の広場にある大きな像。これは、現在の墨田区に生まれた勝海舟の銅像です。台座には「勝安芳(かつやすよし)」と刻まれています。調べると勝海舟は何度か改名していて、「安芳」は明治維新後の名だそうです。

    では「海舟」はというと、号(ごう)です。号とは、文士が書画などを創作する際に使用する本名とは別の名称のこと。いわばペンネームのようなものです。勝海舟が本名じゃないなんて知りませんでした!

    勝安芳像。

    墨田区役所前の歩道を進んでいくと、隅田川沿いの遊歩道と、隅田公園へ向かう道の分岐が見えてきました。いつもなら川沿いの道を選択するところですが、今回は当初の予定通り隅田公園に向かいます。

    考えてみると、最近は川沿いの道ばかり歩いています(特に隅田川やその支流)。でも、当然ながらGREEN WAYは川べりや水辺にだけあるわけではありません。公園にも緑に覆われた心地よい木陰の道がありますし、実際、墨田区の隅田公園ものんびり歩くのに最適の場所でした。

    整備の行き届いた隅田公園。

    隅田公園の中央部にはひょうたん池があり、まるで日本庭園のような趣です。それもそのはず、歩き進めると「水戸徳川邸跡地」という碑がありました。ここはもともと水戸徳川家の江戸下屋敷・小梅邸があった場所で、その庭園をベースに公園を整備したようです。

    公園中央部になる「水戸徳川邸跡地」の石碑。

    ぐるっと池を回り込むように隅田公園内を進むと、正面に牛嶋神社が見えてきました。

    牛嶋神社

    860年(貞観二年)、慈覚大師の御神託により創建。かつては隅田公園に北側にあったものの、公園の工事のため1932年(昭和7年)に現在の場所に移転したそうです。

    境内には、自分の悪い部分と同じ牛の場所を撫でると病が治るという「撫牛」があります。ほかにも、本殿前には全国的にも珍しい「三輪鳥居(三つ鳥居)」や「狛牛」があります。

    牛嶋神社の三輪鳥居。

    30円釣り堀

    牛嶋神社を過ぎて隅田公園の北側にくると、なんと釣り堀がありました。しかも、利用料は2時間で30円と、まるで昭和のような価格設定(見学だけなら無料です)。

    なお、こちらの隅田公園の釣り堀は2026年度いっぱいで閉鎖の見通しだそうです。同じ墨田区内の大横川親水公園にある釣り堀と統合されるとか。この日は取材なので先を急ぎますが、閉鎖前に必ずまた来ます。スカイツリーから徒歩10分、浅草からも徒歩20分弱の場所に、こんなリーズナブルな釣り堀があったなんて!

    隅田公園 魚つり場。

    釣り堀からさらに隅田公園を進んでいくと、「高原基金の森」という案内板が出ていました。

    ユニ・チャームの創業者である高原慶一朗氏の寄付をもとに設立した公益財団法人高原環境財団が緑化事業を行っている場所だそうです。隅田川といえば八代将軍・徳川吉宗の命で植えたといわれるソメイヨシノが有名ですが、それとは別の品種のサクラなどの植栽整備を進めているとか。春先に訪れると、また違った雰囲気が楽しめるのかもしれません。

    「高原基金の森」の案内板。

    三囲神社

    「高原基金の森」に隣接して、三囲神社(みめぐりじんじゃ)があります。こちらの境内には、漫画「キングダム」でもおなじみの、秦の始皇帝の天下統一に貢献した蒙恬(もうてん)将軍の碑があります。

    また、三囲神社は三井家(三越)と関係が深く、日本橋の三越本店の屋上にも三囲神社があります。そして、ここ向島の三囲神社の境内には、三越池袋店が閉店した後に寄贈されたというライオン像も境内に鎮座しています。

    見どころ盛りだくさんな三囲神社。
    三越ゆかりのライオン像。

    三囲神社から隅田川と並行して走る墨堤通り沿いの緑地エリアを進んで行くと、「長命寺桜もち 山本や」が見えてきました。

    桜もち発祥の店

    桜もちの由来は、「山本や」の創業者である山本新六が1717年(享保二年)に土手の桜の葉を樽の中に塩漬けにしたものを用いたのが始まりだそうです。当時、すでに桜の名所だった「山本や」のある隅田堤(墨堤通り)は春先に多くの人でにぎわうこともあり、桜もちは瞬く間に人気となったとか。

    ちなみに、大学予備門の学生だった正岡子規は、数カ月「山本や」の2階を間借りしていました。そこで「花の香を 若葉にこめて かぐわしき 桜の餅 家つとにせよ」と詠んだそうです。

    残念ながら、取材で訪れた日はお休みでした。

    なお、長命寺には女優の木の実ナナ氏の歌碑がありました。なぜ?と思いましたが、向島出身のようです。

    「山本や」の先には、隅田公園少年野球場が見えてきました。入り口のゲートがいかにも昭和な雰囲気で、個人的にグッときました。

    その入口ゲートをよく見ると、一本足打法をかたどったレリーフが飾られています。あの世界のホームラン王・王貞治氏が、子どものころにこの球場で汗を流していたとか。また、この球場そのものが、昭和24年(1949年)にできた日本初の少年野球場だそうです。

    実は由緒正しい(?)隅田公園少年野球場。

    少年野球場を過ぎ、隅田川沿いの歩道に進みます。スケートボードパークがあり、その先の川沿いの道にはコンクリートの壁があります。でも、さほど高い壁ではないので、川から心地よい風が吹き込んできます

    しばらく進むと、堤通公園が見えてきます。子どもたちの楽しそうな声を耳にしながらさらに北上すると、白髭橋に到着しました。今回はここでフィニッシュとし、東武伊勢崎線の東向島駅から帰途につきます。

    白髭橋。

    浅草を出発しながら観光地ではなく墨田区に歩を進め、しかもあえて隅田川から少し距離をとって公園内などを歩いてきた今回の「向島GREEN WAY」。でも、パッと見はどこにでもあるように思える公園や神社、野球グラウンドにいくつもの歴史的な情報がギュウギュウに詰まっていて、とても満足のいく一日になりました。

    一見すると何の変哲もないような場所での、意外な発見。それもGREEN WAY散策の魅力のひとつです。ぜひ、前のめりにキョロキョロしながらGREEN WAYをじっくり味わってみてください。

    今回歩いたルートのデータ
    |距離約3.5km
    |累積標高差約10m

    今回のコースを歩いた様子は動画でもご覧いただけます。

    ●FILE.19「向島GREEN-WAY」 to FILE.20「南千住GREEN-WAY」

    斉藤正史さん

    プロハイカー

    2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。また、BE-PAL.netにて「TOKYO山頂ガイド」を連載。

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