カリフォルニア州で唯一“クルマで走れるビーチ”として人気の「オセアノ・デューンズ」が閉鎖されたわけ | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

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2026.06.19

カリフォルニア州で唯一“クルマで走れるビーチ”として人気の「オセアノ・デューンズ」が閉鎖されたわけ

カリフォルニア州で唯一“クルマで走れるビーチ”として人気の「オセアノ・デューンズ」が閉鎖されたわけ
映画『F1/エフワン』のエンディングはカッコよかったですね。ブラッド・ピット演じる元F1ドライバーが海岸の砂浜をオフロード車で走るシーンには痺れました。私はふだんなら映画のエンドクレジットが流れ始める途端にさっさと席を立つのですが(日本では上映時間中に席を立つことはあまり推奨されませんが、アメリカではそれが普通です)、このときだけはじっと最後までシートに座ってスクリーンを見続けていました。

砂煙を上げて疾走する車、広い砂浜を縦横無尽に刻むタイヤの轍、その向こうに見える青い海。オフロード車ファンならずとも胸がワクワクする場面でした。

私の愛車はスバル・フォレスター。れっきとした全輪駆動車です。しかしながら、あの映画のように(ブラッド・ピットになりきって)砂浜をこの車で思い切り走り回ってみたいと思い立ったとしても、ここカリフォルニアでそれを実現することは容易ではありません。というより不可能に近いです。ほとんどの公共ビーチでは一般車両の立ち入りはできないからです。例外は警察のパトロール、あるいはライフガードの救急車両ではないでしょうか。

ブラッド・ピットがトラックを走らせていたのは「バハ・カリフォルニア」の海岸。同じカリフォルニアでもメキシコにある半島です。

米国側カリフォルニア州の中部、サン・ルイス・オビスポ郡にある「Oceano Dunes(オセアノ・デューンズ)」は、州内で唯一、一般車両が砂浜へ乗り入れできるビーチとして知られてきました。オフロード車やバギーで砂丘を走り、海辺でキャンプを楽しめる場所として、長年アウトドア愛好家に親しまれてきた場所です。

ところが今年、このビーチが裁判所命令による一時閉鎖措置が取られることになりました。その理由は絶滅危惧種である小型の海鳥「スノーイー・プローバー(Western Snowy Plover)」を保護するためと説明されています。
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「鳥取砂丘よりはるかに大きい」砂の世界

“2012-04-06 04-08 Big Sur 039 Oceano, Pismo Dunes Natural Preserve” by Allie_Caulfield is licensed under CC BY 2.0.

オセアノ・デューンズはロサンゼルスとサンフランシスコの中間あたりにあります。太平洋に面した砂丘地帯です。鳥取砂丘の約5倍の面積、といえばその広大さが想像できるでしょうか。

それでいて、オセアノ・デューンズには鳥取砂丘のような観光施設はほとんどありません。砂丘を見下ろすリフトもらくだのツアーもありません。自分の車で砂浜に乗り入れるか、あるいは自分の足で歩くことでしか、この延々と続く砂丘の風景に身を置くことはできません。

私はこの砂丘をほんの少しだけ歩いたことがあります。車が乗り入れできる区域は限られていて、私が行ったのはそれとは別の区域です。

駐車場に車を停めて、そこから海へと続く長~いトレイルを歩き、波打ち際に着いた頃には30分以上は経過していました。本当はそこから海を眺めながら砂の上を走ってみようと思っていたのですが、根性なしの私にはそれ以上は無理でした。キョロキョロと回りを見て、とぼとぼと帰路につきました。あまりの広さにノックアウト負けです。

オセアノ・デューンズ。

私は利用しませんでしたが、オセアノ・デューンズ周辺にはキャンプ場がいくつかあります。キャンピングカーにバギーやATVを牽引し、昼間は砂丘を走り回り、夜は砂浜で焚火を囲む。そんな豪快なアウトドアを楽しむ人たちは、少数ではありましたが、確実に存在していました。一種の海岸文化であったともいえるでしょう。

現在、その文化そのものが転換点を迎えています。

閉鎖理由は「絶滅の危機にある」小さな海鳥

“Western snowy plover” by USFWS Pacific Southwest Region is marked with Public Domain Mark 1.0.

