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    2025.06.29

    家族で31日間の海上生活!ヨットで南太平洋横断、アイランドホッピングの旅

    家族で31日間の海上生活!ヨットで南太平洋横断、アイランドホッピングの旅
    みなさんこんにちは。セーリングヨットSANTANAで旅する家族、前田家の麻裕です。エルサルバドルで最終的な整備を終えた前田家、ついにこの旅一番の長距離航海、太平洋横断に挑戦するときがやってきました。

    船で世界一周をするためにはいつかは越えなくてはいけない世界で一番大きな海、それが太平洋です。

    南太平洋の島々を巡るアイランドホッピング

    太平洋横断航海と聞くと、ノンストップ航海を想像される方も多いかもしれませんが、私たちのような旅するセーラーの多くが目指すのは、温暖な海が広がる南太平洋の島々を巡るアイランドホッピングです。

    そのため、太平洋を一気に渡るわけではありませんが、それでも出発地のエルサルバドルから南太平洋の島々の玄関口、フランス領ポリネシア諸島までの距離は、約7,000km!(今回の航路の場合)

    アイドリング中のクルマくらいの速度でのんびりと進むセーリングヨットの場合、1か月前後かかる距離です。

    遠い……。この世の楽園とはいえ、いくらなんでも遠すぎる!

    気持ちだけはすでに光の速さで楽園に到着しているのですが、体と船の方はのんびりと海を渡って行かなければなりません。

    太平洋に込められた意味を信じて……

    南アメリカ大陸から南太平洋までの西廻りの航路は、古くから数多の船乗りが通った海の道として知られています。

    令和のヨット旅は文明の力に助けられている部分も多く、先の航海者の困難とは比べものにはなりませんが、海の道の景色は当時と変わらず、ただそこに広がっているあたり、多くの人が船旅に浪漫を感じる所以ではないでしょうか。

    ちなみに『太平洋』という名前の名付け親は、かの有名なフェルディナンド・マゼランだという話は、意外と知られていないかもしれません。スペインを出港し、嵐の大西洋や難所で知られる南アメリカ大陸南端を抜けてきたマゼラン一行にとって、太平洋は驚くほど穏やかだったことから、ラテン語で平和の海を意味する「Mar Pacifico」と名付けたそうです。

    そこから、英語名で「Pacific Ocean」、日本語訳は天下太平(泰平)を意味する「太平洋」となったのだとか。今回はマゼランの言葉を全力で信じたい気持ちです。

    安全航海を祈って港を出るSANTANA。

    港の入り口は高い波が立ち、前後左右に揺さぶられ、出発早々貴重な食糧である卵を失うところでした。

    興奮、不安、恐れ、楽観、悲観、さまざまな気持ちがぐるぐると駆け巡りつつ、港はどんどんと離れていきました。

    ここから約1か月、陸地を見ることはありません。

    子供たちは、おそらくこの先の航海の長さをはっきりとは理解しておらず、通常運転。夫は、怖いとか不安という感情を前世に置き忘れてきてしまったタイプなので、私の不安を共有する相手はおらず、ただただ海を相手に経験したことのない感情に包まれました。

    長い旅の始まり。

    一人センチメンタル気分の私でしたが、出港してから三日ほど経つと船酔いも落ち着き、この生活に完全に慣れました(笑)。

    この記事でも度々同じ発言をしているのですが、人の適応力、特に「慣れ」とは時として凄まじい力を発揮してくれるものです。

    約140cmの巨大なシイラがフックに! 海の恵みに感謝。
    毎日のように船に飛び込んでくる飛魚。その都度美味しくいただいた。
     

    海が穏やかなときは、子供たちは通常通り午前中は学校タイム、午後はお菓子作りをしたり、映画を観たり、陸の生活と変わらない生活を送っていました。大人はこれに加え、夜間は3時間ごとの交代で見張りがあるため、常に寝不足気味ではありましたが、生活にリズムができ上がってくるとやってやれないことはないという感じでした。

    さらに、衛星通信のスターリンクを使用して海上でも常にネット環境にあったことで、旅の安全性が飛躍的に向上しただけでなく、生活面においてもそれまでの長期航海者とはまったく違っていた思います。

    航海中の電力は太陽光で発電。
    帆を上げる息子、太郎。
     
    ときおり遊びにきてくれるイルカの群れ。

    実のところ最初の2週間ほどは、スコール(熱帯のにわか雨を伴う強い風)に見舞われることもなく『この旅、もしかしたら楽勝なんじゃないの?』と内心気が緩みかけていたのでした。

    そんな心の油断を海の神様に悟られたのか、そこからは、連続するスコールや主人の体調不良、長期航海で頼みの綱の自動運転装置の故障等、トラブルが続きました。心配なことは最悪のタイミングでやってくるという、マーフィーの法則を実感した瞬間もありました。このあたりの数日間は、記憶がないほど慌ただしく過ぎていきました。

    強風よりも無風が怖い、長距離航海

    南太平洋航路で昔から船乗りに恐れられていたのは、嵐ではなく“無風”状態でした。

    ある程度までの強風であれば、帆の大きさを調節して対応することができるのですが、ヨットの動力である風がないことは、長距離航海においては死活問題。

    私たちはこの航海でなるべくエンジンを使いたくなかったので、赤道の無風帯はほぼ漂流状態でしたが、幸い数日で無事に乗り切ることができました。それにしても、このあたりの暑さは尋常ではなく、無限サウナ状態でした。

    私たちはいざとなればエンジンを使うこともできますが、かつての航海者がこの地帯を恐れる理由は十分すぎるほど理解できました。

    航海の終わりと新たな旅の始まり

    最後の一週間は、やや強い向かい風に変わり、ピンポン玉が弾かれるように船内のあちこちぶつかりながら過ごしました。

    ありがたいことに、こんな状況でも子供たちはまだまだ元気いっぱいでした。ここまでは『あとどれくらいで着くの?』という質問に対して必死で言葉を濁していましたが、残りの航程に希望が見えて来てようやく、一緒にカウントダウンを楽しめるようになってきました。

    迎えた31日目の朝。ついに捉えた目的地、マルケサス諸島ヌクヒバ島の島影。

    新鮮な土の匂い、空を行き交う鳥、陸に近づいたことを知らせるすべてのサインに家族全員の心が踊りました。

    子供たちは、早くも楽園から漂う新鮮なフルーツの匂いを嗅ぎ取っているようでした(笑)。

    大変なこともありましたが、“平和な海”はその名にふさわしい穏やかな時間を家族に与えてくれました。

    一秒でも早く地面を歩きたい衝動と同時に、家族だけで過ごした海の上の特別な時間の終わりに対して、微かな寂しさを感じ、我ながら驚きました。

    ヌクヒバ島の港へ入るSANTANA。

    この長距離航海にあたり、古いものから最近のものまで、数多くの航海記録を読み、頭の中では幾度となくこの海の道を通ってきました。ですが、実際に体験した航海は、それらのどれとも違うものでした。自分たちで挑戦してみて初めて、南太平洋横断の記録をものにできたという感覚が生まれました。

    それは経験の浅い私たちに、これからの旅への自信と勇気を与えてくれた気がしています。

    海と風、大自然の力を借りて走り切った、31日間。ついに南北アメリカ大陸を飛び出して、南太平洋での新たな旅が始まります。

    それでは、また次回!

    前田家さん

    旅する一家

    4歳の娘と6歳の息子を連れて、セーリングヨットSANTANAで放浪中の4人家族。2022年3月、カリフォルニアを出航。寄り道をしながらゆっくりと世界一周を目指します。海の上でサステナブルな暮らしを模索中。

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