豊かな森と清冽な渓流のある北インドの避暑地マナリで、つかの間の休息を
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    2022.11.20

    豊かな森と清冽な渓流のある北インドの避暑地マナリで、つかの間の休息を

    ケーロンの周辺に広がる緑豊かな風景。

    世界各地を飛び回る著述家・編集者・写真家の山本高樹氏。今年、ライフワークとするインド北部の山岳地帯を訪ねた。美しく、険しい秘境の旅をレポートする今回は、インドでは避暑地として愛され、海外からの旅人も多く訪れるというマナリ。久々に旅の疲れを癒すことができた。

    ラホール地方の町ケーロンと、巨大な峠を穿つトンネル

    ザンスカールから、吹雪とぬかるみできわどい状態だった標高5080メートルの峠シンゴ・ラをどうにか越えた僕たちの車は、ヒマーチャル・プラデーシュ州ラホール地方の町、ケーロンに到着しました。パドゥムから車を運転してくれたスタンジンとはここで別れ、以降は一人でローカルの交通手段で移動することになります。

    ひなびた雰囲気が漂う、ケーロンの商店街。

    ケーロンで泊まるのは、およそ10年ぶり。町の北西を貫く街道、マナリ・レー・ロードの付近には、インド人の国内旅行者向けの食堂やゲストハウス、キャンプリゾートがかなり増えていましたが、町自体の商店街は、地元の人々がのんびり行き交うひなびた雰囲気のままで、少しほっとしました。

    ケーロンからマナリに向かう路線バスの車内。

    アタル・トンネルの北側の入口。

    ケーロンを午前中に出発するバスに乗り、マナリという街を目指します。これまで、ケーロンからマナリまで行き来するには、標高3978メートルの峠、ロータン・ラを越えなければなりませんでした。しかし2020年に、峠の直下を貫くアタル・トンネルが完成。このトンネルを利用すると、ケーロンからマナリまで6、7時間かかっていたのが、わずか2時間程度にまで短縮されます。冬になるとロータン・ラは積雪で通行できなくなりますが、アタル・トンネルは一年を通じて利用できるので、ラホール地方の人々の生活にも、大きな変化がもたらされているようです。

    豊かな森と清冽な渓流のある街、マナリ。

    マナリの街で、疲労回復を図る

    標高2050メートルの高原にあるマナリの街。インドが酷暑期を迎える4月から6月頃でも涼しくて過ごしやすい気候なので、毎年大勢のインド人が避暑に訪れます。街は、新しいレストランやホテルが数多く建ち並ぶニュー・マナリと、そこからマナスル川を挟んで北側にあるオールド・マナリに大きく分かれています。僕は、オールド・マナリにあるゲストハウスに4泊ほど泊まって、街の取材をしつつ、悪路での移動続きで疲れた身体の回復も図ることにしました。

    オールド・マナリの街並み。

    マナリは、陸路でラダック方面を目指す際の起点となる街でもあるため、いつもならオールド・マナリにも大勢の外国人旅行者が滞在しています。ただ、2022年夏の時点では、コロナ禍の影響もあってか、外国人の姿はほんのちらほら見かける程度でした。

    マナリでお気に入りのレストラン、イル・フォルノ。

    一人でペロリとたいらげた、ハムとチーズのピザ。

    この街に来ると、必ず一度は訪れるお気に入りのレストラン、イル・フォルノ。ハディンバ寺院に登っていく坂道の途中の、閑静な場所にあるレストランで、石窯で焼いた本格的なピザを出してくれます。一人で食べるには結構なボリュームのピザですが、ここまでの旅で消耗した身体を回復させるには、うってつけのごちそうでした。

    私が書きました!
    著述家・編集者・写真家
    山本高樹
    1969年岡山県生まれ、早稲田大学第一文学部卒。2007年から約1年半の間、インド北部の山岳地帯、ラダックとザンスカールに長期滞在して取材を敢行。以来、この地方での取材をライフワークとしながら、世界各地を取材で飛び回る日々を送っている。著書『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』(雷鳥社)で第6回「斎藤茂太賞」を受賞。最新刊『旅は旨くて、時々苦い』(産業編集センター)発売中。

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