野菜くずやコーヒーかすなどをミミズがゆっくり分解し、栄養たっぷりの堆肥へと変えてくれる、小さな土づくりの仕組みです。
毎日の台所から出る生ごみが、やがてふかふかの土になり、その土がハーブを育て、再び食卓へ戻ってくる。そんな小さな循環を見守る時間が、わが家ではひそかな楽しみになっています。
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沖縄の庭で見ていた、小さな循環
この循環の原点は、子どもの頃に暮らした沖縄にあります。母が料理をしたあとの野菜くずを父が庭へ運び、植物の肥料として土へ返していました。
叔父の畑には、手でぐるぐる回す手作りのコンポストもあり、それもごく当たり前の風景でした。
ただ、湿度の高い沖縄。庭に捨てた生ごみにはハエが集まり、においもなかなか強烈でした。子どもの私は、あまり近づきたくなかったのが本音。
当時は特別なことだと思っていませんでした。でも今振り返ると、そこには暮らしの中に自然と溶け込んだ、小さな循環がありました。
その後アメリカへ渡り、初めて知ったのが「ディスポーザー(生ごみ粉砕機)」です。シンクの排水口で生ごみを細かく砕き、そのまま流せる便利な設備。
わが家でも、その便利さにすっかり頼る暮らしが続いていました。

そんなある日、インスタグラムで偶然目にしたのが「ミミズコンポスト」です。正確には、アルゴリズムが運んできた出合い。
画面の向こうで、野菜くずが少しずつ土へと変わっていく様子を見ているうちに、「あの頃の循環を、もう一度わが家でも始められるかもしれない」と思ったのです。
小さな命との暮らしが始まる
インターネットでミミズコンポストの記事や動画を見ながら独学し、コンポストキットを購入したのが約2年前。
DIYが得意な夫がキットを組み立て、私はミミズの購入先探しを担当しました。
コンポスト用のミミズは、レッドウィグラー(シマミミズ)という種類。Amazonサイトなどでも購入できます。
でも、「その土地の環境で育ったミミズのほうがなじみやすい」と知り、同じユタ州内の販売店から注文することに。

本当は2000匹がおすすめだったのですが、その数の多さに少し怖じ気づいて、まずは半分からのスタートです。
「ミミズと仲良くなるぞ」と意気込んでいたものの、いざ目の前にすると、ちょっと緊張……。
水分を含ませたヤシガラ(ココナッツの殻を細かく砕いたもの)を底に敷き、その上へミミズたちをそっと移します。ここからミミズたちの新しい暮らしのスタートです。


発送前には販売店から、「生き物なので、届いたらなるべく早く新しい住まいへ移してくださいね」と、到着予定の時間帯を知らせる連絡がありました。

コンポストの蓋には、ミミズのお世話の基本がひと目で分かる使い方が書かれています。
コンポストに入れられるのは、野菜や果物のくず、コーヒーかす、細かく砕いた卵の殻など。肉や魚、乳製品、油の多いものは、においや虫の原因になりやすいので避けます。
柑橘類やタマネギなどは、入れすぎないよう少しずつ。
わが家では、野菜くずを小さくして床材の下へ軽く埋め、前に入れたものの減り具合を見ながら次を足します。たくさん与えるより、ミミズたちのペースに合わせるのがコツです。

土の中の変化を見守る楽しみ
今では、見るのも苦手だったミミズをかわいく思えるようになりました。素手でも触れるように。
生ごみの嫌なにおいはほとんどなく、手間も意外なほどかかりません。生ごみを入れない日は、「今日はみんな元気かな」と、つい様子を見に行きたくなります。
そして、小さな発見もあります。大量のアリが巣を作ったり、ダンゴムシが増えたり。そんなときはコーヒーかすをまくと、アリはずいぶん減りました。

コンポストの土を軽く混ぜて空気を通すたびに、「ミミズを傷つけてしまわないかな」と少し気を遣うようにも。いつの間にか、土の中の小さな命を気にかける暮らしになっています。
最初はコンポストの周りに、色鮮やかな一年草の花を育てていましたが、今は料理にも使えるハーブが中心です。
冬は氷点下まで冷え込むユタ北部でも冬越しできる種類を中心に選んだので、植え替えの手間もほとんどありません。
今年はパセリ、バジル、ペパーミント、ローズマリー、セージ、ネギが元気に育っています。


ハーブが育ち、食卓へ戻ってくる
さて、コンポストでできた堆肥は、裏庭の家庭菜園や庭のあちこちで活躍しています。
料理中でもすぐに摘めるように、キッチンのドアからポーチへ出てすぐの場所に、ミミズコンポストガーデンを設置しました。
パセリやバジル、ミントなど、使いたいときにさっと摘めるのがうれしいところです。
沖縄の実家で見ていた生ごみ処理のように、ハエが集まったり、強いにおいがしたりすることもありません(笑)。
たまに、ミツバチがこっそり隠れていることはありますが……。

料理が得意ではない私は、即席ラーメンに裏庭で摘んだネギを添えたり、朝摘みのペパーミントでミントティーを楽しんだり。ほかのハーブは料理好きな夫が、一皿を彩る香りとして使っています。


生ごみを減らしたいと思って始めたミミズコンポストでしたが、気づけば土に触れ、植物を育て、季節の移ろいを眺める時間が増えていました。
ミミズコンポストについて調べ始めると、方法や手入れの仕方など、情報はいくらでも出てきます。
でも、わが家ではあまりストイックになりすぎず、ミミズや土の様子を見ながら、できることを少しずつ。失敗もしながら、暮らしの中で楽しんで続けています。
台所から庭へ。庭から食卓へ。できることから少しずつ。
今日もわが家では、小さな命が静かに土を育てています。