今回の閉鎖の発端となったのは、「スノーイー・プローバー(Western Snowy Plover)」という小さな海鳥です。北米大陸の太平洋沿岸に分布し、絶滅危惧種に指定されています。

体長15センチほどの大きさで、砂浜に直接巣を作ります。当然、砂丘を高速で走る車両や人間活動は大きな脅威になります。

長年にわたり、環境保護団体はこの小鳥が住むオセアノ・デューンズに車が乗り入れることを、「州政府は絶滅危惧種保護法に違反している」と主張してきました。そして2026年、連邦裁判所がその主張を認め、一部区域の閉鎖を命じたわけです。

地元ではこの決定に反発する声が上がっています。オセアノ・デューンズ周辺には大きな都市はありませんし、有名な観光地でもありません。もっと率直に個人的な感想を述べるなら、「砂丘以外には何もない」土地です。

オフロード車で砂丘を走るためにやってきた訪問者は、キャンプ場、ガソリンスタンド、RVやバギーのレンタルショップ、レストランなどにお金を落とします。そうした収入が地域経済のかなり大きな部分を占めているであろうことは、この辺りを車で一回りすると一目で分かります。一時閉鎖が長引けば、その経済的影響はかなり大きなものになるでしょう。

そうした分かりやすい「自然保護 vs 経済」の構図以外にも、興味深い意見があります。

州立公園の広報担当者によると、オセアノ・デューンズにおけるスノーイー・プローバーの保護プログラムは成果を上げていて、個体数自体はむしろ回復傾向にあったということです。閉鎖は保護プログラムになんら寄与するものではなく、それどころかキャンプ場収入を減少させ、保護を継続するために必要な運用資金を失うことになると反論しています。

自然保護とアウトドア活動は折り合えるか

オセアノ・デューンズ近くの海岸。鳥はスノーイー・プローバーではない(たぶん)。

私は鳥の種類に詳しくありません。というかほとんど何も知りません。ビーチにはよく行きますので、スノーイー・プローバーをあるいは見たことがあるかもしれませんし、一度も見たことがないのかもしれません。もし出会っていたとしても、きっと他の鳥と見分けがつかなかったでしょう。

それでも、波打ち際や砂浜で鳥たちの姿を見ることは、散歩やビーチランの楽しみのひとつです。もし鳥たちの生存が車に脅かされているのなら、やはり人間の方が我慢をするべきかな、とは思います。車で砂浜に乗り入れができなくなったとしても、歩いていけないことはないのですから。

その一方で、州内唯一のフィールドを失った砂浜オフロード愛好家たちには気の毒な気もします。カリフォルニア州は長大な海岸線を持っているのだから、どこか一箇所くらい車を自由に走らせられる場所があってもよいのではとも思います。

変な例えかもしれませんが、カリフォルニア中のほとんどのビーチは犬を連れていくことが禁止していますが、所々に設置された「ドッグビーチ」と称するスペースでは犬が自由に走り回っているように。

それに相手は鳥です。自由に空を飛ぶことができます。もし巨大な砂丘地帯のある限られた区域だけに生息できなくなったとしても、別の場所に移ってもらうこともできるのではないでしょうか。

そのようなわけで、なかなかはっきりとした結論を述べることが難しい問題なのですが、せめて今後の展開を注意深く追っていきたいと考えています。州立公園局は「一日でも早い再開への努力を続ける」と宣言しています。

[追記]
2026年5月21日、オセアノ・デューンズで閉鎖されていた区域が再開されました。州立公園局は、利用者に対し、自動車の乗り入れが許可された区域のみを利用することや、制限速度を守って走行することなど、ルールの順守を呼び掛けています。

カリフォルニア州立公園局ウェブサイト内オセアノ・デューンズ案内ページ:
https://ohv.parks.ca.gov/?page_id=1207 

著者画像

角谷剛さん

米国在住ライター(海外書き人クラブ)

日本生まれ米国在住。米国で高校、日本で大学を卒業し、日米両国でIT系会社員生活を25年過ごしたのちに、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。日本のメディア多数で執筆。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)会員

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