風光明媚な隠れた観光スポット!?タジキスタンの山脈に点在する7つの湖をトレッキング
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    2024.07.11

    風光明媚な隠れた観光スポット!?タジキスタンの山脈に点在する7つの湖をトレッキング

    風光明媚な隠れた観光スポット!?タジキスタンの山脈に点在する7つの湖をトレッキング
    筆者は、以前「世界一汚い公衆トイレ」(https://www.bepal.net/archives/432559)が中央アジアの国、タジキスタンの山奥に存在しているという情報を察知し、ソグド州南部のファン山脈を訪問しました。

    ファン山脈とは、パミール・アライ(Pamir-Alay)山脈と呼ばれる3,000~5,000m級の山々で構成された壮大な山系の一部です。キルギス領土からタジキスタンを東西に横断し、ウズベキスタンにまで達する険しい山々です。

    タジキスタン西部の最大都市パンジャケントからのアクセスが比較的容易なファン山脈は、整備された(タジキスタン水準では)トレッキング・コースや美しい湖が点在していることから、欧米等からの観光客にとって、密かに人気の観光地となっています。

    美しい山々や景観に目もくれずに汚いトイレを血眼になって探しただけではあまりに勿体ない!そう考え、今度はのんびりと7つの湖 (タジク語: Ҳафткӯл, 英語: Seven Lakes) を巡るトレッキングに出かけることにしました。

    険しい山々に点在する7つの湖=Ҳафткӯлをめぐる旅

    最寄り都市パンジャケントまでのアクセス

    周辺の村々からも客が集い、活気のあるパンジャケントの市場。

    首都ドゥシャンベからパンジャケントへアクセスするには、3,000m級の山々に囲まれた険しい峠道を超えなくてはならず、所要時間も平均4時間を超える長時間ドライブとなります。一方で、ウズベキスタン第二の都市サマルカンドからの距離は直線で60km程度と非常に近く、道も平坦であるためアクセスが良好です。

    安全な越境ルートとして知られる「ジャルテパ-サラズム国境」。

    ウズベキスタンからアクセスする場合は陸路の越境を要しますが、少数の外国人旅行客を除き利用者の大半は買い物等で行き来する地元の住人なので、出入国の手続きは非常にスムーズです。

    世界遺産「サラズムの遺跡」。

    また、古都パンジャケントにはタジキスタン初の世界遺産、サラズムの原始都市遺跡があります。紀元前4000年~3000年頃に栄えていたとされる集落の遺跡を間近で観察できる貴重な機会です。驚くことに筆者が訪問した際には入場料無料で、何と貸し切りという状態でした。

    まるで「放置されている」とも取れるような管理状態に、タジキスタンらしさを感じつつも、貴重な世界遺産にお菓子の空袋等のゴミが放置されている現状には、やや寂しさを感じなくもありません。

    パンジャケントの経済もタジキスタンの多くの地域と同様に農業を主産業としています。収入水準が決して高くはないパンジャケントの地元民にとって、一古代遺跡に価値を見出し振興に注力することは容易なことではないのかもしれませんが、だからこそ観光資源としての活用法を見出して欲しいとも、勝手ながら思ってしまいます。

    第1~第3の湖をのんびりドライブ

    さて、気を取り直して湖にフォーカスを当てましょう。

    パンクを修理して空気を入れ直す運転手。

    1番目の湖が出現するまではやや距離があるため、乗用車で悪路を進みます。ドゥシャンベの相乗りタクシー乗り場でオフロード・タイプの車を選んで乗り込んだものの、道中ではタイヤがパンクするなどのトラブルに見舞われたため、やや不安が付きまといます。

    本格的な山道に入る前に予期せぬチェックポイントがあり、身分証の提示を求められました。観光旅行客の場合は旅券の携帯が必須です。

    第1の湖。

    チェックポイントから20分ほど走ると、1つ目の湖が見えてきました。第1の湖は非常に小さく、周囲を1周するのに10分もかかりません。水中の含有ミネラルが豊富であることから、陽の光の差し込み具合で、水面は鮮明なエメラルド・グリーン色に変化します。

    第2の湖。

    第2の湖も非常に小さな湖です。溜池と呼ぶ方が適切なサイズ感の湖であるため、干上がることがないのか心配になります。こちらも美しい色を放つことで知られているものの、両際が険しい斜面であることから、シャッターチャンスは1日の中でごく限られた時間です。

    第3の湖。

    やや水量が増え、初めの2つと比較すると、より湖感が出てきて良い感じです。

    第4の湖で天体観測

    最寄りのゲストハウスにチェックインして、荷を降ろします。

    趣のあるタジクの古民家。

    宿はドミトリーで1人あたり1200ソモニ2673です。タジキスタンの水準ではやや割高ですが、圏外の山奥で、温水のシャワーを浴びることができ、夕・朝食まで提供されることを踏まえるとお得感があります。夕食はサラダとスープ、朝食はトーストに卵料理が付きました。

