イタリア北部の知られざる幻景「グレノダム廃墟」へ。自然と歴史が交差する秘境ハイキング体験 | アウトドア・外遊び 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

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2025.08.14

イタリア北部の知られざる幻景「グレノダム廃墟」へ。自然と歴史が交差する秘境ハイキング体験

イタリア北部の知られざる幻景「グレノダム廃墟」へ。自然と歴史が交差する秘境ハイキング体験
キャンピングカーで暮らしながらヨーロッパを旅している私たち夫婦。惹かれるのは一味違った旅のルートで、誰もが知っている有名観光地ではなく、知る人ぞ知るスポットや秘境の絶景など、あまり知られていない場所を見つけながら旅を楽しんでいます。

今回訪れたのは、イタリアの山奥にひっそりと佇む廃墟と化した「グレノダム」。かつては水力発電のために造られた大きなダムでしたが、今では崩壊した部分がそのまま残り、自然と溶け合いながら幻想的な風景をつくり出しています。美しさもありながらどこか切ない空気が漂い、ひとつの悲劇の舞台となった場所でもあるのです。

美しい自然と悲しい歴史が交差するハイキング体験をお届けします。

残骸ダムの「グレノ」とは?

イタリア北部の山奥に眠るグレノダム。ここでは、一味違ったハイキングが体験できました。

Diga del Gleno(グレノダム)は、イタリア北部ロンバルディア州の標高約1,500mの静かな山あいに位置する、コンクリート製の重力アーチ型ダムです。かつて水力発電を目的に1916年に建設が開始され、7年後の1923年に完成。しかし、喜びも束の間。完成からわずか数ヶ月後の1923年12月にダムは突如崩壊。約6億リットルの水が一気に流出し、ふもとの村々に壊滅的な被害を及ぼし、約300人以上の犠牲者を出したのです。

事故の原因は、当時の施工技術の未熟さや設計ミスにあったと言われており、この悲劇はイタリアにおける最悪級のダム崩壊事故のひとつとして記録され、現代の建設材料・設計・施工管理の重要な教訓となっています。

現在ではダムの崩壊した一部の構造だけが残されており、そんな悲劇の現場をハイキングで訪れることができます。山奥にひっそりと現れるエメラルドグリーンの湖と、崩れ落ちたまま佇むダムの風景は、まるで時が止まったかのような静寂と美しさで、珍しい景観を求める人々の間では、密かに注目を集めているトレイルです。

山奥に隠された?絶景のグレノダムへハイキングしてみた

グレノダムへと続くハイキングの出発地点があるのは、Vilminore di Scalve(ヴィルミノーレ・ディ・スカルヴェ)という小さな村からです。静かな山あいにひっそり佇むこの村ですが、通りには地元の子供たちが元気に遊び、お年寄りがベンチに座って世間話をしているなど、素朴で温かな空気に包まれていました。

快適なRVパークもあって、車中泊旅をしている私たちにとっては嬉しいポイントです。

村にはキャンピングカー専用のRVパークもあり、1泊12ユーロと良心的な価格で利用可能。普段は夫婦2人で旅をしているのですが、今回はちょうど、旦那のお母さんとお兄さんが遊びに来ていたので、4人でグレノダムへのハイキングに挑戦することにしました。

ヴィルミノーレの村からスタートする場合は、往復約11km、標高差約650m、所要時間4~5時間になります。やや上りで距離はありますが、標識や整備もしっかりされているので、初心者でも比較的簡単に歩くことができます。なお、夏季限定で運行されているシャトルバスもあるので、それを利用して距離を大幅に短縮することも可能です。

バスを利用すれば、登山ルートは往復約6km・標高差約350mとなり、体力に自信がない方でも気軽に楽しめるハイキングになります。私たちが訪れた日はあいにくシャトルバスが運行していなかったため、往復11kmのフルコースに挑戦することに。義母と義兄はハイキング初心者だったので、標高差や距離を聞いてちょっぴり不安そうでしたが、「大丈夫!大丈夫!」と笑って励ましながら、みんなで登ることにしました。

シャトルバス情報:
運行期間:5月31日〜9月7日(※土日のみ)/7月28日〜8月31日(※毎日運行)
料金:7ユーロ(往復)

木漏れ日と山の風、癒しと冒険の両方を味わえるハイキング道

のどかなイタリアの田舎町の雰囲気が、どこか懐かしい気持ちにさせてくれます。

最初はのどかな村の風景の中を歩くところから始まります。石造りの建物や農園を抜けると、すぐに自然の中へと入り込み、木々に囲まれたトレイルになります。

夏とは思えないほどの涼しさに包まれながら、森がもたらす天然クーラーで癒やしのひととき。
時折見える山と村の風景は、まるで絵本の一場面のような光景です。

道中はしっかり整備されていて、ところどころに標識もあり、危険な箇所はなく、初心者の義母と義兄でも問題なく進めました。夏でも木々が程よく日陰をつくってくれるおかげで、直射日光が和らぎ、暑さも感じず涼しい風を感じながらゆっくりと進んでいくことができました。

