サウジアラビアの首都で見た「建物の崩壊」は空爆の現場…?いやちょっと待て! | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

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2026.05.25

サウジアラビアの首都で見た「建物の崩壊」は空爆の現場…?いやちょっと待て!

サウジアラビアの首都で見た「建物の崩壊」は空爆の現場…?いやちょっと待て!
まずは最初の写真をご覧ください。これは私が少し前にサウジアラビアの首都リヤドの中心街で撮影したものです。

こんにちは。オーストラリア在住ライターの柳沢有紀夫です。
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【柳沢有紀夫の世界は愉快!サウジアラビア・リヤド旅番外編

次の写真も同じく路地で撮影したもの。

左手前の建物が完全に崩壊していることがおわかりいただけるでしょうか。
奥の建物はかろうじて残っていますが、手前はほぼ跡形もない状態。

今の中東情勢を鑑みながらこれらの写真をご覧いただくと、こんなふうに感じるのではないでしょうか。「石油コンビナートなどの大規模施設への攻撃ばかりが報道されているけれど、サウジアラビアなどのアラビア半島諸国は市街地もかなり空爆の被害に遭っているんだな」と。

でもじつはこれらの写真は2025年11月に撮影したもの。つまりアメリカおよびイスラエルと、イランとの紛争が起こる前です。つまりイランによる空爆の跡ではありません。

ではみなさん、これは何が起きているのだと思われますか?

「シャッター通り」と「遺跡発掘中」の不気味な場所?

上記の写真は夕方4時半ごろに撮影したものですが、時計の針を1時間ほど戻してみましょう。

その日、私は「アル・アル・マスマク要塞」という名で、今は博物館として公開されている有名観光地に向かっていました(「アル・マスマク宮殿」とか「マスマク城」と記されることもあります)。

私がここを訪れようと思ったのは、スイス「ベリンツォーナ要塞」の記事のように城壁の上を歩いてみたかったからです。

地下鉄の最寄駅かの地上に出たのは午後3時過ぎ。ところがそこから要塞まで10分ほど歩く間ずっと、大通りの片側はいわゆる「シャッター通り」状態になっている商店街でした。

真昼間からなんかすごく寂れた不気味な場所に足を踏み入れたなあ。

そしてその商店街の大通りを隔てた反対側はというと…。

壁と鉄格子に囲まれていて、何も建っていない空き地。
地面を見ると砂利が盛り土のように置かれていたり、何らかのしるしらしき石板があったりします。

これを見たとき私は「再開発のために建物を壊したら遺跡が見つかったけど、予算がないから発掘できずにそのまま放置しているのかな?」と想像しました。でもこの記事にも書きましたが、この翌日これはイスラム教徒の墓地であることが判明しました。

先入観で判断するのは怖いですね。ちなみに「シャッター通り」も私の勘違いだったのですが、その話はまたあとで。

要塞でも勘違いが判明。涙

それでも無事に3時半ごろアル・マスマク要塞に到着。入り口にガイドらしき人が3人いたのですが彼らは全員英語をまったくと言っていいほど理解しません。

サウジアラビアでは英語を話す人もまだまだ少ないのが現状。予約サイトで見つけて設備の割には値段が安いからと2泊したホテルは、アラビア語圏の人たち御用達だったのかフロントにいる人たちですら英語をほとんど理解できませんでした。

ただアル・マスマク要塞内の展示にはアラビア語だけでなく英語の説明パネルもありました。

サウジアラビアの歴史などが展示がされていました。
こんなふうにちょっとした広場状態になっている場所もあります。
ところが城壁部分に上がる階段やハシゴはすべて封鎖されていました。

というわけでスイスの「ベリンツォーナ要塞」のように城壁の上を歩いてみるという夢、叶わず。もちろんこれは私の事前のリサーチ不足というか、思い込みのなせる業です。

ただアル・マスマク要塞に来た目的は「城壁の上ウォーク」だけではありません。じつはここ、夜にはライトアップされてそれはそれは美しいのだとか。

ただ時間はまだ夕方4時半。5時半ころから始まるであろうライトアップにはまだ時間があります。どこかで時間をつぶそうと思ったのですが、雑踏ではないところを歩きたかったので、なにげなく大通りの反対側に渡ってそのまま路地を進んでみたのです。

すると出てきたのが冒頭のような「崩壊した街並み」です。

屋根が完全に吹っ飛んでいるように見えます。
建物は残っていますが、手前はがれきの山。

「建物崩壊」の理由を英語が話せるガイドに聞いてみた

こんな崩壊した街並みを目の当たりにして私はかなり動揺しました。「これっていつの空爆だろう?」と。ただ前にも伝えた通り、ここを訪れたのは今回の紛争の前です。

ふと頭によぎったのが「っていうか最近リヤドで空爆なんてあったっけ?」という疑問。

たまにすれ違う人たちに聞いてみようとしたのですが、前述のようにサウジアラビアではあまり英語が通じません。3人に話しかけてみましたが、怪訝な顔をされるばかり。

しかもこんな風景の場所です。治安がいいとは思えません。あまり深入りするのもどうかと考え、路地を100メートルほど歩いてから引き返します。

もう一度要塞に戻ってみることにしました。時間は夕方5時前、暑いサウジアアラビアではこれから人手が増える時間。アル・マスマク要塞もじつはイスラム教の休日である金曜日を除くと夜9時まで営業しています。

