2025年秋、斉藤さんはアメリカ東北部のウィスコンシン州にある「アイスエイジ・トレイル」に挑みました。その1,200マイル(1,900km)のアイスエイジ・トレイルに挑戦した様子を、斉藤さん自身によるレポートで紹介します。
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【プロハイカー・斉藤正史の「アイスエイジ・トレイル」レポート」vol.14】
■前回はこちら■
Ice Age Trail DAY14−17
高カロリーなハイカー向け(?)郷土料理
11日目の早朝、コーネルという街に到着。事前に約束をしていたアイスエイジ・トレイルのアライアンス(事務局)のビッキーというスタッフと、無事に会うことができました。
早速、ビッキーの車に乗り、コーネルの街中を通るアイスエイジ・トレイルのルートを案内してもらいます。「ここの分岐点は…」などと、後々歩くうえで気をつけるべきポイントを教わります。
一通り案内が終わるとちょうどお昼どきで、街の中心部にある「Dylan’s Dairy」という店でランチをすることに。ビッキーから「チーズカード」というウィスコンシン州の代表的な料理を勧められました。
しばらくして運ばれてきたのは、チーズのフライです。見るからにハイカロリーですが、ビッキーは「ハイカーにぴったりでしょ」と微笑んでいます。
チーズカード全般がそうなのか、この店のものがそうなのか不明ですが、衣が厚くてフリッターや天ぷらに近い感じです。いざ口にすると、めちゃくちゃおいしい!確実に太るなと思いつつ、完食してしまいました。
※後々知りましたが、チーズカード自体はチーズの素(凝乳)のことで、僕が食べた料理は正確には「フライドチーズカード」でした。いずれにしろ酪農が盛んなウィスコンシン州のソウルフードで、日持ちしないのであまり州外には流通しないそうです。

宿泊先は、ジュリー&パットご夫妻宅
昼食後は、今晩の宿泊先であるジュリー&パッド夫妻のお宅に。地下にあるゲストルームに荷物を置き、シャワーを使わせていただき、しばらく休息します。
閑静な住宅街の中にあって、ご夫妻の家は居心地抜群です。しかも、ハイカーを何度も受け入れているご夫妻から「コーネル滞在中は、うちに荷物を置いたままスラックパッキングすればいいよ」と、ありがたい実践的な提案をされ、お言葉に甘えることに。
ロングトレイルでは、基本的に重い荷物を背負って歩き通します。でも、宿泊先などの拠点にメインの荷物を置き、その日に必要なものだけを持って歩くこともあります。そうしたスタイルを「スラックパッキング」といいます。
ジュリー&パッド夫妻はロングトレイルに通じているので、僕にスラックパッキングを勧めてくださったのです。そんなご夫妻と過ごす時間は心地よく、当初は2泊の予定でしたが、結局3泊させていただきました。

新しいトレイルの整備と感謝
先述したように、コーネル近辺ではアイスエイジ・トレイルは街中を通っています。道路を歩くことに楽しさを感じないハイカーは多いのですが、それだけではありません。一部のルートは交通量の多い幹線道とも重なっているので、ハイカーからすると身の危険すら感じるのです。
そこで、ビッキーたちアイスエイジ・トレイルのアライアンス(事務局)の皆さんは、コーネル近辺のトレイルの改良を進めています。具体的には、森の中などに新たなトレイルをつくっているのです。完成はまだ先ですが、整備を進めている新しいトレイルを見学しないかとビッキーに誘われ、ジュリーとパッドともども足を運びました。
真新しい木造の橋があり、周囲の木の高さを50cmほどに切りそろえるなどしたルートが1マイル(約1.6km)ほど伸びていました。ゆくゆくは40マイル(約64km)以上、新しいトレイルを整備するそうです。
アイスエイジ・トレイルは計1,200マイル(約1,900km)ですが、アライアンス(事務局)には19の支部があるといいます。それぞれの支部の皆さんは基本的にボランティアで、トレイルの維持管理などに尽力してくださっています
しかも、ビッキーやジュリー&パッド夫妻のように、どうすればハイカーがアイスエイジ・トレイルで心地よい時間を過ごせるかということに心を砕いてくださっています。今までもトレイルエンジェル(ボランティア)のお世話になるたびに感謝してはいましたが、整備を進めている新しいトレイルを歩きながらあらためて頭の下がる思いでした。
心も足も開放的な1日
コーネル滞在2日目。ビッキーから、交通量の多い幹線道を通らなくてもいいルートを教わったので、そちらを歩くことにしました。ビッキーは地図も用意してくれていました。ありがたい!
僕はアイスエイジ・トレイルではミステリーランチのテラフレーム65Lを使っていますが、このモデルは雨蓋がアタックザックとして外せる仕様になっています。そこで、メインのバックパックはジュリー&パッド夫妻宅に置き、アタックザックだけを背負って歩きます。ちなみに、ジュリーが携帯用のランチを用意してくれました。再び、ありがたい!

この日歩くルートはほぼ道路なので、ブーツではなくコロンビアのシャンダルを履きました。前回も書いたように、アイスエイジ・トレイルのスタート直後からインソールとの愛称が良くないらしく、ずっと足に痛みを感じていました。でも、シャンダルは履き心地が良く、いい足休めになりました。この先は森の中も通るので、ずっとシャンダルを履き続けるわけにはいきませんが。

少し歩くとどんどん人家が少なくなり、のどかな風景が広がっていました。コーネルの周辺にはアーミッシュのコミュニティもあるそうです。アーミッシュは現在でも自動車ではなく馬車を利用していることで知られていますが、馬車に関する標識を見かけました。だから何だってことでもないですが…。

いつも旅立ち直前に抱く感情
結局、この日は朝8時に出発し、昼には予定のルートを踏破。特に寄り道もせず、午後1時には早々に帰宅しました。その後、のんびり休んでいると、パッドが雨樋に詰まった落ち葉を掃除していたので手伝うことに。すると、パッドから「こんなことをしてくれたハイカーは初めてだよ」といわれました。
僕としては一宿一飯の恩義を返すため、当然のことをしたまでです。というか、他のハイカーもトレイルエンジェル(ハイカーをサポートしてくれるボランティア)にきちんと感謝し、掃除くらいしてください。
この日の晩飯には、サーモンの料理をつくってくれました。事前に好物を聞かれ、僕がサーモンだと答えたからです。こんなにも気持ちのいいジュリー&パッド夫妻と翌日には別れるなんて…。
ハイカーとして数え切れないほど経験している別れですが、いつも旅立ちの前は胸がつまります。

※アイスエイジ・トレイル13日目の様子は動画でもご覧いただけます。





