FILE.69は、江戸川区にある雷富士です。
第69座目「雷富士」
今回の登山口は東京メトロ東西線葛西駅南口
今回の登山口(最寄り駅)は、この連載で3回目の登場となる葛西駅。すでにFile.64「長島富士」で紹介済みなので地下鉄博物館に頼ることも出来ず、記事に書けそうな見どころ(ネタ)不足の不安の中、東京メトロ東西線葛西駅南口登山口をスタートしました。
今回は高架線下をまっすぐ進んでいきます。何か面白そうなものはないかとキョロキョロ探しながら歩きますが、特にさしたるものがないまま。高架線沿いから南に曲がりますが、ただただ住宅街が続いていきます。
さすがに行程の1/4を過ぎてもなお何もない状況に、かなり焦りが募っていきます。
希望のドッグカフェ?
そんな中、住宅街にドッグカフェが現れたのでした。これは助け船とばかりに写真をパチリ。気持ち少し安堵しましたが、いざ原稿を書くために調べてみると、変な言い方ですが、普通のドッグカフェでした。
個人的にはドッグカフェを見たのは初めてでしたが、残念ながら僕は異常な猫好きです。聞いた話では、生まれた時から家に猫がいて、物心つく前から夜は猫と一緒に、しかも最多で4匹と寝ていたそうです。現在も2匹の猫を飼う愛猫家。ドッグカフェにそそられるわけもありませんでした。そんなこともあり、このネタは広がらず…。
茫漠とした住宅街を進む
さらに進むと、東葛西さくら公園が見えてきました。しかし、公園に何か際立った特徴があるわけでもなく、とりとめのない住宅街が続くのみ。これといった面白い出来事が起こるわけでもなく、もうお手上げです。ここまで何もないまま来たのはTOKYO山頂ガイド史上初めてかもしれません。
雷香取神社の鳥居をくぐってみたものの…
大通りに出ると、壁越しにお墓の脇を通ります。結局何もないまま目的地に到着するのか。そんな失意の中、石造りの鳥居が見えてきました。とうとう終わりが目の前に迫ってきたのです。仕方なく鳥居をくぐり、雷(いかづち)香取神社へと入っていきました。
まずは奥にあるだろうと本殿に向かって右側から攻めました…何も見当たりませんでした。焦った僕は、本殿左側へ。すると、石灯籠のようなものが対になって、奥の方にあります。カメラをまわしながら近寄ると、富士塚ではありませんでした…。動画撮影用のINSTA360を付けた長い自撮棒を地面に付けると、僕は失意の中空を見上げるしかありませんでした。
これは空振りか…。富士塚を見つけられず、道中のネタもなく、失意に駆られていたのですが、ふと頭をよぎりました。あれ?富士塚があるのは真蔵院という寺院だったような…。お寺だから、鳥居はないはず。僕は、道中の450号線で壁越しにお墓を見ていたので、てっきり続きにある雷香取神社に富士塚があると勘違いしていたのでした。
雷香取神社
すでにTokyo山頂ガイドでも何度か登場した香取神社。江戸川に8ある香取神社のうち、今回で3つ目になります。結構な確率で香取神社が登場します。雷香取神社は1769年、郷土の鎮守として鎮座していたそうです。
何度か改築されていたそうですが、現在の神社は1990年の都市計画整理事業による道路築造工事に伴い神社の移転をよぎなくされ再建されたそうです。なお、「雷」は現在の町名には残されていませんが、旧東宇喜田村雷組の鎮守だったことから雷と付けられたそうです。
いざ目的地の真蔵院へ
雷香取神社を出て裏手に進むと隣接するように真蔵院がありました。そして、その右側に奥に、今回の目的地であり「雷富士」がありました。ようやくたどり着いた雷富士に、とりあえずホッとしたのでした。
真蔵院
1532年~1555年、空誉(くうよ)によって開山されたそうです。寺の本尊の不動明王は、嵐や雷を防ぐご利益があるとされ、波切り不動または雷不動と呼ばれています。特に漁師や船乗りなどの海に生きる人たちの信仰を集めていたそうです。
境内にある「雷いかづち不動明王石造道標」と「青面(しょうめん)金剛立像庚申塔(こうしんとう)」は江戸川区の有形文化財に。毎年2月に行われる「雷大般若」は江戸川区の無形民俗文化財に指定されているそうですよ。
雷富士
いわれなどは分かりませんでしたが、以前は香取神社と真蔵院の間に雷の富士塚があったそうです。先述したように1990年に都市計画整理事業によって雷香取神社が移転し、富士塚は真蔵院境内に移転されたそうです。
雷不動、雷香取神社、雷富士…。現在、地名として「雷」は残っていませんが、今なお寺院も神社も富士塚も健在であることは素敵ですね。このような形で残されていることで、その土地のかつての様子を知る手がかりにもなりますし。
いろいろ不安の多い道行きでしたが、終わってみれば良い山行でした。
次回は、江戸川区の中割富士です。
※今回紹介したルートを登った(歩いた)様子は、動画でもご覧いただけます。