香港4大トレイル298kmを72時間以内に走破せよ―映画『フォー・トレイルズ 限界を超えてゆけ』過酷なレースを記録した監督を直撃 | 映画 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

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2026.07.07

香港4大トレイル298kmを72時間以内に走破せよ―映画『フォー・トレイルズ 限界を超えてゆけ』過酷なレースを記録した監督を直撃

香港4大トレイル298kmを72時間以内に走破せよ―映画『フォー・トレイルズ 限界を超えてゆけ』過酷なレースを記録した監督を直撃
総距離298km、獲得標高14,500mを制限時間内に走る。旧正月、香港の4大トレイル・コースで行われる「香港フォー・トレイルズ・ウルトラ・チャレンジ」。60時間以内にゴールした者は「完走者」、72時間以内なら「生還者」の称号が与えられるこのレースを追ったドキュメンタリー『フォー・トレイルズ 限界を超えてゆけ』が、2026年7月10日に公開されます。このウルトラ過酷なレースを、どう記録して映画にしたのでしょうか? ロビン・リー監督に聞きました!
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ロビン・リー監督●香港生まれ。アドベンチャースポーツ業界で10年以上のキャリアを持ち、The North FaceやHoka One Oneのプロジェクトにも参加。短編映画やコマーシャル作品を多数手がけ、『フォー・トレイルズ 限界を超えてゆけ』が初の長編映画。
レースの途中、コンビニの床に座り込むランナー。水や食料は自ら店や自販機で調達、原則自力で完走を目指す。

子どものころからサーフィン、スキー、スケートボードと、「アドベンチャー・スポーツが大好きだった」というロビン・リー監督。「(アメリカ)コロラドがベースの会社で毎年スキーの映画を撮っていた」という彼が、香港に暮らす兄からこのレースを聞いたことが、映画を撮るきっかけだった。

「過酷なイベントは世界中にありますが、このレースは順位を決めることが目的ではありません。勝つことではなく、ランナーが自分との戦いに重きを置くのがユニークだなと」

ユニークなのはもちろんだが、2日寝ないで3日に渡って走り続けるってどういうこと? なんでそんなことが可能に!? 信じられない! 誰もがそう思うことだろう。

「まさにそうです。300kmという距離がスゴイ! 寝ないなんてクレイジーじゃないか!? そうした興味を持ち、疑問を抱いたからこのプロジェクトをスタートしました。調べていくと、レースの間もちょっとは寝るらしい、じゃあどうやって寝るんだろう? とさらに興味が湧き、なぜそんな大変な思いをするのか? 走り切るための秘訣が? とどんどん知りたくなる。僕はそれまでもエクストリーム・スポーツを撮影してきましたが、どれもゼロから始めるわけではなく、まず100km走ったので次は100マイル(約160km)とか、少しずつ達成していきます。多くの人が一晩寝なかった経験があるでしょうが、二晩寝ないとなると大変で。そこで、そうしたレースをなんども経験したランナーに、二晩寝ないで走ると肉体やメンタルに何が起きるか? 話してもらったりしました。それを撮影しながら私自身が、彼らの肉体的、精神的な強さに驚嘆しました」

死力を尽くしたランナーは、ゴールとなる緑色のポストにキスして幸せそう。完走してもしなくても、「全員の人生が変わる」とあるランナー。挑戦、してみる?

映画を撮るにあたっては、「プランニングが大切」と監督。撮影チームの誰をどこにどう、何人配置すればいいか? 事前に4つのトレイルすべてのデータベースをつくった。

「もちろん予定通りにはいきません。有望なはずの選手が遅れたり、注目していなかった選手が速かったりして、そのたびに計画を変更しなければいけない。でも撮影する私たち自身がこのイベントの間、トータルで3~4時間しか寝られなくて。決断能力が怪しくなってくるんです。どうしようどうしよう!? と思いながらなかなか決められない。僕らも身体的にはもちろん、精神的にとても疲れました…」

2021年、招集されたのは過去のレースで「完走者」「生還者」の称号を得た18人。そのうち撮影許可をくれた13人を事前に撮影した。当然、事前の準備や彼らの人間性を記録していたランナーに、観客は感情移入する。なんとなく彼や彼女たちがレースを引っ張るのが当然と思って観ていると、映画の定石通りの展開にはならない。

「このレースにチャレンジする、スタート地点に立った時点で、ランナーはかなりの成功者なわけです。自分は出来ると信じ、走りきる固い決意を持っている。それでレースは最初、肉体的なチャレンジですが、途中からメンタルなものになっていきます。体って結構、耐えられるんですよ。“ウィルソン・トレイル”ではコースの途中で地下鉄の移動があるのですが、そうした交通機関を使うことで『このまま走ることを終えた方がラクかな…』と考えてしまう。それがメンタル的なバリアになるようです。そこを乗り越えるには肉体的なものだけでなく、精神的な強さが必要になります」

2つめのコース“ウィルソン・トレイル”の地下鉄での移動で、ぐったりとうなだれるランナー。そりゃそうだ…。

こんなシーンがある。あるランナーがレース中、山道ですれ違った一般女性から、「ひょっとして〇×さんですか!? SNS見てますっ。きゃ~!」みたいに声を掛けられる。香港でトレイルランナーは、有名人のような存在なのだろうか?

「このレース自体、少しずつ人気が上がってきています。僕らが撮影したのは10回目のレースでしたが、トレイルランニング自体の人気も、香港ではどんどん高まっていて。毎週末に3つから5つののレースが開催されるほどです。映画の中で声をかけられていた彼にファンが声をかけるというのは、実は撮影中、毎回起きていたことでした。だから僕らにとってそれは珍しいことではなかったのですが、映画のシーンは、本当にパーフェクトなタイミングだったなと」

12台のカメラを使って撮影した、約200時間ほどの記録を一本の映画にする。編集には2年を要し、香港電影金像奨新人監督賞を受賞、編集賞にもノミネートされた。

「もちろんこれはスポーツドキュメンタリーです。ふつうそうした映画は直線的な時間の流れがあり、何が起こったかを語っていきます。でもこの映画はかなりそれとは違い、予想外の展開がたくさんあるんです。ですから見終えたあとは、フィクションのような感覚を覚えるかも。第1幕、第2幕、第3幕という構成があり、ストーリーのアップダウンがあり、驚きが待っています。きっと想像とは異なる経験になるでしょう。ランナーやスポーツ愛好家、それとは無縁の方でも楽しめるエンターテインメントです。しかもそこからは人間の忍耐力、諦めないことについて、なんらかのメッセージを受け取るはずです。登場するランナーは誰もが本業を他に持つ、ごく普通の人びと。そんな人たちが、とんでもないことをやってのける。もしかしたらそんなことが、自分にも出来るかもしれない――。そんなふうに、自身の生活にも変化を与えてくれるかもしれません」

『フォー・トレイルズ 限界を超えてゆけ』
(配給:ザジフィルムズ)
●監督/ロビン・リー ●7/10~ヒューマントラストシネマ渋谷、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
(c)Lost Atlas Productions 

著者画像

浅見祥子さん

映画ライター

雑誌『BE-PAL』(小学館)、『田舎暮らしの本』(宝島社)、web「サライ.jp」(小学館)、「シネマトゥデイ」などで映画レビュー、俳優&監督インタビューを執筆。また、『芸能マネージャーが自分の半生をつぶやいてみたら』などの書籍ほか、赤楚衛二『A』、菅田将暉『着服史』、小関裕太『Y』、藤原大祐『FeaT.』、菅井友香『たびすがい』(すべてワニブックス)などでインタビューを担当。

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