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キャンプ好きにもうれしいステーションワゴンが復活

少し前まで、トヨタのクラウンといえば高級セダンの代名詞でした。
それが発展的に解消されて、「クラウン」の名の下に「クロスオーバー」「スポーツ」「セダン」「エステート」の4モデルが派生しました。その最後となる「エステートRS」に一般道と高速道路で試乗しました。
エステートとはステーションワゴンのことです。世界でも日本でも数少なくなってしまったステーションワゴンがクラウンに新たに復活しました。
SUVとワゴンを融合させた車高やや高めの設計

試乗したのは、パワートレインにPHEV(プラグインハイブリッド)が用いられた「RS」。価格は税込810万円。充電器から充電できないHEV(ハイブリッド)の「Z」だと、価格は税込635万円です。
クラウンエステートは、他のクラウンと較べるとやや車高が高められたステーションワゴンボディを持っています。
トヨタでは、このボディデザインについて「ワゴンとSUVを融合させた新しいデザイン」と謳っています。従来のステーションワゴンやエステートのイメージを求めるのであれば、広い荷室を確保するためにもう少しリアオーバーハングを延ばすところだと思いもしますが、新しい時代のエステートとしては、そこが「融合」なのかもしれません。
車内は、インテリア全体の配色が濃淡のブルー系でまとめられ、カッパーの差し色も効かせられて雰囲気良くまとまっています。高級感があります。他に2パターンあるようです。
EV走行距離は89km。後席の乗り心地も上質

2.5リッター4気筒エンジンにモーターを組み合わせたプラグインハイブリッドシステムの電気だけでの走行可能距離は89km。フォルクスワーゲン パサートや三菱アウトランダーなどより短く、ボルボXC90よりは長い。

走行モードは「ノーマル」と「スポーツ」に加え、「リアコンフォート」もあるのが特徴。後席の乗員の快適性を重視する設定です。それぞれ、後輪操舵システムとアダプティブバリアブルサスペンションシステムの制御を変更することで走行に違いを出しています。
試乗時は後席に誰も乗せていませんでしたが、運転席でもノーマルモードよりも車室内の揺れが少なく感じられ、このリアコンフォートモードの方が快適でした。しかし、ノーマルモードでも総じて快適な乗り心地が実現されていました。
高級車ゆえに気になった点

しかし、改善が望まれると感じられたのは、せっかくのEV走行で静かなはずなのに40km/hぐらいから速度を上げていくとタイヤノイズが車内に侵入し、音が反響してくる点でした。路面の舗装の違いによっても、反響が目立ってくることがありました。
それに関連して、メーターのデザインにも気になるところがありました。市街地や郊外の一般道を中低速で走る限り、ほぼ電気だけで進むわけですから、メーターパネル内の大きなタコメーター(エンジン回転計)は不要だと思います。PHEVよりも電気だけで走る距離が短く、エンジンも頻繁に掛かるHEV(ハイブリッド車)ならば必要性を感じます。
PHEVであるクラウンエステートRSのEV性能の高さから機能的にも不要ですし、HEVとの違いをアピールできる機会を自ら減じてしまっています。
他にも、メーターパネルは整理整頓が必要です。メーターパネル上で文字での説明が多過ぎます。購入したオーナーは乗っていくうちに機能と表示を憶え、慣れていきますから文章ではなくアイコンなどを多用するべきでしょう。
荷室にはデッキチェアやテーブルも搭載

ステーションワゴンとして重要となる荷物の積載量は、通常時が570リッター、リアシート格納時では1470リッター。

荷室をフルフラットにするための「ラゲージルーム拡張ボード」や「引き出し式デッキチェア」や「デッキテーブル」などが設けられ、荷物をたくさん載せ、上げ降ろししやすいような工夫が施されています。

それらの効力はありそうですが、果たしてどれくらいの頻度で使うのかは実際に購入して使ってみないとわからないでしょう。ステーションワゴンほど、実際での使われ方が問われるクルマもないのです。
運転支援機能を試してみて気づいたこと

クラウンエステートは最新の運転支援機能を備えています。ウインカーを出すと周囲の安全を確認してレーンチェンジをサポートしてくれるLCAS(レーンチェンジアシスト)も組み込まれています。空いた高速道路で有用で、操作に慣れれば安全を確保して、疲労を軽減させます。積極的に使いたい機能のひとつです。
また、不注意からの車線からのハミ出しを防いでくれるLKAS(レーンキープアシスト)を試してみましたが、他車に較べて作動時のメリハリが弱く、作動している時としていない時の違いが判別しにくかった。
音声入力の精度と使いやすさ

カーナビの目的地設定やエアコンの温度管理、音楽アプリの操作などにとても役に立つ音声入力による操作の成功率はだいたい50%ぐらいでした。ただし、これは言い方の馴染み具合も関係してくるので、使い続けると上がっていくでしょう。
クラウンスポーツでは装備され、使ったことのあるAppleCarPlayを試してみたかったのですが、試乗時間中に見付けることができませんでした。また、トヨタ製のインフォテインメント操作機能「T-コネクト」も試してみたかったのですが、試乗車では装備はされていたものの使用登録がされていなかったので試せませんでした。
T-コネクトは、ずい分前の登場時に試してみましたが、最近では他のトヨタ車の場合でもあまり話題に上ることがなくなってしまいました。現代での使い勝手などを試してみたいですね。
金子浩久の結論:アウトドアに出かけたくなる最新ステーションワゴン

いくつか疑問点や要改善点などはあるものの、国内外で減っていく一方のステーションワゴンの復活は大歓迎です。SUVとは違った使い方ができるので、次回は荷物や仲間を乗せてフィールドに向かってみたいですね。
