ボルネオ島のサラワク州で、なかなか味わえない先住民族の家庭料理にたどり着いた! - 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2025.06.17

    ボルネオ島のサラワク州で、なかなか味わえない先住民族の家庭料理にたどり着いた!

    ボルネオ島のサラワク州で、なかなか味わえない先住民族の家庭料理にたどり着いた!
    マレーシアのなかでもボルネオ島中西部のサラワク州は先住民族の居住率が高い地域だ。湯本さんは1994年に京都大学の「サラワク林冠生物学計画」のメンバーに抜擢されて以来、この地域で探検調査を続けた。そして、街中の食堂では味わえない先住民族の家庭料理を食してきた。

    先住民族の割合が多いマレーシアサラワク州

    ボルネオ島は、世界で3番目の面積を持つ島だ。ブルネイという独立国と、マレーシアおよびインドネシアの3カ国の領土がある。カリマンタン島という名前もあるが、主にインドネシア側の呼び方である。

    マレー半島各州で構成される西マレーシアに対して、ボルネオ島のマレーシア領は東マレーシアと位置づけられている。サバ州とサラワク州の2州が存在し、面積としてはマレーシア全体の6割を超える。

    19世紀中葉のボルネオ島。1850年にイギリス政府がサラワク州に貿易会社ボルネオ・カンパニーを設立。その支配人を20年間務めたデンマーク生まれの冒険商人ルドヴィグ・バーナー・ヘルムズの著作より。’Pioneering in the Far East, and journeys to California in 1849, and to the White Sea in 1878’ 国際日本文化研究所センター所蔵

    そのひとつであるサラワク州は、マレーシア全体の37.5%の面積を占める。日本列島・本州の半分強の広さで、人口は約250万人である。サラワク州政府の見解では、27の民族がいて、人口比でいうと華人が26.7%、マレー人が23%、残りの約半分がサラワク先住民族ということになる。

    マレー人とは、マレー語を母国語とし、イスラム教を信仰している人々だ。マレーシア全体では、マレー人が人口の約半分、華人が4分の1を占めていることをみると、サラワク州は先住民族の割合が際立って多いことがわかる。

    7〜8世紀、中国の唐朝と中東のイスラーム帝国の出現によって、東南アジアでは海上交易が盛んとなった。その交易の担い手となっていたのが、華人とマレー人である。

    島嶼部では胡椒、丁香(クローヴ)、肉豆蔲(ニクズク)などの香辛料を産出し、中国やアラビアに運ばれた。現地華僑のネットワークは、毛細血管のようにボルネオ島やスマトラ島のほか、大小島嶼の河川沿いに張り巡らされていた。

    19世紀のボルネオ島サラワク州での水運の様子。運搬しているのは水銀とある。上記の古地図と同掲書より。

    焼畑耕作と狩猟採集を生業としていたダヤクと総称される先住民族が、熱帯雨林で沈香や安息香、白檀、燕の巣、ダマール樹脂などを採集し、それらは華僑やマレー人の交易ネットワークによって国際市場に提供され続けた。

    19世紀、サラワク州の先住民族が「ダヤク」と総称されていたことがわかる。内陸居住の民族を「陸ダヤク」、海岸居住の民族を「海ダヤク」と呼んでいた。上記の古地図と同掲書より。

    今日でもボルネオ内陸部の街は、華僑商人が交易場として拓いた場所が多い。焼畑耕作と狩猟採集を生業としていたダヤクと総称される先住民族が、熱帯雨林で沈香や安息香、白檀、燕の巣、ダマール樹脂などを採集し、それらは華僑やマレー人の交易ネットワークによって国際市場に提供され続けた。

    先住民族は狩猟採集と漁労を生業としてきた

    マレーシア・サラワク州でもっとも人口の多い先住民族であるイバン人。首長クラスの男性たちで、ツノサイチョウ(Buceros rhinoceros)やセイラン(Argusianus argus)の羽根で飾られた被り物を身につけている。サラワク州都クチンのガワイ・フェスティバルにて。ガワイはイバン人の収穫祭で、その期間に結婚式などもおこなわれる。

