物価高の極北を生き抜く! できる範囲で始めるユーコン流・自給自足ライフ | ナチュラルライフ 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

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2026.09.05

物価高の極北を生き抜く! できる範囲で始めるユーコン流・自給自足ライフ

物価高の極北を生き抜く! できる範囲で始めるユーコン流・自給自足ライフ
物価の高いユーコン。食料品も日用品も、ほとんどのモノは南から運ばれてくるため輸送コストがかさんでしまうのです。
「貧乏生活するためにユーコンに移住したんじゃない! なんかもっと自然の中でのんびりスローライフするイメージやったのに」
でも、ちょっと視点を変えればそれが実現可能だと、ふとしたことから気づきました。今回は、日々の生活の中で無理なく楽しみながら自給自足を目指していく、自然豊かなユーコンならではのライフスタイルをご紹介します。

ユーコンでソト遊び暮らしを実現! 7年の軌跡 第13回

物価高は北に住む者の宿命か

2,000km近く離れた大都市から連日モノを運んでくれる長大なトラックの群れ。

ユーコンに移住した当初一番驚いたのは、物価が高いことでした。主な要因は、僻地にあって輸送コストがかかるということにあります。毎日の牛乳やボディソープ、Tシャツもスノーブーツも、果てはクルマや建築資材に至るまで、ほとんどのものはバンクーバーやエドモントンなど南から遠路はるばる運ばれてきます。買うもの一つ一つにトラックの燃料代や人件費が乗っかってくる。物価が高いのは、ここで暮らすと決めた者の宿命なのです。とはいえ、払えるものには限度がある。「何とかならへんもんやろか」と思っていた時、隣人の仲良しフランス人パパがドアをノックしました。

「少年と鮭」

周りの大人たちからの「おめでとう!」の声が響いた息子の初サーモン釣果。

「サーモンを釣ってきたんだ。ぜひ食べてくれ」

(サーモン? 自分で釣れんの?)と思いながらもバターでソテーされたお裾分けをいただきました。

「うっまー!!」

衝撃的なおいしさでした。身のぷりぷり具合、魚自体の味の濃さ、私の辞書のサーモンの項目を大幅に書き換えるおいしさでした。もちろんサーモンは普段から食べていましたが、それはあくまでスーパーで買ってきた冷凍のサーモン、南からトラックに載ってやってきたサーモンでした。

(こんなにおいしい魚が近くで釣れるなら、スーパーで買うの馬鹿らしいな)

すぐさま釣り道具を一式揃えてサーモン釣りに挑戦しました。場所はお隣アラスカ州のスキャグウェイ。川の中を覗き込むと、溢れんばかりのサーモンがいました。ルアーを川に落とすと、私より先に隣で釣っていた息子に当たりが来ました。小さな体で懸命にリールを巻く息子、暴れるサーモン。ヘミングウェイ著「老人と海」の世界観がそのまま、極北の川で再現されました。

格闘の末、息子は無事に立派なサーモンを釣り上げました。自分の食糧は自分で獲る。新たな“ユーコンの男”が誕生した瞬間だったと思います。彼が釣った魚が、その日の食卓に上がったことは言うまでもありませんね。

歯磨き粉も万能オイルも森にあった!

名著「ボレアル・ハーバル」。いつか日本語版も出ればいいなぁ。

一冊の本との出合いが、私のユーコンでの生活を一変させました。ビバリー・グレイ著「ボレアル・ハーバル」(極北のハーブ図鑑)です。森の中の小屋に住む友人から紹介された本ですが、ユーコンでそこら中に生えている何の変哲もない草や木の芽を、食べ物や薬、日用品に加工する方法がたくさん載っています。

(へー、その辺のもの取ってきたら何でも作れるやん。もう何も買わんで済むやん)

まず私が試してみたのは、ホーステイルというスギナに似た野草とミントの葉を粉末にして、塩と混ぜ合わせた歯磨き粉でした。ホーステイルをパリパリになるまで乾燥、本に載っていた分量通りに配合し、コーヒーミルを使って粉砕、それだけ。簡単にできました。一年以上毎日使っていますが虫歯にもなっていないし、磨き心地も気持ちいい。大成功だったと思います。市販の歯磨き粉要らずになりました。

また、第7回でご紹介したポプラの新芽、こちらはグレープシードオイルに1か月漬け込んで、体のあらゆる痛みに効く万能オイルに加工しました。ソフトボールチーム、Sushiスラッガーズのエースである私。1試合に1度はピッチャー返しを喰らい、あざを作って帰ってきます。ポプラオイルでマッサージ、次の日にはある程度痛みは引いています。リップクリームや虫刺されのかゆみ止めとしても効果は見られるので、かなり重宝しています。

1か月かけて新芽の成分をゆっくり抽出していく。

ほうじ茶が飲みたいけど売ってない……自分で作ろう

ほうじ茶の大ファンである私は、ユーコンに移住して以来その確保に苦労していました。こちらでは茶葉をローストして飲む文化がないため、日本から取り寄せるしかありませんでした。

「ほうじ茶もっと飲みたいな〜。ここにあるもんで作られへんかな〜」

また「ボレアル・ハーバル」を開いてみました。するとユーコンの野草にも、歴史的にお茶として飲まれてきたものがあるということがわかりました。その中から私が目をつけたのが、ラブラドールティーという名前の野草でした。その辺に生えていたものを適当にちぎってお湯に入れて飲んでみると、奥ゆかしい甘い香りのおいしいお茶になりました。さすが「ティー」と名付けられているだけのことはある。

「これほうじ茶にならへんかな?」

試しにフライパンを使ってほうじてみました。深緑色だった葉が、徐々に茶色に、そして黒に近い色になっていきます。急須に入れて、熱湯を注いでみました。思いの外、色は出にくい。さて、味はどうでしょうか?

ラブラドールティーの葉をキャンプファイアでほうじる。火加減が重要。

「待って、革命起きたかもしれん!」

ただでさえ甘味をもつラブラドールティーですが、ほうじたことによってそれがさらに増し、かつわずかな苦味も伴うようになりました。奇跡的においしい。しかし自分の舌が贔屓目に見てしまっているだけかもしれないので、いろんな人に試飲を依頼。大勢からおいしいと言ってもらえました。フランス人パパからも「セボン!」とお墨付きをいただきました。

「よし、これ商品化して野草のすごさもっと広めたろ」

大阪出身の自分の雑草魂に火がついてしまい、目下、商品化に向けて取り組んでいます。

できる範囲で自給自足

ラブラドールティーの葉。表は深緑色、裏は新芽のうちは白、夏を超え秋が近づくとオレンジに色付いていく。

少し工夫すれば買わなくて済むものがあるということを、人や本との出会いから学びました。必要なものは実は、すでに身の回りにある。確かに、釣り道具を揃えるだけのお金で魚は買えますが、自分で釣り上げたものにはそれ以上の価値がある。自分で作った歯磨き粉やほうじ茶も然りです。ユーコンの大自然は、人や動物が生きるために必要なものをすでに用意してくれています。それをできる範囲で享受し、自給自足していく。のんびりスローライフ、少しだけ見つけました。

著者画像

すけのゆうたさん

ライター

カナダ・ユーコン準州ホワイトホース在住。大阪府豊中市出身。アウトドア初心者ながら、大自然と日常が地続きのユーコンで暮らす。ポッドキャスト「すけのゆうたのYou来ん!?ユーコン」も配信中。

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