ネイチャーパークと雪原ハイキング。考えさせられた「地球温暖化」について【「海外書き人クラブ」お世話係・柳沢有紀夫の世界は愉快!】 | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

海外の旅

2025.11.11

ネイチャーパークと雪原ハイキング。考えさせられた「地球温暖化」について【「海外書き人クラブ」お世話係・柳沢有紀夫の世界は愉快!】

ネイチャーパークと雪原ハイキング。考えさせられた「地球温暖化」について【「海外書き人クラブ」お世話係・柳沢有紀夫の世界は愉快!】
海外旅行する楽しみってなんでしょう。

日本では見られないものを目にする。やったことがないことを体験する。それもあるのですが、「日本にいたら出会えない人と話せたり、気づきもしなかったことを知ることができたりする」ことでもあると思っています。

フィンランド、オーストリアと続いた「雪遊び王国」シリーズ、いよいよ最終回です。

どうも。オーストラリア在住ライターの柳沢有紀夫です。
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前回はこちら↓

【オーストリア雪山登山】現地の方はミリタリーブーツ装備!?【「海外書き人クラブ」お世話係・柳沢有紀夫の世界は愉快!】

冬と春のはざまも見つけてきました(雪遊び王国オーストリア旅・その7)

向かったのは「ギンツリングナトゥールパルクハウス(Ginzling Natur Park Haus)」。つまりはギンツリングという村にある「ナチュナルパークハウス」です。

ドイツ語は英語とスペルが似ている単語もかなりあります。

バスでどんどん高度を上げていきます。

そのギンツリングに向かうバスの途中で見たのが「キャニオニングベース」の文字。はい、渓谷で様々なことをして楽しむアドベンチャー型アクティビティの「キャニオニング」の拠点というか出発地ですね。

それとこの旅のコーディネートをしてくれた人に聞いたところ、川では「ラフティング」もできるそう。今回「雪遊びの王国」として訪れたアルプス・チロル地域のツィラータール地方ですが、山々に囲まれた場所なので「夏山遊びの王国」でもあるのですね。夏にまた再訪する楽しみができました。

そういえばマイヤーホーフェンの街はずれにもこんな横断幕があったな。

今日は昨日までと変わって曇り空です。でも吹雪いてなければいい天気、雷雨でなければいい天気。

そんなこんなでバスの終点、「ギンツリングナトゥールパルクハウス」停留所に到着。

「ギンツリングナトゥールパルクハウス」はこの自然公園のネイチャーセンターとかビジターセンターのような場所で、停留所から目と鼻の先のところにあります。というかビジターセンターの駐車場の中にバス停があるという感じです。

まずは博物館訪問

このビジターセンターにある小さな博物館でツィラータール地方の自然についてあれこれ学んだあと、スノーシューをつけて雪原ハイクに出かけるのが本日の予定。

ガイド氏の名前はパヴォル(Pavol)さんです。なんとスロバキア出身だそう。

パヴォルによるとここが「ネイチャーパーク」になったのは2001年と意外と新しいそうです。

ナショナルパークとネイチャーパークの違いとは

ここで一つの疑問が頭に浮かびました。「オーストリアにもナショナルパークってあるじゃないですか?それとネイチャーパークってどう違うんですか?」。直訳すると前者が「国立公園」、後者が「自然公園」です。

「ナショナルパークでは農業や牧畜業や狩猟といった人間が自然を変える活動はできないんです。ハイキングやトレッキング、ラフティングなどをしても自然に足を踏み入れますが傷つけず、植物なども持ち去らず、あるがままの形を変えずに帰るのが基本ですよね」。

日本でもよく言いますよね、「とっていいのは写真だけ」と。

「でもネイチャーパークでは農業や牧畜業や狩猟などの人間の営みも許されているんです」。なるほど。

「ナショナルパーク」と「ネイチャーパーク」の2種類があると聞いて気になったのが、「日本の国立公園と国定公園の違い」です。みなさんはご存じですか?

調べてみたところどちらも「自然公園法に基づいて環境大臣が指定した公園」という点は同じで、違いは管理者が前者は「国」で、後者は「都道府県」である点。位置づけとしては日本を代表するレベルのすごく傑出した自然は「国立公園」、それに準ずるレベルのものが「国定公園」になるそうです。その他に「指定」も「管理」も国ではなく都道府県である「自然公園」というのがあるとのこと。

拠点にしていたマイヤーホーフェンを中心としたツィラータール地方の立体地図も展示。

こういう立体地図で見ると峰々の急峻さがよくわかります。ちなみにツィラータールの「タール」とはドイツ語で「谷」の意味です。

さてこのギンツリング。人口1000人ぐらいの小さな村だそうですが、40~50人ぐらいのマウンテンガイドがいるとのこと。おもな産業は観光業で特に忙しいのは夏場。ハイキングとかだけではなく、ボルダリングとかロッククライミングとかも盛ん。そして先ほどのキャニオニングやホワイトウォーターラフティングも。

