2024年に踏破した2つのトレイルを振り返る【プロハイカー斉藤のナショナルシーニックトレイル踏破レポ vol.33(最終回)】 - 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2025.05.31

    2024年に踏破した2つのトレイルを振り返る【プロハイカー斉藤のナショナルシーニックトレイル踏破レポ vol.33(最終回)】

    2024年に踏破した2つのトレイルを振り返る【プロハイカー斉藤のナショナルシーニックトレイル踏破レポ vol.33(最終回)】
    トレイルの本場であるアメリカには、連邦政府によって認定されたトレイル(ルート)がいくつかあります。そのうち「シーニックトレイル」と呼ばれるものが全11ルートあり、総距離は約17,800マイル(約28,646km)におよびます。

    日本で唯一のプロハイカー・斉藤正史さんは、そんなシーニックトレイル全11ルートの踏破に挑戦中です。2024年9月から10月にかけては、アメリカ東部の「ポトマックヘリテージトレイル」と「ニューイングランドトレイル」に挑みました。斉藤さんによるアメリカのトレイルの最新レポート第33回にして最終回をお届けします。

    [Summary of the Long Trail in 2024]

    ポトマックヘリテージトレイル&ニューイングランド・トレイルを歩き終えて

    「シーニックトレイル」として、1983年に指定されたポトマックヘリテージ・トレイルと、2009年に指定されたニューイングランド・トレイル。この2つのルートはいろんな面で対照的なトレイルだと、実際に歩いてみて感じました。

    アメリカでは、連邦政府のトレイル法によって、「シーニックトレイル」と「ヒストリックトレイル」が定められています。ヒストリックトレイルは、文字通りアメリカの歴史をたどれるように整備された道です。その多くは道路(アスファルト舗装の一般道)で構成されていて、車で巡るイメージです。

    一方、シーニックトレイルは、直訳すると「景色の良いトレイル」。徒歩のトレイルともいわれていますが、僕が歩いたポトマックヘリテージ・トレイルは、自転車が通るバイクルートと重なる道が7割ほどもあります。そして、ポトマック川や運河、鉄道といった、アメリカの歴史をたどる道のりでもありました。

    それに対し、ニューイングランド・トレイルは、一般道も含みつつ、大半は徒歩専用のルートで構成されます。このトレイルは、人の手の入っていないウィルダネス(原自然)というよりは、都市部に近い公園や自然保護区の中を歩く道のりでした。

    ポトマックヘリテージ・トレイルを構成しているルートのひとつ、GAPトレイルにて。

    初心者にもオススメのポトマック・ヘリテージトレイル

    ポトマックヘリテージ・トレイルは、アメリカの首都であるワシントンDCが起点となるトレイルです。いくつもの細かいトレイルで構成されているのですが、僕は今回、C&O運河トレイル(C&O CANAL TOWPATH)、GAPトレイル(GREAT ALLGHENY PASSAGE)、LHHトレイル(LAUREL HIGHLAND HIKING TRAIL)の3つをつないだ合計約500kmの道のりを歩きました。

    前半のC&O運河トレイルは、わかりやすい徒歩と自転車だけのルートです。キャンプ場は無料ながら給水ポンプやトイレも備えられている上、わりと街に近いので食料の買い出しにも便利です。

    ロングトレイルの未経験者、特に海外でのトレイルにチャレンジしてみたいけどハードルが高そう…などと考えている人にこそ、C&O運河トレイルはオススメです。アクセスがしやすく歩きやすいだけでなく、ルート沿線の景観の変化なども含め、トレイルの醍醐味をコンパクトに楽しめる道のりだと思います。

    C&O運河トレイルを歩くのであれば、ハーパーズフェリーでぜひ1泊してください。この街はアパラチアン・トレイルと交錯しているので、さまざまなタイプのハイカーと出会えるはずです。

    スルーハイカー(中断を挟まずトレイル全線を一気に歩き通す人)もいれば、セクションハイカー(トレイルを区間ごとに分け、中断を挟みつつ歩く人)もいます。アパラチアン・トレイルを歩くハイカーが多く泊まるホステルでは、経験豊富なベテランに出会えるかもしれません。

    役立つ情報を教えてもらえるかもしれないし、何よりベテランのハイカーから聞く経験談はとても興味深いものばかりです。中には、おせっかいなうっとうしいハイカーもいますが…。