    サラワクの先住民族でいちばん多いのはイバン人で、人口の28.8%を占めていて華人よりも多い計算になる。さらにビダユー人(8%)、オラン・ウル(川上の人たち)系(6.3%)、メラナウ人(5%)などが続く。一部にイスラム教徒もいるが、大部分はキリスト教に帰依していて、彼らの住まいにはキリスト像が掲げられていることが多い。

    マレーシア・サラワク州のオラン・ウル系のカヤン人。世襲の首長と貴族階級を有する階層社会である。伝統的には女性は耳たぶに重い真鍮製の輪をつけるために長くたれ下がっており、腕や脚に精緻な入墨を施す。
    この写真は1992年に撮影したもので、貴族階級の子が庶民階級の子守りにビーズやタカラガイの貝殻で飾られた籠で背負われている。サラワク州ラジャン川上流のブラガにて。
    ボルネオ島に多い野生のヒゲイノシシ(Sus barbatus)。ボルネオでのおもな狩猟獣のひとつ。サラワク州バコ国立公園にて。

    サラワク先住民族は、もともと森で狩猟採集、海岸や河川で漁撈を生業としてきた人々なので、いまでも山菜や野生の魚介がメニューに上ることが多い。かつてはさまざまな野生動物が市場に並んでいた。

    しかし、いまは多くの野生動物は捕獲を禁止されており、保護から外れているヒゲイノシシ(Sus barbatus)やシカ類などのごく一部の動物は、自家消費のためだけに捕獲できる。野生動物の販売は禁止されており、「野生動物を売る側は5000リンギット、買う側は2000リンギットの罰金」と大きな看板が公設市場の脇に立っている。  

    サラワク州都クチンの公設市場で見かけた看板。サラワク森林局からの通知として「野生動物の売買禁止。野生動物を売る側は5000リンギット、買う側は2000リンギットの罰金」とマレー語で書かれている。1リンギットは、約34円。

    白身魚、野生動物、山菜を使う先住民族の慎ましい家庭料理!

    都市部の食堂は、大部分が華人系かイスラム系なので、先住民族の食を味わえる場所は限られている。そうしたなかで、メラナウ人の家庭料理であるウマイは、薄切りにした生の白身魚をリマウの果汁でマリネして、唐辛子やタマネギを加えたもので、南米のセビーチェに近い料理だ。

    メラナウ人の家庭料理であるウマイは、薄切りにした生の白身魚をリマウの果汁でマリネして、唐辛子やタマネギを加えたもの。左にスダチに似たリマウが並んでいる。サラワク州クチンにて。

    リマウとは、カラマンシーとかシキキツ(四季橘)とも呼ばれる柑橘で、サラワク州では日常的に料理や飲み物に使われる。山間部で非イスラム先住民族の家庭に招待される場合には、ヒゲイノシシやシカ類の炒め物をご馳走になることがある。

    ヒゲイノシシの炒め物。シンプルな塩胡椒と生姜味。サラワク州クチンにて。

    また野生のシダ植物のうち、ミディン (Stenochlaena palustris)や、パクーと総称されるクワレシダ(Diplazium esculentum)やメシダの一種(Athyrium esculentum)などの若いゼンマイのように巻き込んだ葉と茎をサンバル・ブラチャン(トウガラシと小エビの塩辛ペースト)と一緒に炒めたゴレン・ブラチャンとしていただく。これらの山菜は、街の華人系レストランでも食べることができる。

    ミディン (Stenochlaena palustris)をサンバル・ブラチャン(トウガラシと小エビの塩辛ペースト)で炒めたミディン・ゴレン・ブラチャン。サラワク州クチンにて。

    湯本貴和さん

    1959年徳島県生まれ。日本モンキーセンター所長。京都大学名誉教授。理学博士。植物生態学を基礎に植物と動物の関係性を綿密に調査。アフリカ、東南アジア、南米の熱帯雨林を中心に探検調査は数知れず。総合地球環境学研究所教授、京都大学霊長類研究所教授・所長を務める。京大退官後も旅を続け、調査を続け、食への飽くなき追求を続けている。著書に『熱帯雨林』(岩波新書)、編著に『食卓から地球環境がみえる〜食と農の持続可能性』(昭和堂)などがある。日本初の“食と環境”を考える教育機関「日本フードスタディーズカレッジ 」の学長も務める。

    ※とくに表記のない写真は湯本さんの撮影

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