いちばん人気のアクティビティはハイキング。日帰りもありますが数日間、山小屋を止まり歩くようなコースもいくつも存在。最長はマイヤーホーフェンからスタートして8日間かかるもの。合計の高低差は8000メートルくらいだそうです。…体験したい。

博物館の展示の内容は発掘された鉱石が充実していました。

その他にこのあたりの氷河や地形がどうやって形成されたかとか、棲息する動物の説明。かなり聞き応えがありました。

「大きなデータ」だけでは見えにくい環境の変化

ツィラータール地方だけでも標高3000メートル以上の山が76峰、氷河は85ヵ所あるそう。そしてこのあたりの年間降水量は約1200ミリメートルで合計「量」的にはほぼ変わらない。

けれどもこの4年のうち3年は雨や雪の降る「頻度」が低くなって、約半分になったそう。つまり1回にまとめて降るようになったのです。

それはつまり「雨の降らない期間」が長くなったこと意味し、その間に土壌は乾燥。そうすると土壌が水を貯えておく「保水力」が下がります。

それで植生などの環境が変わってしまうばかりか、洪水の危険性も高まります。保水力が減ったうえに1回に降る量が増えるわけですから。

このあたりは「年間降雨量」という大きなデータを見ただけではわからない環境の変化です。これと同様、たとえ「年間平均気温」は変わらないとしても、「真夏日」と「真冬日」の数が倍になれば、きっと環境は変わります。

地球温暖化や環境破壊では細かいデータを見ていくとともに、地元の人が肌感覚で気になった違いなどにも注視していく必要があるのかもしれません。

博物館は大抵退屈してしまう「頭は5歳」くんなのですが、専門家から話を聞ける「ガイドツアー」だとがぜん面白くなります。この日も見学後の「おしゃべり」だけでも30分以上の時間が経っていました。

スノーシューでの雪原ハイク

そんなこんなでネイチャーセンターで1時間以上過ごし、11時40分には雪原ハイクをする「ブライトラーナー」に向かって出発。車で約10分の道のりです。

滞在拠点としているマイヤーホーフェンは海抜600メートルくらいで、「ネイチャーパークハウス」があるギンツリングは約1000メートル。でもブライテンダーナーはさらに高い海抜1200メートルくらい。だから3月も下旬に入ってマイヤーホーフェンやギンツリングに雪がなくてもまだ残っているという説明です。

とはいえこの冬の積雪量は普段の50パーセントくらいだとか。で、駐車場付近には雪はないのでスノーシューを装着せずに2~3分歩きます。

さていよいよ雪原ハイクを開始しようと思って地面に置いたら…。

渡されたのは両方とも左足用。笑 

とはいえ靴のように「どうしても履けない」という感じではないのでこのままスタート。
スノーシューは異常寒波のカナダで3回(笑)やって以来。

カナダ・アルバータ州の「森」と「平原」でスノーシュー!軍配は?【「海外書き人クラブ」お世話係・柳沢有紀夫の世界は愉快!】

道標もあります。
そして安定の「ガイド氏とフォトグラファー氏(田所優季さん)に置いてかれるパターン」。笑 

別に「両方左足用」のせいではないです。

最初の部分は下がアイスバーンというほどではないけれども氷っぽくなっていたので、歩くたびにガツガツと音がします。

氷雪の上を踏破しているぞ~という感じで気持ちがいい。両方左足用だとしても。笑
見晴らしのいい遊歩道です。夏のハイキングも楽しそう。

ところどころで春の息吹も感じられます。

「フキタンポポ」という花。ハーブティーにしたり、咳止めに胸に塗ったりするとのこと。

さてそんなふうに雪の上をザクザクと歩いてきたのですが…雪が全然積もっていなくて完全に土に顔を出しているところも。

ある地点で進行方向を撮った写真と。
来た道を振り返って撮った写真。土がむき出しです。

実際にスノーシューで雪原ハイクをやってみると

ちょっと無理やりスノーハイクをしてくれた感があります。なんたって今年暖冬で時期も3月下旬。とはいえこの時期でも普通に雪が積もっていることもあり、年によって違うそう。

ちなみにこのあたりの平地はそこまで雪が積もらないので、「クロスカントリースキー」を確実にやりたいのであれば1月がいいとのこと。

もちろん標高が高い山の斜面を利用して行う「アルペンスキー」であればもっと遅い時期までできますし、年によっては1年中滑降可能なこともあるそう。

そういえば「ネイチャーパークハウス」で「パヴォルの上司」氏がおもしろいことを言っていました。オーストリアのスキー場の約3分の1が経営的に順調で、3分の1がいわゆるトントンで、残りの3分の1はかなり苦しいそう。その理由の一つとして「標高」が挙げられるのだとか。