1時間ほど歩いたところで、標高1,200mの小さな集落Pianezza(ピアネッザ)に到着です。

途中にあるピアネッザ集落は、休憩に最適なスポットです。

シャトルバスを利用していたらここからがスタートなのですが、徒歩でここまで来た私たちは、「なんだ、意外とあっという間だったね!」と、義母と義兄もまだまだ元気いっぱいの様子。ここでは冷たくて美味しい山の湧き水の水場があるので、少し休憩してからハイキングを再開することにしました。

可愛らしい花で彩られた家々に心奪われ、どこを切り取っても絵になるピアネッザは、まるで村ごとフォトスポットのようです。

中盤は、さらに木々に囲まれた深い森の中を進んでいきます。少しずつ傾斜がきつくなってくる箇所もありますが、ペースを落としてゆっくりと登れば問題なし。こまめに立ち止まって、森の中で鳥のさえずりに耳を澄ませたり、木の合間から見える山の景色を眺めたりと楽しく歩くことができました。

とても歩きやすいく、気持ちの良い登山道でした。
いくつかの箇所では石段の登りになっており、雨で濡れていると滑りやすくなるので要注意。

終盤に差し掛かってくると上りはピタッと終わり、歩きやすい平坦な道が続きます。そしてここからが冒険心をくすぐるルートの始まりです!

突如現れる天然岩のトンネル。ワクワクが止まらず、まさに“探検”と呼びたくなるルートです。

木々を抜け、景色も開けてくると現れるのは、ゴツゴツの岩肌をくり抜いてできた自然のトンネルのような道。まるで映画の世界のような岩のトンネルをくぐりながら、反対側には最高の景色で、切り立った渓谷、遥か遠くにそびえる山々が美しく見えます。

思わず何度も足を止めては写真撮影をしてしまうほどの絶景です。

ゴールの先にあるのは…山の中にひっそりと残された「廃墟ダム」

遠くからでもその規模と存在感に圧倒され、思わず全員が立ち止まりました。

そしてさらに進んだ先に突如現れるのが、今回の目的地の「グレノダム」です。近づくにつれて、その迫力はどんどん増していき、「もっと近くで見たい!」とワクワクで思わず足早に進み、徐々にダムへと近づくにつれ、その姿もどんどん壮大に。

崩れた部分を間近で見ることができ、歴史の悲劇がもたらした被害の大きさを肌で感じることができます。

ダムの真下に辿り着くと、そこには一部が崩壊したままの巨大なダムの生々しさに息を呑みます。緑に囲まれた山奥の中に、ポツリと残された人工構造物のダムは、どこか場違い感もありながら、神秘的で切ない魅力で溢れているようでした。

別の角度から見たダムはその壮大さを物語っています。

奥にはかつてのダムの名残の湖が残されており、エメラルドグリーンに輝く湖面が静かにたたずんでいました。

ダムの奥に静かに広がる湖。その背後には美しい山の景色で、とても神秘的です。

湖畔ではピクニックを楽しむ人や、日光浴、水浴び、お昼寝などをしている人たちもいて、各々が思い思いにこの場所と時間を楽しんでいました。

湖畔で自然の涼しさに包まれながら、心までリラックスできる贅沢な夏のひととき。

私たちも湖を一周して各角度からの景色を楽しんだ後は、夏季にのみオープンする軽食小屋でお昼にすることにしました。キンキンに冷えたビールで乾杯しながら、絶景を前にほっとひと息。これ以上ない贅沢な午後のひとときでした。

軽食はもちろん、オリジナルTシャツやバッジも並んでいます。気さくな店員さんとの会話も旅の楽しみ!
ハイキングの終わりに、地元の美味しいビールと美しい景色で乾杯。

グレノダムの廃墟は、ただの観光スポットではなく、自然と歴史が交差し、100年前の悲劇の記憶を静かに伝える場所でもあると感じました。美しいアルプスの風景とともに、なんとも言えない神秘的な空気がそこには漂っており、心に残る体験がしたい方には、ぜひ訪れていただきたいハイキングコースです。

ルアナさん

トラベルライター

2023年1月から夫婦でキャンピングカーに暮らしながらヨーロッパを周遊中!登山、キャンプなどのアウトドアが大好きで、ヨーロッパでもアルプスや色んな地域の山を登っています。夫婦の長年の夢だったキャンピングカー暮らしで旅をして、有名観光地だけでなく、ガイドブックにも載っていないような秘境スポットをどんどん巡り、キャンピングカーライフや海外登山などリアルな体験談をお届けします。

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