今も手に入るけれど、技術や素材の進化とともにちょっぴり影を潜めています…。
そんな、キャンプ歴が長い方には懐かしく、そして新しいキャンプ層の方には新鮮に感じるレトロなギアを紹介します。
今だからこそ使う楽しみがあるかもしれませんよ!
今回は、保温も保冷もできない…。それでも世界中で60年以上愛され続けている、ナルゲンボトルです。
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1949年頃、実験室から生まれた「漏れないボトル」

ナルゲンの歴史は1949年、アメリカのニューヨーク州で医療・化学実験用の容器メーカーとして出発した会社ではじまりました。
1960年代。実験室のボトルを研究者や学生達がトレイルに持ち出すようになります。「これ、漏れないし軽いし最高だ」という口コミが広がり、1970年代になるとアウトドア向けに本格的に活用されます。後に「Nalgene Outdoor」が正式にスタート。そこからハイカー、バックパッカー、クライマーに爆発的に普及していきました。
1990年代から、世界中に連れて行った僕の相棒

僕がナルゲンボトルを使い始めたのは1990年代のことです。
最初は「丈夫なボトル」としての選択でしたが、使えば使うほど手放せなくなっていきました。
以来30年以上、このボトルは世界中の旅に同行してきました。パタゴニアの荒野、東南アジアの密林、アフリカのサバンナ。バックパックの中で、ザックのサイドポケットで、時にはテントの枕元で、いつも僕のそばにいました。
国の数でいえばおそらく45カ国以上。そのどこでも、ナルゲンボトルは一度も僕の要望を裏切りませんでした。
7000m級の山でマイナス20℃。オシッコボトルが湯たんぽになった夜

ナルゲンボトルと僕との最も過酷な記憶は、7000m級の高所での経験です。気温はマイナス20℃近く。テントの外はもちろん、中でも寒さは容赦ありませんでした…。
高所では夜中に外に出てトイレをするのは暴風と寒さで危険です(そして面倒くさい!)。そこで登山者の間では「オシッコボトル」として、ナルゲンをテント内での排泄容器にする文化があります。
僕もご多分に漏れずそうしました。そして、そのオシッコを入れたボトルがなんとも温かく、そのまま湯たんぽ代わりにして寝袋に入れたことでぐっすり眠っていました。
不衛生に聞こえるかもしれませんが、漏れないからこそ成立する話です。翌朝、ちゃんと(とここでは言っておきます!)雪や氷を溶かしてお湯や水をつくり、ボトルを洗い、そしてできた水をボトルに入れて行動する。ナルゲンはその用途の切り替えを、涼しい顔でこなしてきました。
保温も保冷もできない。だから万能。

ナルゲンボトルには保温も保冷の機能もありません。
これは欠点ではなく、むしろすばらしい設計思想ではないかと思います。保温機能がないからこそ、熱湯を注いでも本体が膨張したり変形したりしない。そして冷凍しても割れることはありません。このシンプル構造が活用の幅を広げてくれます!
個人的にナルゲンボトル最大の機能は次の2つにあると感じています。
水筒にも、ドライケースにもなる

液体が一切漏れないということは、中が常にドライな状態を保てます。だから逆に、ドライフルーツ、ナッツ、スパイス、コーヒー豆、マッチ、食料や大切なものをフードコンテナーとして入れることもできます。水を入れていたボトルをさっと拭いてスナックを入れる。そのいい加減さが、アウトドアシーンでは本当に助かります。僕はこの機能を家でも活用しています。
放熱するからありがたい

保温機能が無いおかげで、お湯を入れれば湯たんぽにもなります。シュラフの中に入れておくと、寒い夜でも朝まで温もりが続く。しかも翌朝には温くなったお湯で朝食を作れるとなれば、もう冬のキャンプやトレッキングではこれは手放せません。
30年一緒にいた相棒に、気の利いた言葉はいりません。
「なぜナルゲンなのか」と聞かれると、答えに詰まります。
今は保温も保冷も完璧にこなすボトルがたくさんあります。スタイリッシュなものも多いですからね。
でも僕は、このシンプルで飾り気のないプラスチックのボトルを選び続けています。
みなさんも、キャンプのお供にひとつ持ってみませんか?





