三菱「トライトン」を激坂凸凹道で試乗!パジェロの遺伝子を受け継ぐ本格4WDの実力をチェックしてみたぞ
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    2024.04.10

    三菱「トライトン」を激坂凸凹道で試乗!パジェロの遺伝子を受け継ぐ本格4WDの実力をチェックしてみたぞ

    三菱「トライトン」を激坂凸凹道で試乗!パジェロの遺伝子を受け継ぐ本格4WDの実力をチェックしてみたぞ
    パリダカやWRCラリーで鍛え上げた三菱自動車の四輪駆動制御技術は世界的に高く評価されています。その最高峰の4WD性能を受け継ぐ新型AWDピックアップトラック「トライトン」が満を持して日本でも発売されました。価格やサイズ、オンロード、オフロードでの走行性能はいかに? 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員(BE-PAL選出)の金子浩久が試乗し、新型トライトンの魅力と気になった点をリポートします。

    世界的ベストセラーの4WDピックアップトラック

    トライトン

     外国でクルマを運転していると、日本では馴染みの薄いクルマとすれ違うことが珍しくありません。クルマの使われ方や求められるものなどが日本とは違うので、それが走っているクルマに現れてくるのでしょう。どんなクルマが走っているのかを眺めるのもまた、海外に出掛けた時の楽しみのひとつになっています。

     三菱のピックアップトラック「トライトン」も、日本よりも外国で良く見るクルマの一台です。個人的には、タイやマレーシアなどの東南アジアで良く見掛けた印象が強い。

    トライトン

     ピックアップトラックといえばアメリカが本場ですが、アメリカを走っているピックアップトラックはアメリカメーカーの巨大なものが幅を利かせていて、日本勢はその影に隠れてしまっているようです。そこへいくと、トライトンに限らずアジア圏での三菱車の存在感が大きなことにいつも眼を見張らされてしまいます。

     そのトライトンにフルモデルチェンジが施され、山梨県の富士ケ嶺オフロードコースで行われたメディア試乗会に参加してきました。

    トライトン

     あらためて説明を聞くと、トライトンはアジア圏だけでなく、なんと世界150か国で販売され、年間販売台数約20万台を誇る世界のベストセラーだったのです。どうりで外国での存在感が違うわけです。アジア以外でも、「オセアニア、中南米、中東、アフリカなどで高い知名度を誇り、シェアNo.1の国も多い」(メディア向け資料から)。

     新型トライトンは6代目。初代は1978年に登場して、累計販売台数は実に560万台超なのだとか。

     初代は2ドアの2人(もしくは3人)乗りでしたが、2代目以降は4ドアの5人乗りが踏襲されています。

    トライトンのサイズは日本の道で大丈夫?

    トライトン

     今回日本でも発売された新型は、薄く見えるLEDヘッドライトと武骨なフロントグリルの組み合わせが特徴的で、ひと目で見分けが付きます。

    トライトン

     そして、日本国内では大きなボディが周囲を圧倒しています。GSRグレードのサイズ(カッコ内はGLSグレード)は全長53605320)×全幅19301865)×全高18151795)ミリ。特に、全長の長さは特別です。試乗中に道の駅に立ち寄ったところ、駐車スペースの枠から大きくハミ出してしまいました。

    トライトン

     全高も高く、乗り込むのにはステップを踏んで登る感じです。

    トライトン

     しかし、走り出してしまうと、大きさはそれほど感じません。とても運転しやすい。自然な運転姿勢を構えられて、視界に優れているからでしょう。

    トライトン

     2.4リッターのディーゼルターボエンジンと6速オートマチックトランスミッションの組み合わせも、運転しやすさに貢献しています。

    トライトン

     最高出力150kW、最大トルク470Nmという出力以上に、停止状態からトライトンを力強く加速させます。

    トライトン

     メーターやセンターモニターパネルなどの視認性や各部分の操作性なども、最新の三菱車と変わりありません。

    トライトン

     カメラがクルマの周囲をモニターパネルに映し出す「マルチアラウンドモニター」(移動物検知機能付き)も、駐車時などの視界確保を補ってくれます。

     自分のスマートフォンを接続して使えるApple CarPlayandroidautoなども標準装備。機能や装備類は乗用車にほぼ準じていて、ピックアップトラックだからといって特別に身構える必要もありませんでした。

    ホールド感抜群のドライバーズシート(上)。後席も広々(右下)。後席の天井部にもエアコンの排出口がある(左下)。

     FCM(衝突被害軽減ブレーキ)やACC(アダプティブクルーズコントロール)などをはじめとする運転支援機能も充実していているので、それらは大きく安全運転に寄与しているはずです。最新のコネクテッドサービスも便利に使えることでしょう。

     一般道を普通に走っている限り、大きなボディや荷台の存在を意識させられることはありませんでした。駐車と取り回し以外では、日常的に問題なく使えることは間違いありません。

    パリダカで鍛えあげた圧巻のオフロード走破性! だけど…

    トライトン

     オフロードコースでの走破性は圧巻でした。4輪駆動システム「スーパーセレクト4WD-Ⅱ」を駆使し、急な上り下り坂や大きな岩が連続する道、凹凸が連続し、3輪しか接地しないような過酷な場所も難なく走り切りました。

    トライトン

    トライトン

    トライトン

    剛性が高く、メインテナンスもしやすい高強度のラダー(はしご形)フレームを搭載。

    トライトン後輪サスペンション

    後輪側は板状のサスペンションを装備。ピックアップトラックならではの風景!

