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CINEMA 01
生きるべきか、死ぬべきか? アカデミー賞 主演女優賞受賞作
『ハムネット』
(配給:パルコ ユニバーサル映画)
●監督・共同脚本/クロエ・ジャオ
●脚本/マギー・オファーレル
●出演/ジェシー・バックリー、ポール・メスカル、エミリー・ワトソン、ジョー・アルウィン、ジャコビ・ジュープ
●4/10~全国公開


ラテン語教師のウィリアム・シェイクスピアは、鷹匠の女性と出会う。彼女の名はアグネス。森を愛して自然と一体化し、薬草の知識を持ち、未来を見通す力を持っていた。二人は恋に落ち、周囲の反対を押し切って結婚。長女が生まれると、ウィリアムは作家としての成功を求めて単身ロンドンへ。さらにハムネットとジュディス、男女の双子が誕生し、アグネスは家事と育児に奮闘。しかし、村に厄災が降りかかる──。
『ノマドランド』の監督最新作。見知らぬ男女が出会い、一瞬で永遠に触れるような恋に落ち、めまぐるしい日々のなかで家族を育む。現代にも通じる、ありきたりでミラクルな瞬間を、美しい映像とハッとさせる映像表現で綴る。観客が物語にのめり込んだころ、若い夫婦に降りかかる現実に心をえぐられることに。
「愛は死ぬのではなく、変容する」と監督。愛と死の真実、森の奥にある冥界の入り口のような闇。芸術はいかに生まれるのかを目の当たりにした気に。16世紀は遠く、シェイクスピアは偉大すぎる歴史上の人物。なのに、その物語は今を生きる人間にひりひりと迫る。
CINEMA 02
南米ペルー、映画ってスゴイ! 少年の映画との出合い
『今日からぼくが村の映画館』
(配給:ブエナワイカ)
●監督/セサル・ガリンド
●脚本/:セサル・ガリンド、アウグスト・カバ、ガストン・ビスカラ
●出演/ビクトル・アクリオ、エルメリンダ・ルハン、メリーサ・アルバレス、アルデル・ヤウリカサ
●4/17~新宿武蔵野館 ほか全国順次公開

アンデス山脈に囲まれた小村に家族4人で暮らす少年シストゥ。新学期初日、風に乗ってきた新聞で映画を知る。「写真が動く!?」と映画への興味を膨らませ、移動映画館と出合い、観てきた映画を再現するように村人に語るシストゥ。ところが移動映画館が姿を消す。
のどかでシンプルな生活、時代から切り離された素朴な人びと。これ! というものに出合った少年の純な喜びに、こちらまで心ワクワク。ペルーの山奥の移動映画館で観るブルース・リーってどんなだろう?
CINEMA 03
「岸辺露伴」シリーズの監督が新たに挑む岡山の妖怪伝承
『脛擦りの森』
(配給:シンカ)
●監督・脚本/渡辺一貴
●出演/高橋一生、蒼戸虹子、黒崎煌代
●4/10~TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

足を負傷し、うっすら雪の積もる森をさまよう若い男。女の澄んだ歌声に導かれ、古い神社へたどり着く。そこには夫婦にしては不釣り合いな年老いた男と若く美しい妻が暮らしていた。手厚い看病、温かい食事、心地よい寝床。「ああ、ずっとここにいられたら」若い男がそう思った朝、彼はある光景を目にする──。
冬の朝の澄んだ空気のような静寂、硬質な恐怖、密かなエロティシズム、森の美しさと底知れなさ。観るだけで心が浄化されそうな、濃密な味わいの61分。
※構成/浅見祥子
(BE-PAL 2026年5月号より)




