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海外の旅

2026.03.15

台湾を、鉄道で一周する旅に出た。はじまりは首都、台北の街から

台湾を、鉄道で一周する旅に出た。はじまりは首都、台北の街から
旅行作家・写真家の山本高樹による、台湾写真紀行の短期連載が始まります。第1回は、旅のスタートとゴールの地点となる台湾の首都、台北(タイペイ)の街と食についてのレポートをお届けします。
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山本高樹の台湾鉄道環島旅・第1回:台北

いつか台湾を、じっくり、時間をかけて旅してみたい。以前からずっと抱いていた願望を、ようやく叶えることができました。

僕が初めて台湾を訪れたのは、2020年の1月初旬と、意外に最近のことです。その時はほんの1週間足らずの旅だったのですが、帰国便の機内でずっと、「いつかまた台湾に戻ってこよう。その時はもっと、じっくりと……」と考えていたのを憶えています。あいにく、帰国後から世界規模でコロナ禍が急激に深刻化してしまったので、台湾再訪のもくろみも、しばらく先送りにせざるを得なかったのですが。

時は流れ、2025年の晩秋。それまで抱えていたいくつかの書籍の仕事がようやく一段落し、旅の計画を実行に移せる時がやってきました。

計画といってもかなり大雑把で、首都の台北をスタートとゴールの地点にし、台湾の在来線である台鉄(台湾鉄道)に乗って、行く先々の街で何泊かずつしながら、反時計回りに少しずつ移動していって、台湾をぐるりと一周しよう……というものです。期間は、約1か月。各地で何をするかという目的や予定はあまり決め込まず、できるだけ、実際に現地に着いた時の気分で行動を選べるようにしよう、と考えていました。あれもこれも取材しなければ、撮影しなければ……と、追われるような気分の旅は、したくなかったのです。

唯一、個人的な旅の目的として考えていたのは、台湾各地の庶民的な食堂や屋台で売られている小吃(シャオチー、軽食)をいろいろ食べ歩いてみよう、ということ。現地のローカルな食文化を味わってこそ、理解できることもあるはず……というのは大義名分で、単に、台湾のうまそうなものをかたっぱしから食べまくりたい、という食い意地が張っていただけなのですが(笑)。

Old Door Hostel & Barのレセプション兼バーカウンター。

東京の羽田空港から、台北市街の近くにある松山空港に到着した僕は、台北駅の近くまでMRT(捷運)を乗り継いで台北駅の近くに移動し、あらかじめWebで予約していたOld Door Hostel & Barという宿に投宿しました。感じのいい若いスタッフの方々が応対してくれました。

最近の台湾、特に台北では、ホテル代の値上がりが著しく、一人旅で普通のシングルルームに泊まろうとすると、ちょっとびっくりするような値段になってしまいます。僕は個人的に、セキュリティと清潔さがある程度担保されていれば、宿のグレードには全然こだわりがないので、今回の台湾の旅では、多くの街で、比較的お手頃なドミトリー(多人数部屋)のある宿を利用しました。

最近の台湾の宿のドミトリーは、各ベッドが仕切りやカーテンできっちり仕切られていて、枕元にはライトと電源タップがあり、部屋にはWi-Fiや鍵のかかるロッカーなども完備されているなど、至れり尽くせり。カプセルホテルのような感覚で利用できます。その分、一昔前のドミトリー宿では当たり前だった宿泊者同士での交流は、かなり減っている印象も受けました。まあ、みなさん、ずっとスマホを見てますね(苦笑)。

古早味豆花でいただいた、豆漿豆花。

宿に大きな荷物を置いた後、街を散歩してみようと、外へ。台北駅から北の方に、ぶらぶら歩いていきます。途中、少し小腹が空いたので、このあたりでは有名な豆花(トウファ、豆乳スイーツ)の専門店、古早味豆花(クーザオウェイトウファ)に寄り道。冷たい豆漿豆花(ドウジャントウファ、豆乳の豆花)にアズキと芋圓(ユィユエン、タロイモ団子)をトッピングしたものをいただきました。優しい甘さで、ひんやり、つるん、ぷるん、と食べていて楽しい一皿。この日の台北はまだ地味に蒸し暑かったので、涼を取るのにちょうどいいおやつになりました。