    トライトン

    前輪側にはストロークの長いサスペンションを搭載している。

     助手席の三菱自動車のテストドライバー氏のアドバイスに従いながらだったので半ば当然なのですが、気になったところもありました。

     それは、ドライバーインターフェイスに関するものです。トライトンでは、「オフロード・オンロード両方とも、いつでもどんな状況でも安心してドライブできる!」(前出の資料より)と、その4輪駆動性能と走行性能が説明されています。

     ドライバーは、路面状況に応じて二つの選択肢を組み合わせなければなりません。「スーパーセレクト4WD-Ⅱ」のダイヤルによって駆動方式を選び、次に「ドライブモード」のボタンによって走行モードを選びます。

    トライトン

    4WDセレクターのダイヤルで4つの駆動方式を選ぶ。選べる駆動方式は「2H」(二輪駆動)、「4H」(4WD・センターデフで前後輪の駆動力を最適配分)、「4HLc」(直結4WD)、「4LLc」(ローギア直結4WD)。

    トライトン

    駆動方式「4H」では、「ノーマル」、「グラベル」(砂利道)、「スノー」(雪道)を選ぶことができ(写真上)、駆動方式「4HLc」では「ノーマル」、「マッド」(泥濘)、「サンド」(砂地)を選べる(写真中・下)。ローギア直結4WDの駆動方式「4LLc」では「マッド」「サンド」に加えて「ロック」(岩場)モードを選択できる。

    2H」、「4H」、「4HLc」、「4LLc」という4つの駆動方式と、「NORMAL」、「ECO」、「GRAVEL」、「SNOW」、「MUD」、「SAND」、「ROCK」という7つのドライブモードをどう組み合わせれば最適なのか?

     それぞれをどう組み合わせれば良いのか、何のガイドもヒントもないのです。テストドライバー氏が助手席にいなかったら、戸惑っていました。

     ランドローバー各車の「テレインレスポンス2」や、ベントレーやランボルギーニ、ポルシェなどフォルクスワーゲングループの各車が採用している走行モード選択ダイヤルのように、ひとつのダイヤルの中からモードを選べるようにしてあれば、ユーザーは混乱しないはずです。

     たしかに技術はスゴいのかもしれませんし、昔からの三菱ファンはシビれるでしょう。しかし、あまり良く知らない人々にもファン層を拡げるためにも、もう少しユーザーに寄り添ってくれても良い気もしました。

    夏休みだけでもトライトンに乗りたいぞ!

    トライトン

    「ユーザーに寄り添う」といえば、トライトンは、購入する人に歓迎されるだけではない、特別な魅力を持つクルマであることも体感できました。

     自分で所有するのはもっと小さく常識的なクルマであっても、トライトンの持つ「非日常性」には大いに惹かれてしまったのです。夏休みの家族旅行や冬のスキーなどにトライトンで出掛けたら、どれだけ盛り上がることでしょうか!

    トライトン

     さまざまなアクティビティのための道具をたくさん積み込めるし、高い着座位置やそこからの視界が気分を大いに盛り上げてくれます。過酷なオフロードや岩だらけのところを走らなくても良いのです。「そういうところでも走り抜けられるクルマに乗っている」という特別感が、休暇の気分を盛り上げてくれます。

    トライトン

     仕事や日常生活でガチでトライトンのようなピックアップトラックを必要とする人もいるでしょう。しかし、そうした日本の大多数の人々の日常業務は、軽トラックによって営まれています。

     トライトンは、非日常でこそ多くの人たちを楽しませてくれるはずです。トライトンのカーシェアリングやレンタカーなどの運営も、ぜひ三菱自動車に期待したいところです。

     さらに発展させて、ここ富士ケ嶺オフロードコースのようなところで、今日のようなテストドライバー氏にオフロードドライビングを教えてもらえたら、最高の思い出になることは間違いありません。

    トライトン

    ●三菱トライトン公式サイト https://www.mitsubishi-motors.co.jp/lineup/triton/

     

     

    金子浩久
    私が書きました!
    自動車ライター
    金子浩久
    日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員(BE-PAL選出)。1961年東京都生まれ。趣味は、シーカヤックとバックカントリースキー。1台のクルマを長く乗り続けている人を訪ねるインタビュールポ「10年10万kmストーリー」がライフワーク。webと雑誌連載のほか、『レクサスのジレンマ』『ユーラシア横断1万5000キロ』ほか著書多数。構成を担当した涌井清春『クラシックカー屋一代記』(集英社新書)が好評発売中。https://www.kaneko-hirohisa.com/

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