    ハーパーズフェリーのランドマーク、セイントペーターズローマンカトリック教会。

    同じポトマックヘリテージ・トレイルを構成するルートでも、GAPトレイルは宿泊場所が限られるものの、自転車との併用ルートで、自然のボリュームも多くなります。鉄道跡地を通るので歴史的な遺構と自然の両方をたっぷり楽しめる道のりです。

    LHHトレイルは、それなりに街と距離のあるバックカントリーを長い時間歩くことになります。これぞトレイルといった雰囲気ですが、何日も街と離れることに不安を感じる人もいるかもしれません。そういった人は、LHHトレイルをカットして、GAPトレイルからピッツバーグまで歩くこともできます。

    ハードなニューイングランドトレイルだけど

    一方、ニューイングランド・トレイルは、全体的にアップダウンが激しいので相応の脚力が必要ですし、経験を積んでいるハイカーにとってもけっこう厳しいトレイルです。この連載で何度もグチったように、トレイルの沿線は私有地が多いので、テントを張る場所も限られています。

    どの季節に歩くかによっても、トレイルの難易度は変わります。僕は紅葉を楽しみたいので秋に歩きましたが、その結果、給水スポットの多くが枯れていて、水の補給でとても苦労しました。

    そういったことを考えると、ニューイングランド・トレイルは、これまで各地のロングトレイルを歩いてきたハイカーがさらなるレベルアップのために研鑽を積むのに適した場所といえます。

    踏破するためには、クリアしなければならない課題がいくつもあるからです。逆にいうと、海外のトレイルが未経験の人がきちんとした計画も立てないまま踏み入れると大変な目にあうので、くれぐれも注意してください。

    もちろん、そんなニューイングランド・トレイルでも、旅行の合間に1日だけ、街からアクセスしやすい区間をデイハイクで楽しんでみるのはオススメです。ニューイングランド地方の紅葉はすごく美しく、デイハイクであればとても気持ちの良い時間を過ごせると思います。

    ニューイングランド・トレイルの途上にて。

    実は、僕がポトマックヘリテージ・トレイルとニューイングランド・トレイルを歩いていた2024年秋は、アメリカ大統領選挙の真っ最中の期間でした。そして、ちょうど帰国する当日に開票結果が出るというタイミングだったのです。

    僕は、メリーランド州、ウエストバージニア州、ペンシルベニア州、コネチカット州と渡り歩きました。僕が見た限りでは、小さな街ではたいていトランプ氏を応援するのぼりや看板が多かった印象です。中には、トランプ氏とハリス氏を支持する家が隣り合っているところもありましたが、いま現在どうなっているのでしょうか。

    トレイル中に見かけた、大統領候補を支持する看板。

    前回書いたように、トレイルを歩き終えた後でフィラデルフィアを観光する日もありました。映画『ロッキー』のロケ地めぐりを楽しんでいた際、フィラデルフィア美術館前にある広場ではコンサートかイベントの準備に追われている人たちを目にしました。

    後日テレビを見て分かったのですが、それはコンサートではなく、開票前日のハリス氏陣営の集会のステージだったのです。

    フィラデルフィアの街中では、テレビの街頭インタビューもたくさん収録していました。また、帰国するために駅に向かっているときにも、候補者を応援する集会やテレビ中継などを目にしました。

    何だか、大統領選によってフィラデルフィアという街そのものが浮足立つというか、ざわついている印象でした。

    投票日翌日に見かけたテレビ中継の様子。

    今回で「プロハイカー斉藤のナショナルシーニックトレイル踏破レポ」は、いったん最終回となります。ここまでご愛読いただき、ありがとうございました。

    ただ!

    この連載の初回に書いたように、アメリカには連邦議会によって承認されたシーニックトレイルが11ルートあります。全てのシーニックトレイルを踏破したアメリカ人は少なく、まして外国人ハイカーとなると、おそらく誰も達成できていません。

    これまで僕は、①アパラチアン・トレイル、②パシフィッククレスト・トレイル、③コンチネンタルディバイド・トレイル、④アリゾナ・トレイル、⑤ポトマックヘリテージ・トレイル、⑥ニューイングランド・トレイルを踏破。残り5ルートとなりました。

    この2025年の秋には、7つ目のシーニック・トレイルとなるアイスエイジ・トレイル(1900km)への挑戦を予定しています。また楽しいレポートが届けられるようにいろいろ準備していますので、引き続き応援をよろしくお願いします!

    ナショナルシーニックトレイル踏破レポのバックナンバーはこちら

    斉藤正史さん

    プロハイカー

    2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。また、BE-PAL.netにて「TOKYO山頂ガイド」を連載。

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