台北大橋のたもとから、淡水河を眺める。

さらに北に少し歩いて、台北市街の西側を流れる川、淡水河(ダンシュイホー)に架かる台北大橋のたもとで、階段を橋の上まで登ってみました。淡水河は、下を歩いていると高い堤防にさえぎられて、姿があまり見えないのですが、こうして高い場所から眺めてみると、大きな川ですね……。橋の上を吹きわたる風が、汗ばんだ肌に心地よかったです。

台北随一の有名な問屋街、迪化街。

台北大橋のあたりから南に歩いて、台北随一の有名な観光スポットでもある問屋街、迪化街(ディーホアジエ)へ。長さ1キロほどの通りの左右に、バロック風の商館や日本統治時代の建物などが、入り混じって建ち並んでいます。各建物の通りに面した部分は、一階の部分が少し凹んでいて、通路のようになっています。これは、亭仔脚あるいは騎楼と呼ばれる構造で、台湾の街の建物ではよく見かけます。ここを歩くと、雨の日でもあまり濡れずに行き来することができます。

迪化街には、昔ながらの問屋が数多く軒を連ねる。

迪化街では、乾物や漢方薬の材料などを扱う昔ながらの問屋が健在な一方で、古い建物をリノベーションした瀟洒なブティックやカフェなども合間に入り混じっていて、そのハーモニーが独特な雰囲気を醸し出しています。ここでの買い物も楽しいと思いますが、ただぶらぶらしてるだけでも楽しいスポットです。

迪化街で人気だった、紅豆餅の屋台。

自分は食べはしなかったのですが、地元の人たちで行列ができている、おいしそうな屋台の店がありました。日本で言う今川焼のようなもので、台湾では、紅豆餅(ホンドウビン)あるいは車輪餅(チャールンビン)と呼ばれているそうです。

寧夏夜市で、牡蠣のオムレツ、蚵仔煎をいただく

毎晩にぎわいを見せる、寧夏夜市。

迪化街を南に歩き、宿のある方向に少し戻ってきた頃、次第に日が暮れはじめました。宿に戻る前に、早めに晩ごはんを食べてしまおうと、寧夏夜市(ニンシャーイエシー)へ。台北にはいくつかの場所に、たくさんの屋台が毎晩軒を連ねる夜市がありますが、その中でも寧夏夜市は市街の中心部近くにあることから、観光客にも人気の夜市です。

寧夏夜市界隈の有名店、圓環邊蚵仔煎。

寧夏夜市の通りに面した建物にある食堂の中でも、特に有名な店の前には、開店直後なのにすでに長い行列が。台湾の小吃の定番メニューの一つ、蚵仔煎(オアジェン、牡蠣のオムレツのような料理)で有名な店だそうです。この日の僕は時間も有り余っていましたし、お店の回転も意外と早そうだったので、並んでみることにしました。

蚵仔煎、蛤仔湯、米糕。

しばらく待った後に首尾よくありつけた、待望の蚵仔煎。小ぶりの牡蠣と青菜を、卵とサツマイモのでんぷんでとじた料理だそうです。もっちり、とろんとした生地の中にたくさんの牡蠣が埋もれていて、甘辛いタレも相まって、良い味……! 一緒に頼んだ蛤仔湯(ハマータン、ハマグリのスープ)は、びっくりするほど澄み切った旨味。米糕(ミーガオ、おこわ)と合わせて、もりもりいただきました。

いささか食い意地の張った僕の台湾での旅は、こんな風にして始まったのです。

山本 高樹さん

著述家・編集者・写真家

1969年岡山県生まれ、早稲田大学第一文学部卒。2007年から約1年半の間、インド北部の山岳地帯、ラダックとその周辺地域に長期滞在して取材を敢行。以来、この地方での取材をライフワークとしながら、世界各地を取材で飛び回る日々を送っている。著書『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』(雷鳥社)で第6回「斎藤茂太賞」を受賞。近著に『雪豹の大地 スピティ、冬に生きる』(雷鳥社)、『流離人(さすらいびと)のノート』(金子書房)など。

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