このツィラータール地方のスキー場はまず海抜1800メートルくらいまでゴンドラで登って、その後も別のゴンドラやリフトで2500メートルとか3000メートル以上まで登っていくことができます。暖冬などで海抜1800メートル地点に雪はなくても、その上にはあるので滑れる時期が長いのです。それがツィラータール地方の強み。

一方別のエリアのスキー場は最高地点が海抜1800メートルとかのところも多い。だから暖冬だと営業できる時期が短くなり、経営もむずかしくなるのだとか。

ハンターたちが使う小屋とのこと。

ただし猟師と言ってもそれを専門でしているわけではありません。別の仕事を持っていて、パートタイムで猟師をしているとのこと。

カフェとかレストランはまだ休業中。
ドアの横にあった木の年輪のアートのおじいさんがちょっと怖い。笑
「ちゃんと仕事をしているの図」をフォトグラファー氏が撮影してくれていました。涙
白銀の峰々を眺めながら進みます。
熱心にお仕事中のフォトグラファー氏を盗撮。

【パース旅】シリーズで盗撮合戦になった中華系シンガポール人ジャーナリストのヤエンに会いたくなりました。

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クロッカスの花が元気に芽吹いていました。

フォトグラファー氏がいっしょだからと思ってやめたけど、一眼レフのカメラ、持ってくればよかったな。

ネコヤナギの仲間。前言撤回。春はもうすぐそこです。

だけど折っていいのか、パヴォル?笑 あっ、「ナショナルパーク」じゃなくて「ネイチャーパーク」だからいいのかもしれませんね。…ここで伏線回収。笑

雪道を颯爽と歩くガイド氏とフォトグラファー氏。

なんか役割が違ってしまっているは気がしないでもないですが、それでもいいんです。それも旅。笑

雪解けが進んでいたためスノーシューハイクという意味では完璧ではなかったですが、季節の変わり目を感じられた素敵な時間でした。

そして環境について聞いた話がとても興味深かったです。気候変動は全人類共通の課題ですが、特にアウトドアを愛する「BE-PAL」仲間の私たちは注視していなければいけない。そんな気持ちに改めてなった旅でした。

本日のお宿

あっ、今回6連泊させてもらった宿の紹介を忘れていました。マイヤーホーフェンの街中にある「ノイエポスト」という宿です。

通りを挟んで本館と別館があり、私たちが泊まったのは別館のほう。

フォトグラファー氏が泊まった部屋からは本館が見られます。

こうやって全体を見ると、どことなく「増築を繰り返した由緒ある温泉旅館」の風情が。笑 屋上の温水プールも露天風呂に見えてきます。

部屋も広々。
一方、私がとまった部屋…。

写真正面に見える赤いところはサウナ。つまりサウナ付きの部屋です!

ちなみにベッドは右側の衝立の向こう側です。

私が泊まった部屋からは雪山も見えました。

メインストリートの端にあるのですが、スキー場への2つのロープウェイまではいずれも徒歩で10分程度。しかも超中心部でないのでバカ騒ぎとも無縁で心地よく過ごせました。食事も最高!

次に来るときもここに泊まりたいな。

【柳沢有紀夫の世界は愉快!】シリーズはこちら

取材協力:MOUNTOPOLIS (THE MAYRHOFNER BERGBAHNEN WORLD OF ADVENTURE)
https://www.mayrhofen.at/en/pages/mountopolis-starting-page-winter
マイヤーホーフェンエリアの「冬のアクティビティ」に特化したサイト。

Mayrhofen-Hippach holiday region
https://www.mayrhofen.at/en/
「夏のアクティビティ」も含むマイヤーホーフェンエリアの総合サイト。

オーストリア観光公式(冬のオーストリア旅行について)
https://www.austria.info/ja/inspiration/skiing-and-winter/

Nature Park House Ginzling
https://www.mayrhofen.at/en/stories/nature-park-house-ginzling

Neue Post(ノイエポスト)
https://www.neue-post.at/en

フィンエアー/Finnair
https://www.finnair.com/jp-ja
「日本から一番近いヨーロッパ」であるヘルシンキ経由で、欧州約70都市へ。羽田・成田・中部・関空の4空港就航。

写真/田所優季
旅行写真家、トラベル・ライフスタイルライター、ファッションデザイナー。

柳沢有紀夫さん

オーストラリア在住ライター (海外書き人クラブ)

1999年からオーストラリア・ブリスベン在住に在住。オーストラリア関連の書籍以外にも『値段から世界が見える!』(朝日新書)、『ニッポン人はホントに「世界の嫌われ者」なのか?』(新潮文庫)、『日本語でどづぞ』(中経の文庫)、『世界ノ怖イ話』(角川つばさ文庫)など著作も多数。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」のお世話係

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