歴史の波を乗り越えて。中割天祖神社にある中割富士【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.70】
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    2024.08.05

    歴史の波を乗り越えて。中割天祖神社にある中割富士【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.70】

    歴史の波を乗り越えて。中割天祖神社にある中割富士【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.70】
    東京23区内、特に山手線の内側はビル街や飲食店街、住宅街ばかり。そう思っている人が多いかもしれません。でも、目を凝らせば東京都心にも「山」はあります。そんな東京の山の世界を、日本で唯一のプロハイカーである斉藤正史さんが案内します。

    FILE.70は、江戸川区にある中割富士です。

    第70座目「中割富士

    今回の登山口も東京メトロ東西線葛西駅南口

    この連載ではおなじみのスポット、東京メトロ東西線葛西駅南口登山口。

    前回に続き、とうとう4回目の登場となった葛西駅。実は今回の目的地である「中割(なかわり)富士」は、1度動画や写真の撮影をしています。その時は前回の雷富士と同じように、見どころを見いだせないまま終わったのですが、自宅に戻り作業していると、動画の一部が破損していることが発覚。今回、東京に来たタイミングで撮り直すことにしました。いったいどうなりますやら。

    前回は大通りをズドンと最短距離で行って何もなかったので、今回は商店街を通って少しでもネタになりそうなものを見つけられたら…と考え、駅を出て葛西駅西通りを歩いていくことにしました。

    さっそく庚申塔を発見

    葛西駅西通り。

    都内の山を歩いていると、多く見かける庚申塔(こうしんとう)。実はさほど古いものではなく、江戸初期辺りから数多く立てられ始めたそうです。

    庚申塔は、中国より伝来した道教(中国三大宗教の1つ)に由来する庚申信仰に基づいて建てられた石塔です。道教の教えでは、庚申(かのえさる)の日の夜に眠ってしまうと人間の体内にいる「三尸(さんし)」という虫が天に昇り、天帝にその人の日ごろの行いを報告し、罪状によっては寿命が縮まると言われていました。そのため、庚申の夜を徹夜して過ごす「庚申待ち」という行事が行われてきたそうです。

    きちんと管理されている葛西の庚申塔。

    雰囲気満点の町中華に昔ながらの精肉店

    そのまま道沿いに進んで450号線を渡り、少し進むと「仕出し・中華そば 山忠」の看板が目に入ってきました。この雰囲気、だいたい美味しいお店です。あとで調べると、中華そばと餃子が美味しいらしいのですが、五目チャーハンのビジュアルにも心惹かれました。残念ながら今回も営業前でした。また葛西に来るときは絶対に寄ってみたい。

    仕出し・中華そば山忠。

    その後、大通りで信号待ちをしていると、歩こうと思った新田仲町通りの脇に遊歩道のような道がありました。同じ方向に進めそうだったので歩いてみることにしました。なんと土の道。地図を見ると、どうやら中割川遊歩道の一部のようです。

    しばらく進むと中割川遊歩道の入口がありました。遊歩道に進まず、そのまま道なりに進むと…。

    「毎週金土トンカツ大サービス 350円」と書かれた紙が目に飛び込んできました。

    実はこちらは遊歩道側の裏の入り口、新田仲通りがお店正面になります。吉澤精肉店さん、あとで調べるとここも隠れた名店だそうです。お肉の販売もありますが、揚げ物やお惣菜が評判のお店だそうです。葛西奥が深いですね。

    裏の入り口。

    こちらが正式なお店正面。

    いよいよ中割天祖神社へ

    中割富士のある中割天祖神社に到着しました。ここは江戸川に16ある天祖神社のひとつです。中割天祖神社は、旧東宇喜田村中割の鎮守で、1649年、邵値阿闍梨(しょうちあじゃり)が天照大神の分神を分霊して迎えたのが始まりだそうです。

    もとは神明社とよばれ、1872年に天祖神社と改称されたそうです。この中割天祖神社も前回の雷神社と同じ道路区画整理事業で移転を余儀なくされ、現在の場所に移転したそうです。

    立派な構えの中割天祖神社。

    中割富士

    旧東宇喜田村の丸葛葛西講中によって、昭和初期ごろにつくられたそうです。1930年(昭和5年)の紀年碑がありました。天祖神社の移転にともなって現在地へ移築し、1989年に復元されたそうです。区画整理などにより消滅する富士塚もあれば、こうして残される富士塚もあるのですね。継承することの難しさを感じます。

    溶岩に覆われた中割富士。

    今回、撮影し直したことで、初めて歩いたときは特に特徴がないと思い込んでいた登山コースが、多くの名店を発見する楽しい道のりに変わったのでした。

    どこを歩くかで見える景色は随分違うのだと改めて感じた山行でした。コース選び、重要ですね!

    次回は、江戸川区にある安養寺(あんようじ)の富士塚です。

     ※今回紹介したルートを登った(歩いた)様子は、動画でもご覧いただけます。

    私が書きました!
    プロハイカー
    斉藤正史
    2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。最新情報はブログを。

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