
それが「エル・トルカル・デル・アンテケラ」です。何層にも重なった奇岩が連なる独特の風景の中に、いくつものトレイルが整備されており、子どもから大人まで気軽に楽しめるハイキングになっています。
キャンピングカーでヨーロッパを旅している私たち夫婦も、この風景に惹かれて訪れてみることに。今回は、その圧倒的な景観と、実際に歩いたハイキングコースのリアルな体験をお届けします!
エル・トルカル・デル・アンテケラとは?

El Torcal de Antequera(エル・トルカル・デル・アンテケラ)は、スペイン・アンダルシア地方のマラガ県に位置する自然保護区で、ユネスコ世界遺産にも登録されています。
標高約1,300mの高原地帯にあるこの場所は、実はおよそ1億5千万年前までは海の底にあり、海中に積もった石灰岩が地殻変動によって地表に押し上げられ、さらに長い年月をかけて雨風に浸食されたことで、現在のような複雑で個性的な岩の姿が生まれました。
現在では複数のハイキングコースが整備されており、ゴツゴツとそびえる岩々のあいだを歩きながら、壮大な自然の造形美をじっくりと楽しむことができます。
初心者から上級者まで、選べる3つのハイキングルート

エル・トルカル・デル・アンテケラには、訪れる人のスタイルや体力に合わせた多彩な楽しみ方が用意されています。初心者や子ども連れでも安心の短距離ルートから、本格的なロングコースまで、それぞれの好みに合わせて選ぶことができます。
【初級】グリーンルート
約1.5kmの周回コースで、所要時間は約1時間。ビジターセンター周辺を巡るショートルートで、初心者や家族連れなど、短時間で手軽に自然の造形を楽しめる入門コースです。
【中級】イエロールート
約3 kmの周回コースで、所要時間は約2時間。グリーンルートよりさらに奥へと進む構成になっていて、しっかり楽しみたい方におすすめ!岩の間を迷路のように進み、散策気分をたっぷり味わえます。
【中~上級】オレンジルート
往復約7km、所要時間は約3~4時間。下部駐車場から上部駐車場へ向かう直登ルートで、標高差もあり、ガッツリ歩きたい人向けになります。
アクセス
アンテケラの町から車で約15kmの距離にあり、アクセスも比較的簡単です。駐車場は、ビジターセンター前に無料の上部駐車場があり、キャンピングカー専用スペースも確保されていてとても便利です。しかし、週末や祝日などの混雑時にはすぐに満車になることがあるため、その場合は、下部駐車場を利用して、そこからハイキングで登るか、シャトルバス(往復2€)を利用することができます。
まるで“石の王国”!?エル・トルカル・デル・アンテケラを歩いてみた
今回私たちが歩いたのは、オレンジルートとイエロールートを組み合わせた全体で約8kmの見応えたっぷりのコースです。せっかくなら隅々までじっくり見て回りたくて、このルートを選びました。

スタート地点は、ふもとの駐車場からで、上部のビジターセンターへ向かって登ります。序盤は比較的なだらかな登りの牧道を歩きます。ほとんどの訪問者はシャトルバスを利用するか、上部の駐車を利用するので、徒歩で登っている人は私たちの他に3組ほどで、静寂の中をゆっくり進みながら景色を楽しむことができました。
道中には、マヌエル・グラハレス展望台やマジャダ・デル・フライレと呼ばれる円形の石造りの小屋など見どころもいっぱいです。

登っていくにつれて徐々に景色が変わり始め、周囲には巨大な奇岩がいくつも現れてきました。まるでパンケーキを何層にも重ねたように積み重なった岩など、「どうしてこんなカタチになったの!?」と思ってしまうほど不思議なものばかりです。

オレンジルートの終盤に差し掛かってくるとやや急登になってきますが、そこを登り切ると上部駐車場とビジターセンターに到着します。
いよいよ、“石の迷宮”へ!異世界感あふれるイエロールートへ

ビジターセンターには、トイレやレストラン、お土産ショップなどの施設が充実していて、休憩にはぴったり。中にはこの地域の地質や成り立ち、生き物たちについて学べる展示エリアやミニシアターもあり、いずれも無料で見学できます。

そしていよいよ、石の王国へ入り込む周回コースのスタートです。一歩足を踏み入れた瞬間、周りはユニークな形の奇岩がいくつも広がり、まるで違う惑星にでも迷い込んだかのようです。
進むたびに、続々と個性的な形をした岩が姿を現し、「塔のように尖った岩」や、「動物のような形をした岩」、「絶妙なバランスで立っている岩」。どれも自然がつくり出したとは思えないユニークな造形ばかりで、目の前に現れる岩の形を見比べながら歩くのも、このコースの楽しみのひとつです。

最初は初心者向けのグリーンルートから歩き始めるので、道はほぼ平坦で整備も行き届いており、非常に歩きやすい印象です。気づけばあっという間に、より景観がダイナミックなイエロールートへと突入していました。

このルートでは、ひときわ異世界感あふれる個性的な奇岩が続々と登場し、さらに岩の間を迷路のように進んでいきます。一人がやっと通れるほどの狭い岩の通路を抜けたり、岩のトンネルをくぐったりと、どこか冒険気分をくすぐられるルートで、まさに「石の迷宮」という表現がぴったりです。

途中でお昼休憩を挟みながら、じっくりと歩いて全体で3時間半ほど。最初のオレンジルートは少しアップダウンが多いですが、グリーンやイエローの周回ルートは比較的歩きやすく、小さな子ども連れの家族も楽しそうに歩いている姿を多く見かけました。


エル・トルカルでは、ルートの選び方によって自分のペースで無理なく楽しめるうえ、どこを歩いても迫力ある奇岩風景が広がっています。スペインを旅するなら、都会の喧騒から少し離れて、「石の迷宮」で地球の時間を感じる旅を体験してみてはいかがでしょうか?