世界文化遺産に登録されているアルバニアの石の街=ジロカストラを、のんびり歩きながらご紹介します。
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さあ夏休み!行き先は見知らぬ街にある「おじいちゃんの家」

アルバニア南部、ジロカストラ。またの名は「石の街」で、道路は石畳、壁も屋根も石造り。どこを見ても石だらけ。町全体が入り組んだ斜面にあって、細い路地はまるで迷路のよう。夏の日差しとキツい坂道に早くもギブアップしそうな私の荷物を持って歩いてくれたのはミスターK。これまでアマゾン川やアメリカ各地で旅を共にしたベストパートナーです。
今回まず目指したのは、夏休みの行き先の定番として知られる「おじいちゃんの家」。

といっても、アルバニアには縁もゆかりもない私たちなので、残念ながら本当のおじいちゃんの家ではありません。そこは、『GRANDPA’S HOME(おじいちゃんの家)』という宿です。
自分自身の小学生時代を振り返ると、父方も母方も祖父母の家を訪ねる機会がなかった完全に都会っ子の私。代わりに、というわけではないけれど、近所にある幼馴染の祖父母宅へたまにお邪魔したことだけが思い出。他人でも、おじいちゃんの家はおじいちゃんの家なのです。

よくいえば温暖な、いや最近はヨーロッパの熱波も相まってやや熱すぎる気がするアルバニアですが、このようにブドウのツタを這わせて日差しを遮った、涼しいテラスが民家やレストランなどあちこちで見られます。見た目もよく、自然の力を借りた賢い工夫です。

おじいちゃんの家は素泊まりが基本ですが、500レク(約1,000円)の追加料金を払うと、おじいちゃんが朝食を用意してくれます。
四角い食パンをドサッと持ってきてくれるのがおじいちゃん流。チーズはバルカン地域でよくみられる白チーズで、ギリシャ式サラダにほぼトッピングされているフェタチーズのような味わい。主に羊乳が原材料で、塩水に漬けて熟成されるため、やや酸味と塩味が強いのが特徴です。
食べ慣れないチーズなのに、おじいちゃんが用意してくれることで、不思議と懐かしい気持ちになりました。

テラスを囲うブドウの実をつまみ食いしてみることに。まだ熟していないのか、それとも加工して使う品種なのか、やや酸っぱい。けれどイケる!

のんびり朝ご飯を食べながら、ブドウの葉の隙間を覗いてみると、ジロカストラのお城と時計台がありました。お城があるのは町で一番の高台の上。近くて遠いけれど、気合を入れて歩きます。
世界文化遺産の歴史地区、その特徴は?

歴史的な街並みを現代に引継ぎ、旧市街はユネスコの世界文化遺産として登録されているジロカストラ。オスマン帝国時代の建築様式が特徴で、屋根は瓦ではなく薄い石を重ねて作られています。重ね方がシンプルなおかげなのか、このようにカーブがかかった屋根も見られます。

石の屋根はかなり重たく、ちょうど屋根を修理中の家を発見しました。現代では、防水シートの上にスノコ状の支えを作って石を載せているようです。
ジロカストラ保全協会によると、一時期は職人の町として栄えたものの1991年以降にその多くが隣国のギリシャへ移住。修理の技術も徐々に失われ、今では廃墟化した建物も目立ちます。

このように建物の上部に出っ張りが設けられているのはバルカン半島の古い家の特徴で、景色と日当たりのいい上の階が寝室として使われることが多かったのだとか。私のような廃墟探索好きの人間にとっても、歩くのが楽しい町です。
お城の中は、まるで武器博物館

ジロカストラのお城の歴史はビザンツ帝国下の12世紀に遡り、15世紀にオスマン帝国がやってくると城壁を強化、そして19世紀に帝国の権力者でアルバニア出身のアリ・パシャの拠点になると最強の要塞とまでいわれたそう。
共産主義時代に入ると、古い牢獄は刑務所として使われ、地下にはトンネルとバンカーと呼ばれる大規模な核シェルターが掘られるなど、冷戦時代の歴史を残しています。
不時着した飛行機の謎

乗り物好きな童心をくすぐる展示は屋外にも続き、目に入った飛行機の残骸はアメリカ製。実は、謎多き飛行機なのです。
1957年、イタリアに向けて飛ぶはずが、天候もしくは機材トラブルによりコースを外れアルバニアの首都ティラナ郊外の空港に不時着。パイロットは帰国したものの、機体はアメリカのスパイを捕らえた勝利の象徴としてジロカストラに展示されることになったのだとか。
本当に事故だったのか、それともスパイだったのか、真相はわかりません。
急な石畳を登りやすくする工夫

おじいちゃんの家から見上げた時計台のすぐ足元には、見学者の出入り口とは違う門へ続く、急な坂道とトンネルがありました。

ジグザグに蛇行した急な坂道。石畳の表面は長い年月で削れたのか滑りやすく、そうでなくともゴムの靴が一般的じゃなかった時代は上り下りが大変だったのでは?と思いきや、実際に歩いてみるとちょっとビックリ。5cmほどの出っ張りが石畳を数歩進むごとに付けられていて、滑り止めも効果抜群です。
これがなければ、きっと荷車などは途中休憩もできなかったのではと想像します。
遺跡の屋根に登ってみよう

四方を山に囲まれたジロカストラ。夕暮れ時の景色は荘厳です。
周辺の山々で馬に乗るツアーもあるそうで、涼しい季節にはハイキングするのも楽しいはず。それはそうと、お城の屋根に人影が見えるような…。

ガッツリ脚立が掛けてありました。ちょっと細くて、ちょっと急な鉄の脚立。こんなところを登って大丈夫でしょうか?大きな声ではいえないけれど、実は私は妊婦さん。
「本当にこれ登っていいの?」と一抹の不安を覚えながらも高い所を目指すのは、いつだって楽しいものです。大人も、子供も、そして一人で両方が内在する妊婦だって。

長い歴史のなかで何度も増改築を繰り返したお城の屋根は、平たく歩きやすい形になっていました。わざわざ脚立を取り付けて見学できるようにしているのも納得です。

あくまで世界文化遺産に登録されているのはジロカストラの町の旧市街全体であって、お城単体が世界遺産というわけではありません。そういう事情が手伝ってか、お城の中は自由に歩き回れるエリアも多く、なんと屋根の上はかなりの高さなのに手すりも無し!
夏の思い出に不可欠な、ちょっとのスリルと冒険がありました。