ということはピーク時なので、先ほどとは異なり英語を話すガイドももしかしたら詰めているかもしれないと思ったのです。

予想した通り20代男性のガイドが英語で話しかけてくれたので早速聞いてみることに。

「リヤドに空爆があったのはいつですか?」

「リヤドに空爆?」

「はい、通りの向こうで空爆の跡を見たんですが」

ガイドさんが首を傾げるので「証拠」を見せることにしました。この記事の冒頭に載せた写真たちです。

壁は残っていますが建物の上部はご覧の通り。どう考えて空爆だと思ったのですが…。

するとガイドさんは…。

「ああ、これですか。これは空爆跡じゃないですよ。この建物たちは粘土で作られているので月日が経って自然に倒壊しただけです」

目が点になりました。というかこの思い込みの激しい性格、なんとかしたい。涙

そしてこのアル・マスマク要塞が「城壁の上」に来場者を登らせないのも同じ理由だそう。「ここも粘土で造られていてぜい弱だからです。倒壊すれば私たちの貴重な文化財が失われますし、何よりも来場者の安全が最優先ですから」

1865年に第二次サウード王国の宮殿として建設が始まったのですが、その後に街を占領したラシディ朝により1895年に完成。つまり完成から130年も経っています。

ちなみに「マスマク」とは「強固で厚い建物」の意味だそう。そして「アル」は英語のTheと同じ定冠詞。つまり「ザ・強固で厚い建物」ですが月日と灼熱の太陽にはかないません。

冒険気分でナイトウォークが楽しめるリヤド

さてそんなこんなで夜の帳(とばり)が降りてきました。

夜になるとライトアップされるアル・マスマク要塞。間接照明の色は赤、ピンク、緑、青、オレンジ、藤色などに変わります。
左端から3分1くらいの明るいところが要塞の入り口です。
要塞内部も昼間とはまた変わった雰囲気。

さてこのあと駅に戻って別の場所に向かおうとしたのですが驚きの光景が! 

来るときは「シャッター商店街」だったところのシャッターが一斉に開いていたのです!

あとで調べてみると真昼間は暑すぎて人出も減るので、スーパーマーケットやショッピングセンターなどを除く路面店では「朝10時から12時まで営業。しばらく閉めたあと16時から22時まで営業」というところが多いのだとか。

「シャッター商店街のさびれた街」というのもまた私の思い込みだったのです。笑

それはそうとこのリヤドという街、夜の照明が本当にきれいです。

「アルムラッパ歴史宮殿」というこれも博物館になっているところを夜の9時前に出ると、どこからか不思議な音色が。誘われるままに行ってみると…。

噴水のある広場でプロジェクションマッピングが行われていました。

しかも少なくとも20分以上! 翌日のことを考えて途中で帰ることにしたのですが、それでも堪能できました。

同じエリアにある別の公園では…。

月のような巨大な球体がBGMとともにゆっくりと回るオブジェがありました。

観光地を紹介するようなサイトにはたぶんまったく載っていないような場所で、思わぬ美しい光景に出会える。リヤドの夜の街歩きは冒険のようにワクワクします。

ビルの群の夜景もまたも見事でした。

この目と足で確かめたい!

「空爆跡」とか「シャッター商店街」とか「遺跡発掘中の場所」とか様々な思い込み連発の一日でした。でも「この目とこの足で確かめなきゃわからないこともある」「これからもあちこち出かけてみよう」。そう思わせてくれた1日です。

また「自然崩壊した粘土の建物群」も、「空爆跡です!」といった感じのフェイクニュースに使われる可能性があるとも感じました。

さら半年ほど経った今改めて振り返って思うのは…またこの美しいサウジアラビアを訪れたいということ。そして私はまだ足を踏み入れたことはないですが、イランにもイスラエルにもパレスチナにもきっと美しい場所があるはず!

武器ではなく、笑顔の人々が国境を行きかう。そんな正常な世の中に早く戻ってほしいものです。

【柳沢有紀夫の世界は愉快!】シリーズはこちら

Visit Saudi Arabia (サウジアラビア政府観光局のサイト)
https://www.visitsaudi.com/ja

TOURISE (2025年11月にサウジアラビアで開催された世界的な旅行業界カンファレンス。今回はここの招待で訪問しました)
https://www.tourise.com/en/home

著者画像

柳沢有紀夫さん

オーストラリア在住ライター (海外書き人クラブ)

1999年からオーストラリア・ブリスベン在住に在住。オーストラリア関連の書籍以外にも『値段から世界が見える!』(朝日新書)、『ニッポン人はホントに「世界の嫌われ者」なのか?』(新潮文庫)、『日本語でどづぞ』(中経の文庫)、『世界ノ怖イ話』(角川つばさ文庫)など著作も多数。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」のお世話係

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