    分別されたゴミ箱。

    廃棄物の削減やリサイクル率向上への取り組みが決して先進的であるとは言えないタジキスタンですが、筆者が利用したゲストハウスでは何とゴミの分別が行われていました特に地方において分別のゴミ箱を見かける機会は少ない

    よく見ると側面には援助団体のロゴが複数描かれており、EUの支援による、Oxfamや独伊系NGO主導の事業によるものであることが窺えます。ゴミの適切な処理は登山やトレッキングにおいて最も基本的なマナーであることから、トレッキング拠点である宿を対象とした当該事業には一定の効果がありそうです。

    第4の湖にまたがる集落を散策。

    人影は少ないものの、意外と家屋の数は多く、牛が放牧されているためあちこちでその痕跡が見受けられます。

    第4の湖。

    例年6月頃から数か月間の乾季に入るものの、豊富な水源を有するタジキスタンでは大河川の水が完全に途切れてしまうことはほとんどありません。水質への影響をどのように防いでいるのか定かではありませんが、水位の下がった湖面では牛たちが気持ちよさそうに徘徊していました。

    第4の湖から見上げる夜景 (画像提供: @photosuke.lorosae)。

    僅かな街頭しかなく、真っ暗闇に閉ざされる夜間は流れ星のオンパレードです。満点の星空を見上げながら、駐在国タジキスタンの開発課題について思いを巡らせます。何とも贅沢な時間です。

    第5の湖までハイキング

    翌朝、なだらかな砂利道を通り、集落と岩肌の峡谷を交互に歩みを進めます。

    第4湖と第5湖の間に位置する集落。

    時折、村の住人らしき子ども達が近寄り声をかけてきますが、どうにも意思の疎通には至りません。公立の学校では英語の授業がカリキュラムに組み込まれているはずなので、就学期にある子ども達の就学率はあまり高くないのかもしれません。

    村の人々と交流する峻典さん (保護者に承諾を得て撮影しております)。

    車を持たない村の人々はどのようにして生活物資を調達しているのか気になっていましたが、どうやらパンジャケント市内で仕入れてきた菓子類、米等の食料や生活必需品を村人向けに販売する商人がいるようでした。剥き出しのまま置かれてカチカチになったビスケットを一つかみ購入し、エネルギーを補給します。

    第5の湖。

    第5の湖も小さい上に、水深が浅く、泳いで軽く一周できそうな規模でした。上流の湖からの流入と、下流湖へと繋がる小川への流出が激しく、まるで人工的な水量の調整で存在しているかのようでした。Google Map上でも辛うじてその存在が確認できる程の小ささです。

    第6の湖を経て第7の湖でひと泳ぎ

    さらに上流を目指し、ようやく第6の湖に到達します。

    第6の湖。

    7つの湖で最大規模の面積を持つ第6湖ですが、こちらも第4の湖同様に水位が低下し、上流部の湖底はむき出しになっていました。

    第6の湖の湖岸から望む上流部。

    湖底を散策していると人工的に引かれた線や等間隔に建てられた木の棒があり、どうやら乾季の間は湖底はサッカーのフィールドと化すようです。

    主な交通・輸送手段はロバ。

    第6の湖の上流をさらに登ってゆくと、いよいよ道路が均されたものですらなくなり、車の通行が困難な様相になりました。放牧される家畜の他に移動手段として導入されたロバの姿をよく見かけるようになります。

    第7の湖で泳ぐ峻典さん。

    10:30をまわり太陽がしっかりと昇った頃に第7湖に到着しました。標高は2,400mということでやや肌寒く、決して湖水浴日和という気候ではありませんが、屈強なスポーツパーソンである峻典さんは「記念に」と第7湖で見事なクロールを披露していました。

    タジキスタンに関しては、目的無くして「ついでに立ち寄る」という状況はあり得ないかと思いますが、青の都サマルカンドにお越しの方は、是非隣国タジキスタンにも足を延ばしてみてはいかがでしょうか。

    備考: タジキスタンに住む人々の大多数はイスラム教徒であり、また、同国の政治情勢を鑑みて、顔を写真に収められることに難色を示される方が多いのが現状です。本稿の執筆にあたって敢行した取材旅行では、地元の方々に不安を与えてしまわないよう、事前に承諾が得られた場合を除きみだりにカメラを構えたりシャッターを押す行為は控えました。

    私が書きました!
    ウガンダ在住ライター
    村中千廣
    2024年よりウガンダ共和国在住。人道支援・開発援助分野でキャリアを構築しながら、赴任先での発見や観光情報を発信するフリーライター。訪問国・地域多数。これまでの中・長期滞在歴はニュージーランド4年、スイス3カ月、カナダ4年、レバノン6カ月、タジキスタン1年3カ月など。北海道出身、30歳、訳書に『地下鉄で隣に黒人が座ったら』。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)会員。

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